63話 擬似認識対擬似認識
ホワイトデーまでに二話くらいあげたい。
「まさか...お前もその眼を持っていたとはな。ちょっと予想外なんだが...」
ヒュウガは肩を押さえながらゆっくりと立ち上がり俺の眼を見て言う。
その時が初めてじゃないだろうか。
ヒュウガの表情から焦りが伺えたのは。
「擬似認識・影世界」
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真っ黒に染まった俺の眼を見たヒュウガはあからさまな焦りを見せた後、何か納得したように頷いた。
「いやぁ...まさかもうその眼を会得してたとは...少し早すぎるな」
発言は意味不明だが。
「何が少し早いだ。俺はお前の都合に合わせて生きてるんじゃねぇよ」
俺が言うとヒュウガは俯き、どこか悲しそうな表情で呟いた。
「お前の成長は喜ばしいよ...」
少しの沈黙。
ヒュウガはこの戦いで何度も見せたことの無い表情を見せた。
まるでこの戦いに何か思いを巡らせているようだった。
「この話はここまでだ。さて、続きをしよう!」
吹っ切れたのかヒュウガは顔を上げると同時に走り出した。
「まったく...ほんと何考えてるかわかんねぇなお前...」
「わかんなくていいんだよ。今はまだな...」
再び刀と刀がぶつかり合う。
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初めてのやることには何もかもが初見だ。
だからこの擬似認識対擬似認識は使用してる俺ですら初めて知ることがあった。
例えば...
俺の眼は視界に映るもの全てを影として扱い、それに干渉する。
逆にヒュウガの眼は視界に映った場所もものを凍らせる事の出来る(らしい)。
この二つの能力が同時に発動した場合どうなるか。
俺がヒュウガの刀を弾くと同時に視界に映った刀という影に干渉し攻撃する。
普通の相手ならばこの攻撃は確実に入るはずなのだがヒュウガの場合は、
ヒュウガは少しだけ視線をずらして、距離をとった。すると次の瞬間、俺が干渉した影は凍り砕け散った。
今度はヒュウガが視線を落とした。
その視線を追うと俺の足先が氷出していた。
ヒュウガの眼の力だろう。
俺は少し足を動かし影に干渉して氷を砕いた。
同時に縮地で距離を縮めようとしたがヒュウガが氷の壁を作ったため止むを得ず足を止める。
追撃出来なかったのは悔しいが今のでわかったことがある。
眼の力は眼の力で干渉出来る。
この眼の力は本来、攻撃が完了するまで干渉した場所も物は相手にはほぼわからない。
初見だったとはいえロレイですら俺の技に全く反応出来ず傷を負うほど。だがそれも眼の力によってどこにどう干渉してるのかわかるらしい。
つまり擬似認識同士の対決はあるようでない。
言い換えればここからは本当の技量戦。
とりあえず目の前の氷の壁を壊さなければ始まらないので、刀を構えつつ適当な影に干渉し壁を砕く。
壁を砕くと同時に縮地で前へ出るが、ヒュウガはそれを予期していたのか俺が近づくと同時に刀を突き出す。
それもただの突きではない。五箇所、全く同時の突き。
「光天流、弐ノ型...連牙連突」
縮地で近づいてるせいで全部を避け切るのは厳しい。ならば、防げるところだけでも防ぐ。
「影陰乱舞、長月...二重の影!」
影を使った二重の斬撃で二箇所。さらに一箇所体を捩り、計三箇所の突きを避けた。
けれど残り二箇所は避け切れず、左肩と右太腿に突きが入る。
「ぐっ!」
突かれた勢いで距離を取ろうとするが上手く体が動かない。
見てみると突かれた場所が凍りついている。
そこでようやく気づく。ヒュウガが攻撃した瞬間に氷で傷を塞ぐ理由が。
ヒュウガは氷で中途半端に傷を塞ぐことで重荷とし、動きを鈍らせているのだ。死徒相手の場合は再生の阻止も含まれているだろう。
実に厄介で面倒なことをしてくれる。
それがわかった上で俺はこの氷を砕くことはしない。
確かに氷があればヒュウガは技を放つことが出来るが、今はそれ以上に血を流したまま戦うのが辛いと感じた。
だから俺は氷を背負ったまま戦う。
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距離を取るのが厳しいなら俺は一歩引いた足を踏み出すと同時に刀を突き出す。
「影陰乱舞、如月...影突!」
けれどヒュウガは俺の突きに氷の壁を作るだけで防ぐ。
ヒュウガ相手に一個の技は通用しない。なら、技を繋げる。可能な限り!
