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ディフェレンター  作者: 論です
序章 旅立ち編
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5話 町の人々

こっちの方はかなり先まで考えてあるんでサクサクいけると思います。それと色んな人の作品見てるんですけど、皆さん前書きとか後書きとか書かないんですかね?

その夜はなかなか寝付けなかった。

昼間は疲れていたので近場で食べ物を調達したり、いつ首都行きの馬車来るかなどを聞いたくらいだからすぐに寝れると思っていたがそうでもなかった。

別に枕が変わると寝れないと言う事はない。むしろウルスがそうだったので旅行に行く事が少なかった。

しかし今思うと今回の時のために貯金していてくれたとも思える......訂正、多分そんな事はない。


(とにかく、寝れないから外の空気でも吸ってこよう)


起き上がり財布ともしもの時ように刀を持って外に出る事にした。

一階に着くとロビーには明かりが灯っている。すると奥から女将のカナエの母親が出て来た。


「あら。アルト様こんな時間に外出ですか? それとも死徒狩りですか?」


意外な事を聞かれ、そういえば時間を確認していない事を思い出し時計を見ると時刻は二十三時を過ぎている。確かにこの時間に武器を持って出歩くのは死徒狩りくらいかと納得する。


「いやちょっと寝付けなくて、これは護身用です。それと名前教えましたっけ? 対応したのはカナエ、娘さんでしたし......」

「ふふ、別にそこは言い直さなくてよろしいのに...確かに対応はしていませんが少しでも時間があればお客様の名前と顔は確認するようにしていますので」


俺が見ていた間は殆ど休みがなかったはず、本人が言ったようにもし合間の時間を使って一瞬で覚えたとするなら物凄い記憶力だと感心する。


(記憶力に関する事が女将の異能力なのか?)


色々考えたが詮索する必要もないだろうと考えるのをやめる。


「それにアルト様に関してはカナエから少し事情も聞きました。大変でしたでしょう。首都の馬車が来るのは三日後ですがそれまでどうぞ、この町でごゆっくりしていってください。それと一応この町には護衛の騎士が何人か居ますが、それでも、もしもの場合というものがございます。どうかお気をつけて」

「はい気をつけます。すぐ戻りますので」


それだけ伝えると女将は小さく手を振って見送ってくれた。


------------------------


外は春先と言うこともあって若干寒い。

長袖を着てきたがそれでももう一枚欲しいと思う程には寒い。まあ少ししたら戻るだろうと許容し近くを歩く。


「もしもの場合をってのは接客業だからの発言か、それとも父親の事を考えての発言か。どちらにせよあれを聞いてからだと嫌でも考えさせられるな」


数メートル歩いた所で明かりのついてる店を見つけた。恐らく居酒屋だろう。一瞬入るのを躊躇したが酒は飲まなきゃいいだろうという事で入店した。

その居酒屋はかなり賑やかで、俺のいた町からすれば少し騒がしいと注意が入ってもおかしくないくらいだった。

夜中盛り上がってる中、未成年の少年が入って来れば当然注目を集める。


(まあこんな時間に、こんな所に子供が来るとは普通思わないよな)


多くの視線を無視しながら空いてるカウンター席に座る。

メニューを開いて焼き鳥を何本かと唐揚げ頼んだ。刈り上げの強面な大将は快く返事をして水を出した後注文を作り始める。

最初はこちらに向かって野次が飛んで来ていたが刀に気づいてか、いきなり静かになり自分達の会話を再開しだす。


(刀持ってきといて良かった。変なの相手にせずに済んだし、これからもちゃんと持ち歩いとこ)


そう思っていると丁度、唐揚げと焼き鳥が出来上がったらしくそちらにも手をつける。

唐揚げは噛んだ瞬間から肉汁がたっぷりと流れてきてセルフでかけたレモンの汁が豪快な唐揚げの味に混ざり絶妙なベストマッチを作り出している。

焼き鳥も一つ口に運ぶ。

やばい。頬が落ちるくらい美味い。

焼き加減も丁度良くメニューに書いてあった秘伝のタレが言葉に表す事が出来ないほど圧倒的な味をもたらしている。自分の村で行きつけの店だった焼き鳥よりも味が濃く美味しい。


