51話 絶殺のパートナー
求めた暇より予期せぬ暇の方が有意義と感じるこの頃。
半分自分でも何言ってるか分からない。
「大丈夫か?ミア」
俺は地面に倒れ伏せている相手に背を向けて声を掛けた。
本来ならばちゃんと顔を見て色々聞きたいところだが、今対面している相手が異死徒拾伍段の第拾壱段である以上そうはいかない。
俺は警戒したまま周囲を見渡し状況を確認する。
(一体何が起きてんだ?ミアが死徒相手に一方的にやられるなんて。それにあいつはミアの事を知っているようだったが...)
来る途中に聞こえた話し声でミアとこの死徒にはなんらかの関係があるのはわかった。がそれだけだ。それ以上はわからない。
考えを余所に刀を構えると腕を再生させた死徒がこちらを見て楽しそうに喋りだした。
「ヒロインのピンチに颯爽と登場とは...まさにヒーローだな!」
ヒーロー?何言ってやがる。
「俺はヒーローじゃねぇ...パートナーだ!」
俺の発言に死徒が目を丸くする。多分ミアも。
別に変なこと言ったつもりは無いんだが...
すると、死徒は少しの間の後盛大に笑い出した。
「ハハハハ!お前いいな!おもしれぇよお前!」
「んだよ。笑うなよ」
「いやぁ...わりぃわりぃ。こんなに面白いことは久しぶりでな。つい」
死徒は涙を拭いながら素直に謝った。
そんな死徒の様子に俺は違和感を抱いた。
(こいつ...どこか人間臭いというか...)
人間みたい。確かに死徒は一度死んだ人間とあるがこいつの場合は死んでも尚人間というか、今まで出会った他の死徒よりも人間ぽく見えた。
ある程度笑い満足したのか死徒は笑みを浮かべたまま、そのうえで明らかな敵意を見せてきた。
しかし、死徒は戦うどころか構えすらしない。ただ平然と話を続けた。
「確かにお前は絶殺のパートナーだよな。良かったなヴァイズ!こいつはお前がどんなに冷たく接しても、お前の事をパートナーと思ってるらしいぜ。お前はこんな純粋な奴だろうと殺すんだろ?」
「ッ!違う!私は殺さない!」
ミアは今までに見た事ないほど焦った様子で死徒の言葉を否定した。
だがそれ以上に、
(ん?殺す?誰が誰を?え?ミアが俺を?ん???)
「どゆこと?」
俺もそこそこ焦っていた。
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状況が掴めず右へ左へ頭を傾ける俺を見て死徒が面白そうに言った。
「おいヴァイズのパートナー、確かにアルトとか言ったか?お前、ヴァイズに殺されるぜ」
「ちょっと待て、色々聞きたいことはあるがまず、何故お前が俺の名前を知ってる。名乗った覚えはないぞ」
「ヴァイズから聞いたんだよ。いや、勝手に言っただけか」
ミアが俺の名前を口にした。死徒はそう言った。
やはり、この死徒とミアは何かあるらしい。そして今から死徒が話そうとしてることも。
俺は刀も敵意も向けたまま話を聞くことにした。それが俺の知らなきゃいけない事実だと思ったからだ。
死徒は攻撃を仕掛けない俺を見て淡々と語り出した。
「アルト、はっきり言うぜ。いつかヴァイズはお前を殺す」
絶対にな。死徒は念を押して言う。
「ヴァイズの異能力『絶殺』は何に対しても例外なく殺す事の出来る力だ。死徒も人も例外なくな」
なんでも殺す力。それならミアの強さも頷ける。まあそれだけじゃないと思うが...
「ヴァイズはその力で死徒を殺し続けた。学園で英雄と称されるまで。いつからか誰かがそんなヴァイズを見て絶殺と呼び出した」
死徒を絶対に殺す。それが絶殺の由来か...
