49話 罪悪感と傷
新年早々の授業でガッツリねむねむするこの頃。
年が変わっても俺は変わりません!良くも悪くも!
これでいい。私はそう自分に言い聞かせた。
アルトに手をあげたことが罪悪感として胸に残る。けど...
「あればっかりはアルトが悪い...私にだって触れて欲しくない部分はある...」
「それは、元パートナーの奴の事か?」
「ッ!!」
独り言として呟いたはずの言葉を誰かに聞かれていた。
私は咄嗟に銃を手に取りながら振り返る。
そして、そこにいた彼の名を呼ぶ。
「カエデ・ホムラ...」
「随分と気が立ってるな。学園長に何か言われたか?」
カエデは銃口を向けられてるというのにも関わらず腕を組み壁に寄りかかっている。
私が撃たないと確信しているのだろう。舐められたものだ。これも私が彼の足音に気づかなかったのも、全部私が緩く接し過ぎたからだ。
「何か用...?」
少し腹立たしく感じた私は銃口を向けたまま聞いた。
すると彼は少し驚いた表情を見せるが、それも一瞬だけで変わらず寄りかかったまま答えた。
「別に用はない。ただ食堂でアルトをぶん回してるのを見て気になっただけだ」
それだけ。と言う。
彼から聞こえる音に嘘はない。そもそも彼は嘘をつくような人間ではない。本当にそれだけなんだろう。
ならこれ以上関わる必要も無いと感じた私は銃を仕舞い、彼に背を向ける。
歩き出す私を止めるように彼は言葉を発した。
「だがまあ、どうやら俺の無駄足だったらしい」
どうせ足を止めるためだけの口実だ。振り向く必要は無い。けど、何故か彼の言葉毎回、意味を含んだ音が聞こえる。
「...何が...?」
結局、私は足を止め振り向いた。
しかし今度は彼の方が興味を無くしたかのように台詞だけを残して去って言った。
「どうやら今のお前は、ただの絶殺のようだからな。何でもない」
彼の背中を見送る中、私は頭の中で考えた。
ただの絶殺とはどういう意味だろう?けれど、どんなに考えても、その言葉の意味は私にはわからなかった。いや、わかろうとしなかった。今の私はそれで十分だから...
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食堂でミアに投げ回され、床に叩きつけられた俺は現在医務室にてユスケに痛くもない(叩きつけられた時は痛かった)傷の治療を受けていた。
「君は怪我をしてないと死んでしまう病気なのかい?それともわざと来てる?」
ユスケはとーても嫌そうな顔をして聞いてきた。
俺はいつも通り渡されたコーヒーを一口飲み、言い返した。
「なわけあるか。それに今回の加害者はミアだぞ」
今俺、自分で物凄く悪いことを言った気がした。本人が居たら...居なくても頭下げて謝りたいくらいに悪いこと言った気がした。
そんな俺を見兼ねてかそれとも単に話の続きか、ユスケは真剣な表情で話し出した。
「君の怪我の経緯を聞いた限り、どちらが悪いか一概には言えない。ヴァイズさんの対応が冷め切ったものだって言うのも気になるし、君のデリカシーの無さが原因とも限らない」
ユスケは机の一番下の引き出しを開け、一冊のファイルを取り出しペラペラとめくり出す。
「それは?」
「この学園で僕が治してきた人の傷の内容と経歴」
ユスケはそのファイルから何枚もの紙をホチキスで一纏めにした分厚い紙を俺に渡してきた。
「これはヴァイズさんが今までに怪我した際に書いてもらった書類」
「えっ...」
ミアが怪我をした?こんなにも?