「ん! 美味い!」

「ありがとうございます!」


思わず声に出した感想に大将は汗を流しながらこちらを向いて笑っている。

癖になりそうな味なので何度も頼もうとしたが当初の目的を思い出し流石にやめる。惜しいと思いつつも明日の予定を考え、会計を済ませて宿に戻る事にした。


------------------------


忘れられない味を堪能して宿に戻ると女将が忙しそうに算盤を弾いてる。声をかけ辛かったが一応報告しておこうと聞こえるくらいの声で言った。


「アルト、今戻りました」


少し小さかったかとと思っていると一瞬遅れて「はい。お帰りなさい」と返事が返ってきたので安堵する。

他にすることも無いので自分の部屋に戻り、ようやくの眠りにつく事にした。


------------------------


日が変わり、起きたのは十時を過ぎていた。

時間的に朝食を取り損ねたと思っていたが、どうやら食事は時間内なら頼めば好きな時に持ってきてくれるという。とてもありがたいシステムだ。

飯を食べ終わった後は町をぶらぶらした。


「首都の馬車が来るのは明日だし、それまでにある程度準備しておくか」


準備と言っても実際に用意するものは少ないが、なかなか物が見つからず夕方までかかった。

昼食は他のところで済ませたと女将さん言う。

ここの食事もそうだがこの町は全体的に食べ物が美味しい。栽培とか真面目に且つ工夫してるんだろうなぁと感心する。それとは別に少し違和感を感じるロビーで忙しくしてる従業員を見てその違和感に気づく。丁度時間の空いた女将に直接聞いてみた。


「あの女将さん。今日娘さん見てないんですけどどうかしましたか?」

「えっ? カナエ? そういえば朝から居ませんね。というか昨日から帰って来てないような」

「昨日何処か行ったんですか?」

「はい。私と少し言い合いになり、外に出ると言ったきり......帰って来た様子もなかったので、あの子何かあったのかしら?」

「何も無いと良いんですがね、わかりました少し探してみます」

「いや良いですよ。そのうち帰って来ると思いますし、アルトさんはどうぞごゆっくりして下さい」

「むしろ夜だからこそ藪から棒には出来ないでしょ。女将さんはここに残ってて下さい」

「でも......」

「では行ってきます。貴重な時間を取らせてしまいすみませんでした。あっ、夕飯残しておいて下さい」


購入した物をその場に置き刀と財布だけ持って再び外に出る。


------------------------


ここは町全体を見渡せる大きな山。知っている人は多いが大人はほとんど立ち寄らない。


(ここは町の外だから大人達は死徒が出るって言って外には出ない。だから私にとっては特別な場所)


昨晩母親と喧嘩してしまった事でやけになり、頭を冷やすために外に出たが帰る気にもなれず友達の家に泊まらせてもらいそれから丸一日家に帰っていない。

いつも母に苦労させないよう気を使ってたから少しの会話でストレスが爆発して喧嘩になってしまった。


(悪いのは私だし帰って謝れば良いんだけど、なんというか、気不味い......)


年頃の子にはよくある思春期、反抗期だろう。

自分が悪いとわかってはいるが親と向き合いたく無い。誰もが一度は経験する時期。私はまさにそれだった。

でも、そろそろ帰らないとお母さんだけじゃなくて町の人にも心配かけちゃう。

日が暮れてそこそこ時間が経っているので恐らく十九時頃だろう。町の人は夜になると人を喰う死徒が出る言っていた。私自身出会った事はないからそこまで気にしてないが流石に迷惑をかけるにはいかないと町に戻ることにした。


「良さげな子供はっけーん」

「ッ!!」


明らかに町の人ではない声が聞こえ、そちらを振り向く。そこにあった姿を見て察した。


(まさか! 死徒!?)