「そしてある日、ヴァイズは...人を殺した」
「やめてっ!」
そこまで聞いたミアが叫びながら止めに入った。
弱った体でそこまで速くのない速度で死徒に近づく。けれど死徒は動ずることなく、ミアを重力で押さえつけた。
「大人しくしてろよ。俺はお前のパートナーが聞きたがってることを話してやってるんだ」
「やめてっ!アルトには話さないで...ッ!」
余程掛けられる重力が重いのかミアは力なく倒れ伏せる。
「さてアルト、話の続きだ。ヴァイズは人を...」
「待て、その前にお前とミアはどういう関係だ?というかお前はなんでさっきから学園の事を知ったように話してる?お前は何者だ?」
俺が言うと死徒は腕で顔を覆い「あーそういや言ってなかったかー」と溜息混じりに呟いた。
死徒は腕を下ろし再び溜息を吐きながら面倒くさそうな表情で答えた。
「さっき言ったヴァイズの殺した人ってのは俺だ。俺は元こいつ...ヴァイズのパートナーでお前の通う東洋異能力学園の生徒だったんだよ」
「...そうかよ」
はぁ?と声を上げたい衝動を抑え、俺は冷静を装い相槌を打つ。
今ここで冷静さを欠く訳には行かないと思ったからだ。
死徒もこの部分はどうでもいいと思ったのか俺の反応に気にする様子はない。
「俺は学園の生徒でヴァイズの元パートナーだからある程度の事は知ってる。ヴァイズが俺以外に何人殺したかもな」
「やめてっ!」
「ヴァイズは自分の異能力に溺れ人を殺す事に快感を覚えた」
「違うっ!」
「俺を殺した時なんか、並んで歩いていた所を後ろからナイフで一刺し。それから俺の上に跨り胸と喉を刺された」
「もうやめて...」
泣き出しそうなミアの制止も聞かず死徒は話し続ける。
「運良く、生き残った俺はあの方によって死徒にされた」
なるほど、それがこいつの死徒になった経緯か。
「俺は辛うじてではあったが死ななかった。いやほとんど殺されていた。他の奴もだ。他の奴なんかは死徒になること死んだ。無慈悲に殺された。それをなのにヴァイズは悲しみもせず平然と今を生きてやがる」
「違う...そんなことはない...私も、あの日の事を後悔してる...私は取り返しのつかないことをしてしまったって...今でも後悔してる!」
ミアの瞳には涙が浮かんでいた。
ミアの言葉に嘘はない。ミアは本気でこいつを殺してしまったことを後悔してるらしい。
しかし、死徒にその言葉が届くことも無く。
「くっ!!」
死徒はミアを無視し、掛ける重力を強くした。
「アルト、次はお前の番だ。今ヴァイズがお前に冷たく接してるのはお前を殺しても後悔しないように心が痛まないようにだ。お前も近いうちに後ろから刺される。その前に...俺と一緒にこいつを殺そう」
ミアを殺す。死徒が持ちかけたのは提案だった。
「このままこいつを活かしておけばお前も、お前の仲間もみんな死ぬ!こいつだけが生き残る!これ以上犠牲を出さないために!俺に力を貸してくれ!」
「......」
「俺は死徒になって誓った。仲間を殺して心の痛むことの無いこの機械のような女をいつか必ず絶望させてやるって!この殺戮の連鎖を止めてやるって!」
「......」
「こんな殺しで快感を得る悪魔の絶殺を生かしていいはずがない!この絶殺は殺すべき存在だ!学園で絶殺と呼ばれ英雄とされるこの女は...ただの悪魔だ!」
妙に熱説に語る死徒はとても必死の様子だった。
俺の力を借りたい訳ではなく、ミアを殺したいという意味で。
それは話を聞いただけでも理解出来た。
いつかの自分に似ていたからか、俺は酷く落ちたいた様子で、
「復讐...絶望...絶殺ね...はぁ...本当に...くだらない」
死徒を否定した。
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「なんだと?」
死徒は台詞以上に驚いた様子だった。俺が断る事を想定していなかったのだろう。
「話聞いてなかったのか?お前、死ぬかもしれないんだぞ!信頼してる仲間に殺それるかもしれないんだぞ!それでもいいのか!」
目を血眼にして必死に俺を説得してる。
ああ...くだらない
俺はただ思ったこと、言うべきことだけを口にする。
「聞きたがってたのは俺だが、お前の被害者報告ごときで俺が動くからどうかは別だ」
そりゃミアの過去を聞いて色々思った事はある。考えさせられることもある。
「お前には俺がそんなに安い奴に見えるのか?」
死徒の言ってることは事実だろうし、あいつの抱く感情も本物だった。
「どいつもこいつも、ミアの事を絶殺絶殺って流行語みたいに声揃えて言いやがって...」
けど、ミアの涙も本物だった。
「お前らにとってミアは英雄の、悪魔の絶殺かもしんねぇけどよ...」
今は顔をうつ伏せているけど、悲しんでいる、泣いているのはわかる。
「俺にとっちゃただのパートナーなんだよ!」
ならそれだけでいい。理由なんてそれだけいい。
「俺を殺すだって?やらるもんならやってみろ!」
だから俺は...あいつの言葉を...あいつを!否定する!
「ミアが俺を殺す事はない!絶対に...絶対にだ!」
一章が終わる前に日常回入れようか悩んでるリヴァイ論です。
さっさと二章行きたい気もしますがカエデやエルモアとの共闘も入れたいんですよね。
さて今回、アルト君がかっこいい回でした。いや今までかっこいい回がなかったのもあれですし、今回かっこよかったのって最後だけじゃないですか!
Q.主人公の不遇具合どうなってるんですか?
A.まあ、こんなもんですよ主人公なんて。
茶番はさておき、といつもても特に話すことは無く...次回をお楽しみにください。
最後までご愛読ありがとうございます。次回も是非見て下さい