理解出来なかった。俺はミアの事をこの学園で一番強い存在だと認識していた。同様に学園で一番医務室の利用回数が少ないと思っていた。
だが渡された書類はざっと見ただけで五十枚以上はある。あそこまで強いミアがここまで怪我を医務室を利用していたというのはにわかには信じられなかった。
「ヴァイズさんは強いから怪我をしないんじゃない。今まで散々怪我をしてきたから強いんだよ」
ユスケは言った。
ミアは今まで数え切れない程怪我をし、その度に治してきた。中には服に隠れているが後遺症として痕が残っているものもある。
そして何より、ミアは、心に治せない傷を負っていると...
「ヴァイズさんは前に一度パートナーを亡くしていてね。それを自分のせいでだと今でも根に持って後悔してる。...絶対とは言わないけど、今回の二人の原因はそれが関係してると思う。当時のパートナーの件を僕はよく知らないないけど...アキハなら詳しいんじゃないかな?機会があったら聞いてみたら?」
ユスケは書類を仕舞いながら俺に奨める。
ミアの過去...
「でもそれは...」
「そうだね。ヴァイズさんの心に触れるようなもの。生半可な覚悟では聞いてはいけない。でも君が聞けば、それは支えになるんじゃないかな?」
「支え...」
今までミアは俺の支えになってた。
でも、俺は...
「なぁユスケ、俺は...!」
「失礼するわね!」
俺の言葉を遮るように医務室の扉が開かれた。そして入って来たのは、数十分前にその顔を見た学園長の秘書だった。
秘書はそのままスタスタと歩き俺の前で止まる。
「なんですか?」
俺が見上げる形で聞くと秘書は一枚の紙を渡してきた。そこに書かれていたのは。
「アルト・シャドウ。あなたに依頼を命じます。ミア・ヴァイズ・レットと共に南の村、ルードを調査する事。詳細はその紙を見なさい。では」
秘書は伝えるとこだけを伝えその場を後にした。
...また、依頼か。
ユスケが書類を覗きながら慰めるかのように声を掛けてくる。
「こんな時に...しかも明日。随分と急だね」
「ああ...」
「アキハ達に話を聞く余裕はないね」
「ああ...」
返事がどこか上の空の俺にユスケは肩に手を置き、真剣な眼差しで、けど笑顔で言った。
「ギクシャクした状況で行くのは辛いと思う。でも、話も後で聞ける。だから今はこの依頼をこなして、無事に帰って来るんだ!どんな怪我でも僕が絶対治すから!」
ユスケの笑顔なんて見たことあったけ...そんなどうでもいいことを考えるとつい、頬が緩み俺も笑顔になる。
「ああ...そうだな!」
ユスケの台詞に少し元気を貰った俺は快く返事をした。
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翌日早朝。
若干の眠気に襲われながらも俺は予定時刻通り馬車に乗ると、俺より早く来ていたパートナーが昨日と同じく優しさのない表情で俺を見た。
怒っているわけではない。でも、どこか不機嫌そうなパートナーに俺は少し戸惑い。けど、いつも通りに話し掛けた。
「おはよミア。今日の依頼もよろしく」
「...」
パートナーから応答はない。でもいい。ミアが何を抱えているか俺は知らないが、俺はいつも通り接する。それがパートナーとしての俺の在り方だと思ったから。
俺は無愛想なパートナーに向かい合うよう座り、いつもの不安と緊張を昨日決めた覚悟に紛らわせ今回の依頼に臨んだ。
父親が一人でグアムに行きやがったリヴァイ論です。
前日に某仰天ニュースでグアムの事故の話が出てたのに行ける所がすごいと思う。尊敬はしない。
さて今回、日常回二話目ですね。前半はミア視点。後半アルト視点で書いていきました。ミア視点の時、普段絡まないカエデとの絡みが書いてて面白かったです。
後半はアルトとユスケ。結構重い話してましたね。これから重い話が続きます。
それと前半にも出てきました「ミアの元パートナー」これについても近いうち話します。ちょっとこの先の話の展開に読者の皆様には驚いてもらいたいですね。
最後までご愛読ありがとうございます。次回も是非見て下さい。




