64話 見えない何か
異国の文化って良くないと思う。
バレンタインとかバレンタインとかバレンタインとか。
見ている。誰かが。俺を。
「あんたはあの時の...」
真っ黒なせいでわかりにくいが俺を見ているのは以前も会ったことある男の影だ。
正確に言うなら影の男だ。
「あんたは誰だ?何者だ?なんで、アイツと...俺と同じ姿をしている?」
「...」
男は答えない。
聞こえていないのか、それとも答える気がないのか。
「あんたは俺に何をさせたい?何を継がせたい?」
ならばと思い質問を変えると少し影が揺らいだ。
そして男は口を開いた。
「世界を見た継ぎ人よ...世界を見続けよ...」
その発言は以前聞いたものに似ているが少し違う。
それになりより、
「そうすれば...いずれ扉は開かれる...」
男は前は言ってなかった事を言った。
そして次の瞬間、男は消え、俺はゆっくりと引き上げられるような感覚に襲われた。
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目が覚め、最初に映ったのは一週間前と同じ医務室の天井。
俺はもう一度目を閉じ考える。
(思い出せぇ...何があった???)
シャベルで穴を掘るように頭の中の記憶を掘り起こす。
(俺の覚えてるのはヒュウガと戦ってて最後俺が入れ替わって、アイツが技打とうとして、その時ヒュウガも技打とうとしてて、あっ...そこで意識が途切れてたんだか......じゃあ、ここにいるのは)
決戦でのことを思い出し、今自分が医務室にいる理由を理解したところで誰かが俺の頭を叩いた。
「痛っ!?」
それもかなり強めに。
思わず目を開けるとそこにはすげぇイライラとした...自分の巣を荒らされた親鳥のような...寝床を取られた猫のような...要するに、目が覚めてるなら早く出てくれ。と言いたげな表情のユスケがいた。
「目ェ覚めたなら早く出てってくんない???」
「はい...」
俺は急いで部屋を出た。
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医務室を追い出された熟睡してたせいか、妙に目が冴えてしまい、夜中だと言うのになかなか眠りに付けなかった。
「さすがにこの時間じゃ食堂も閉まってるだろうし...どうするか...」
困り果てた結果何も考えず外に出た。
そして来たのはいつものベンチ。
誰かいるのでは?と淡い期待を抱いたがそんなことは無く、俺は寂しさを感じながら腰を下ろす。
空を見上げると星々が真っ暗な夜空の中、月明かりの元で小さく光を発してる。
「...やばい」
目も頭も覚め切ったせいで普段考えないような事を考えるようになってる。
その変に考えるようになった頭で今日の戦いを振り返る。
全力を尽くした。
技術も知恵も手段も。全て尽くして...負けた。
「敗北か...」
敗北はここに来てもう何度も味わった。
ミアに負け、異死徒拾伍段に負け、自分の心の弱さに負け、そして今回、ヒュウガに負けた。
「なんか...悔しいな...」
別に死ぬほど悔しいという訳ではない。単に悔しいだけだ。
勝つ気でいたし、勝つ自信もあった。それでも勝てなかったのは俺がまだまだ未熟で弱いからだと納得がいった。
だから悔しく気持ちよりヒュウガに対して凄かった。という敬いの気持ちが上に来た。
「そりゃどうも」
「!?」
突然声を掛けられ思わず飛び退く。
「何ビビってんだよ。別に殺しやしねぇのに」
月明かりに照らされその声の主が姿を現す。
「お前こんな時間に何してんだよ...ヒュウガ」
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名前を呼ばれたヒュウガは不機嫌そうに言い返した。
「それはこっちのセリフだ雑魚。お前こそ何してんだよ」
「質問を質問で返さないでくんね?」
「うるせぇ奴だな」
ヒュウガが呆れ顔でやれやれと首を横に振る。
なんだろう...すげぇ腹立つ。
「俺は医務室で寝過ぎたせいで寝れねぇから夜風にあたりに来たんだよ。風吹いてねぇけど...で?お前は?」
これ以上のやり取りはめんどくさいだけだと思った俺は先に折れ話す。