俺は突きを防いだ氷の壁を下から刀を振り上げ斬り裂く。
「影陰乱舞、皐月...影翔流転!」
からの、
「影陰乱舞、神無月...後影傷!」
刀を振り上げた場所に少し遅れて影の斬撃が生まれ、斬り掛かるがヒュウガは眼の力で斬撃すらも凍らせてしまった。
「技はいい。だが練度が足りねぇ!」
ヒュウガが一歩踏み込み前へ出る。
俺も牽制するように刀を振るうがヒュウガに当たらない。いやヒュウガがそう動いている
「光天流、捌ノ型...偽曲進閃」
ヒュウガは自分の行く先に氷を作り、それを起点に方向を変えジグザグに動き回っている。それもかなり速い速度で。
一瞬だけ見えた凍りついている靴の裏はそういうことだろう。
確かに速いが目で追えない速度ではない。
「ここだ!影斬り!!」
タイミングを見計らい目の前に来た瞬間刀を振るう。しかしヒュウガは俺の刀を起点に上へ飛び避けた。
そしてさらに勢いを付けて斬りかかってきた。
「影陰乱舞、水無月...陰層天守!!」
咄嗟に影の壁を作るが、
「光天流、肆ノ型...螺旋の門!」
「ぐはっ!」
ヒュウガは自分螺旋状に斬撃を重ね影の壁を貫いた。
直撃は避けたとはいえ重ねられた斬撃に思わず膝を着く。
技は効かない、守っても防ぎきれない。
いよいよ厳しくになってきたこの状況どうするか、考えながら立ち上がる。
するとヒュウガが残念そうにこちらを見つめ言った。
「確かにお前の成長速度、眼の力は俺の予想外のものだ。だが、お前はまだその眼を使いこなせていない」
使いこなせていない?どういうことだ?
「お前のやっているのは単なる技のデメリットの解消と影に干渉して俺の眼に対抗だ...それだけが世界を見る眼の力なはずないだろう」
「何?」
「もっと、もっとその眼には出来ることがある。それを見つけろ」
「この眼に出来ること...」
言われてみればいくつかわかったことはあるけど、この眼に何が出来るかは考えてなかった。
「なぁヒュウ...」
「言っとくが俺は教えてやる気はないからな」
「...」
「教えて貰ってばかりじゃなくて、少しは自分で考えてみろ雑魚」
「...」
ゆっくりと息を吸い、
「そうだろうな!そんな気はしてたよ!聞こうとした俺が馬鹿だったよ!お前が教えてくれるなんてそんなはずないよな!よし、わかった。お前ぶっ飛ばす。一泡吹かせてやる!!」
腹の底から怒りの丈をぶつけた。
現時点でこの眼でわかってる事は少ない。だからと言って考えながら戦ってたらすぐやられる。一泡吹かせられない。
「確かにこの眼がなければお前には勝てない。けど俺は、俺の戦い方でお前を倒す!!」
ゆっくりと刀をヒュウガに向け、俺はいつもの台詞を口にする。
「さぁ、覚悟を決めな!」
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俺が走り出すと同時にヒュウガは所々に氷を作って行く先を阻む。
ならば、
「影陰乱舞、卯月...陰刹の舞」
俺は氷を壊さず、舞うように避け進む。
(今だ!)
氷の群れを抜け、ヒュウガとの距離が縮地で届く範囲になった瞬間、
「影の技、境地...影踏み!」
影を踏んだ。
「ぐっ!」
その時、ヒュウガは初めて、はっきりと聞こえるくらいの唸り声をあげた。
影を踏まれたヒュウガは倒れそうになるも氷を作り体を支える。
その隙に俺は踏んだ影を零歩目とし、縮地で距離を詰める。が不安定な体制でありながらもヒュウガは俺の縮地の着地点に刀を振っていた。
これにはさすがと言わざるを得ない。
うん。さすが。
縮地は自分の意思で着地点前で止める事は出来ない。変に足を出せば、速度に持ってかれる。
俺の体は縮地を止められる程出来上がってない。
だからヒュウガの刀は避けられないと思っていた。けど避けた。避けれた。
(...あれ?)
何が起きたのかわからない。わからないうちに俺はヒュウガの攻撃を避けていた。
そして現在ヒュウガの真横。
ヒュウガの驚き、目を見開いた様子が伺える。
その上でヒュウガは冷静に刀を逆手に持ち替え、俺を狙った。
こればっかりは避けられない。さっきのような偶然起きたよくわからない奇跡にも期待出来ない。
でも、関係ない。
シチュエーションは違えど俺はこの瞬間を待っていた。
ヒュウガの意識が俺にこの眼にある今を。
ゆっくりと息を吸い、迫り来る刀をオレは蹴って避ける。
「ッ!?」
ありえない状態から刀を弾かれ無防備となったヒュウガにオレは渾身の一撃を放つ。
「陰の技、境地...無限月華・陰刃!!」
完璧だった。
威力もタイミングも絶対に勝ったと思わせるものだった。だった...
「光天流、玖ノ型...」
ヒュウガがそう呟いた時、オレ、俺の意識は真っ暗な闇の中へ消えた。
ヒュウガ対アルト終了。三話かける言ったけど二話目で終わりました。ということで三話目は後日談ということにします。
ホワイトデーネタ考えてません!