全身に毛が際立つのを感じる。得体の知れないものに対する恐怖が身体を覆い咄嗟に石を投げる。


(逃げなきゃ!!)


死にたくない。その一心で私は町に向かって走り出した。


------------------------


探し出してから三十分ぐらいたっただろうか。町の事をあまり知らない上、カナエがどこに行きそうかもわからないので直接店に入って話を聞きながら回っていた。


(町の中はだいたい回ったはず、入れ違いで家に帰ったならまだ良いんだが日も暮れてこれ以上暗くなると探すのが難しくなる。早く見つけないとな)


しかし、一時間近く走っていたため結構疲れが来ており休憩を取りたいという気持ちもあった。

すると丁度足を止めたところが昨日来た居酒屋だった。


(流石に大人ばっか集まるここに来るとは思わないけど、聞くだけ聞いてみるか)


そう決め扉を開ける。


「すみませーん。やってますかー?」

「ヘイらっしゃい。あんさんは昨日の、また来て下さりありがとうございます。焼き鳥と唐揚げでよろしいでしょうか?」


昨日一回来ただけなのに顔と注文をはっきり覚えていることに感心する。ただ今は本来の目的を話す。


「すみません。今急いでまして、今日はゆっくり出来ません」

「......何かあったんですか?」


強面の大将は見た目に似合わずオロオロと心配しだす。


「ここの近くの宿屋メリーの娘さんが昨晩から帰ってなくて探してるんです。何か知りませんか?」


俺の言葉を聞いた他の客がざわつき始める。


(他の店で聞いた時もそうだったがあの宿屋はこの町の看板的存在らしい。だからこの町の人じゃない俺が頼んでも協力的だったのか)


この町の人たちに少し感動を覚えていると。


「えっ、宿屋メリーの娘さんでしたら......」


何かを思い出した大将が話し出そうとしたその時、厨房の奥からまた別の声がした。


「カナエなら昨日はうちに泊まったわよ」


そこに姿を現したのは長い紫寄りの黒髪が特徴小柄な少女が立っていた。


------------------------


話を詳しく聞く。と言って店の奥、正確にはこの少女の自室に入れさせられていた。


「さて、カナエが行方不明って事について話してもらおうかしら」

「その前に君は誰だ? カナエを泊めたというのはどういう事だ?」

「質問をしているのはこっち。質問を質問で返さないで、それと人に名前を聞くならまず自分から名乗るべきじゃない?」


生意気で挑戦的な態度に少々イラっと来たが少女の発言はとても的確だったので言い返す事が出来なかった。


「俺は隣の村から来たアルト・シャドウだ。宿屋メリーに泊まってて、そこの女将がカナエが昨日から帰ってないと聞いたから探し回ってる。これで良いか?」

「ふーん、まあいいわ。話して貰ったんだし私も話さなきゃね」


(こいつ発言がいちいち上から目線だな、令嬢とかを相手にしてる感じだ)


ふつふつと怒りを込み上げるが怒っても仕方ないと冷静になり、話を聞く事にする。


「私はユキナよ。ユキナ・ユツキ。この居酒屋ユツキの長女で将来ここの女将になるものよ! ちなみにカナエとは親友同士よ!」


あまりない胸を自慢げに張る。その様子に思わず吹いてしまった。


「ちょちょっと! 何笑ってんのよ! 言いたい事があるならはっきり言いなさいよ!」

「いや別に、偉そうにしてる事がしょうもないのによく胸張れるなとか思ってないから......ククッ」

「こんのっ!!!」


......頬がヒリヒリする。

先手一撃のビンタの食らい、今はこんな事してる場合じゃないと頭を冷やす。


「さて話を戻すわ。カナエは昨日夜中に内に来て泊めてって言ってきたから泊めてあげたの。今日も泊まるつもりだったらしいけどあなたが言うには町のどこにもいなくて家、宿屋メリーにも戻ってないと」