するとヒュウガは俺があっさり折れると思ってなかったのか驚いた表情をし、その後すぐに答えた。
「俺は単なる散歩だ。途中で空見上げてるお前を見つけたから声掛けただけだ」
「なんだよ暇人かよ」
「お前が言うな」
互いに睨み合ったのち、ヒュウガがまたやれやれと首を横に振る。
だからその仕草腹立つなおい。
「お前、暇なら少し付き合え」
ヒュウガが街を指しながら言った。
「え?やだけど。何言ってんの?」
俺は断った。秒で。
あまりの即答ぶりにヒュウガの顔が引きつっている。
愉快。実にいい表情を見せてもらった。今夜はゆっくり寝れそうだ。
満足した俺は振り返り寮へ向かって歩き出す。するとヒュウガが「いいから付き合えよ!」と言って俺の襟元を掴み強引に引っ張る。
「はぁ!?ふざけんな!何が嫌でお前と夜一緒に街をあるかなきゃ行けねぇんだよ!」
「お前にはいくつか話さなきゃいけねぇことがあるんだよ!いいから黙って来いってんだ!」
「はぁ?ふざけんな!離せ!このっ!離...!おい離せ!離せ...........」
年齢差のせいか、俺は力負けしそのままズルズルと引きずられ街中に連れ出された。
くそ。
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深夜でも賑わう街中を俺はヒュウガと(渋々)歩く。
「なぁヒュウガ、確か夜間の外出は禁止されてるよな?バレたらどうすんだよ」
「そん時はそん時だ。それに俺はいつも出歩いてるからそうそうバレねぇよ」
「お前...」
衝撃の事実に目を細めつつ本題に入る。
「で?わざわざ着いてきてやったんだ話さなきゃいけないことってやつ聞かせろ」
「今日の決戦の事なんだが...」
「おい待て、まさか俺の記憶消すために連れ出したのか?例のアレ。それなら俺帰るぞ」
決戦という単語を聞き恐怖を感じた俺は一歩後ずさる。
そんな俺を見てヒュウガが呆れ顔で言った。
「はぁ...それじゃねぇよ。後、俺の醜態云々に関しては言いふらさなきゃ何もしねぇよ。お前の記憶消しても後味悪いだけだし、周りの奴らは覚えたままだしな」
「そうか...それならいいんだけど...なんか怖いな」
「むしろお前は俺に警戒しすぎだ」
「いやだって...やっぱいい。話し出すと長くなりそう。本題に入ってくれ」
なんとなくめんどくさくなることを察した俺はヒュウガ本題に入るよう促す。
「お前、今日の決戦の最後...俺の攻撃避けたのは偶然か?それとも狙ったのか?」
「一回目避けた時は俺も何が起きたかわかんなかった。二回目は狙った。あのタイミングで入れ替われば勝てると思ったからな」
「そうか...」
「なんだよその微妙な表情。何かあるなら言えよ」
「別に...ただすげぇなと思っただけだ」
「はぁ...」
ヒュウガの表情は何か考えているようにも見えたが、それだけには見えずどうも形容しがたいものだった。
「それともうひとつ...これは重要というよりは、お前自身頭の隅に入れといてくれればいい話なんだが...」
「いいから話せよ回りくどい。お前が何考えてるか現時点の俺じゃわかんねぇんだから普通に話してくれ」
俺の眼はヒュウガのように感情は読み取れない。だから話すことがあるなら正直に話して欲しい。
するとヒュウガは少し考えた様子をみせたのち、
「近いうちに俺はお前に協力を仰ぐ事になる。その前に時間があればジャッツと一回話をしといてくれ」
「何故お前が俺に頼ることがあって、そのために生徒長と話す必要があるんだ?」
「それはジャッツから話すだろう。とりあえず、一回話をしといて欲しいと言うだけだ。今はまだ...」
そう言ってヒュウガは俺に背を向け歩き出した。
ヒュウガが何を考えているのか、何を思っているのか、何を見ているのか、俺にはわからない。
ただ、こいつは俺には見えない何かを見ているのはわかる。
そしてそれは今の俺には決してわからないものだろう。
だからなのか、今のヒュウガはとても遠い存在に感じた。
まるで夜空に浮かぶ星のように。
アルト君は神は信じないけど自分の身に降りかかった絶対にありえない良い事悪い事の原因をとりあえず神のせいにするタイプです。
ちなみに自分は信じる相手を選ぶタイプです(聞いてない)