「理解が早くて助かる。見た目の割には頭良いんだな」

「当然よ! 私は将来この店を継ぐの! 頭悪いなんて話にならないわ! それと見た目の割には余計よ! いちいち勘に触る話し方をするわね」


「お互い様です」と言おうとしたがこれ以上話を逸らすわけにはいかないのでスルーした。


「それで? 何か知ってる事はないのか?」

「あるけど、その前になんであなたそこまで必死なるの? あなたとカナエはそこまで関係ないでしょ? どうして? カナエが好きだから? 見返りが欲しいから?」


ユキナからは意外な......いや、よく考えれば至極普通の当たり前の質問が飛んできた。

それから続けて、


「私は人の見た目、話し方とかを見ればその人がどんな人かわかるの。だから聞くはあなたは見返りが欲しいわけでもなければ、無駄な事面倒な事はやりたくないタイプ。なのにどうしてカナエを探すの?」


改めて聞かれるとどうしてかは答えづらい。ただ無意識に身体を動かしていたに近い、けれどカナエに対する恋愛感情があるかと聞かれればそれはない。見返りが欲しいかと聞かれてもノーだ。

なら何故か。その答えがわからず戸惑っているとその様子を見かねたユキナが語る。


「あなたは自分自身の事をわかってない。私にはわかるそう言う人を何人も見てきたから」


教えてくれ。そう言いかけた時、鋭い視線が言葉を遮った。


「けど今それをあなたに教えても意味はない。あなた自身がが最も大切だと思う人が出来たらその時、自然とわかるわ。だから今はわからないままでいい」


その言葉自体に納得がいかない。自分の事をわからないままで良いなんて言われても困ると。しかし理解はする。多分今の自分は誰かのためにではなく、みんなのためにで動いているだから理由がわからないのだと理解する。


「わからないままってのは嫌だけど、いずれわかるならそれまで待つよ」

「えぇ、そうするといいわ」


少しの沈黙の後ユキナが唐突に話し出す。


「カナエなら町の外に山があるわ多分そこにいる」

「町の外の山? ああ、あのでかいのか!」


カナエの場所がわかった嬉しさと別に気になった事を聞いてみた。


「でもどうしてそこにいると?」

「カナエは昨日お母さんと喧嘩したって言ってた。あの山には大人はほとんど近づかないから町の中にいないならそこしかない。私もよく行くし」

「大人は近づかない? どうしてだ?」

「あの山には死徒が出るって言うの。だからあの山には大人は近づかない。子供は無邪気だからそれを気にせず近づく」


死徒。そのワードがユキナの口から出た事で緊張が走る。時計を見るともう十九時を回っており、空の暗さからして死徒が活動しだしてもおかしくない頃だ。

もしカナエが死徒と遭遇していたら、襲われていたら、そう考えるとここで座ってる訳にはいかない。

覚悟を決め、俺は刀を持ち部屋を出る事にした。するとユキナがそれを止めた。


「どうせ後でこの町の騎士達が山に行くわ。それに任せた方がいい異能力も使えないあなたが行っても死ぬだけよ」


またユキナが気になる発言をしたので振り返るとそこには先程とは全く雰囲気の違うユキナが瞳を紅くして座っていた。

彼は機械ではない。

彼は人形ではない。

彼には感情がある。けれどどうして彼は他人(ひと)の為に動くのか...それは彼にもわからない。

故に彼が人であるとは言い切れない。


本日はここまで最後に柄でもなく語ってしまいました。まあミステリアスに少しでもするならいいのかと。話は変わりますが前書きで他の人は前書き書くのか?とか聞いてましたが他の人はどうあれ俺はこれも含めて一話だと思っているので書いていく方針です。ですのでどうか下らないかも知れない話に耳を...いえ目を向けて下さい。


サブタイトル1話とかじゃ味気無いのでそこら辺も思いついたら少しずつ書いていきます。


最後までご愛読ありがとうございます。次回も是非見て下さい。

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