4話 隣の町
胃腸炎言ってもそこそこ余裕ありますし、なんならゲームやってるぐらいですから2本目投稿しようと思います!
もう何時間走った事だろうか、夜明けに出発したにも関わらず太陽は既に真上まで来ている。
自分の体力と腹がもう限界だと悲鳴を上げている。
恐らく今の時間は正午あたりだろうか、東隣の町には何度も行ったことはあるがそれも馬車でだ。走って来るなんて思ってもみなかった。
馬車で三時間ぐらい掛かったんだ。近いはずはないのは当たり前だが、そろそろ着いてもいい頃のはず。
そう思っていると前から建物らしきものが見えてきた。どうやら着いたらしい。俺はそのまま町の中に入る。
(とりあえず、宿が欲しいから町の人に聞いてみるか)
俺は近くで買い物をしている人がいたので宿につあて聞いてみた。
「すいません、自分はここから西隣の村から来たものですがこの町にどこか宿はありますか?」
「ラドル村から来た? 確か今日は馬車は出てないはずだから歩いて?」
「はい。夜明けからずっと走って来ました」
「そうかそれは大変だったねぇ、宿だったかい? それならそこを曲がった所に宿屋があるからそこに行ってみな」
「ありがとうございます!」
聞いた通りに行くとそこには「宿屋メリー」と書いた看板と、
「旅の疲れを癒すなら、ここ! 宿屋メリーにお泊りください! 朝昼夕飯とお風呂付きでなんと四万銭! どうぞ宿屋メリーにお立ち寄り下さい!」
茶色の髪を後ろで結び大きな声で呼子をする少女がいた。
三食飯と風呂がついて四万銭。若干高いような気がするがしょうがない。他を探すのも面倒だし、今は妥協するか。と俺が店の前で腕を組んで考えているとその様子を見つけて呼子の少女が近づいて来た。
「お兄さん! 旅の方ですか? 宿を探しているならここ! 宿屋大戸屋にどうぞお立ち寄りください!」
「旅の方ってのは間違ってないが、言っても隣村からだ」
「そうですか。隣の村からですか、あはははは」
目の前の少女は掌を額に当て大きく笑う。
こんな人が呼子をやってて良いのかよ。
まあそこは深く考えることもないだろうと話を戻す。
「えーっと、それで疲れてるんで早いとこ休みたいんだが......部屋空いてるか?」
「もちろん空いてますよ。どうぞどうぞ、ちょちょと書類に記入するだけ済みますので、あっお駄賃は後払いですのでご心配なく。ささ、中へ中へ」
(この人の接客の仕方が飲食店なんだが......いや深く考えるな俺)
中へ入るとそれなりに広いロビーに着いた。外から見ていて思ったがここの宿はかなり大きい。古典的な雰囲気を漂わせながらも柱や壁はかなり頑丈そうでちょっとやそっとじゃ壊れなそうだ。それに先程から何人もの従業員らしき人があちこち歩き回ってるのを見るあたりそれなり繁盛してるのが伺える。部屋が空いていて助かったと安堵する。
「お母さん! お客さん一人連れて来たよ!」
「はいはーい。あっ、どうもそれでは荷物お運びしますね。この町の地図でしたらそこに置いてありますので自由にお取りください。オケイさんこちらのお客様頼めるかしら?」
「お前の母さんかなり忙しそうだな、来るタイミング悪かったか?」
「そうでもないですよ、寧ろグッドタイミングです!」
「今この状況をグッドタイミングと言えるお前は鬼か何かか?」
「私が鬼ですか? あははは! お客さん面白いですね!」
なんだろう、こいつと話してるとすげぇ疲れる。早く話を終わらせてしまおう。
「何がグッドタイミングかは知らないが、早く手続きを......」
「カナエ! 今母さん忙しいからその人の相手お願い!」
決して良いと言えるタイミングではなかった。
「と言ってるが?」
「わかりました。ではこちらに来てください」
「はい」
「かなりお疲れですね、ではささっと済ませてしまいましょう!」
カナエという名の少女は手招いている。
精神面の疲れはこいつのせいで間違いない。
「ではこの書類にお名前、年齢、住所、その他諸々をお書き下さい」
「おい! 後半説明雑過ぎないか!」
「書き終わりましたらお荷物をお運びしますのでこちらに来てください」
「無視か!」
その後はなんやかんやでなんとか部屋を得ることが出来ただが、ここの宿は飯の時間帯が決まっており俺はそれを見事に逃した。
「三食着いてくるはずが早速一食目を取り損ねるとは......しょうがない。どこか外で食ってくるか」
幸いにもウルスが残していった金なら宿に一週間泊まってもまだ首都に行く金が残ってる。
財布を持って外に出ようとした時、勢いよく部屋の扉が開いた。
「アルト様ご飯をお持ちしました。いらっしゃいますかー? あれ? いない?」
「いるわ! ここに! 痛っ......勢いよく扉を開けるな! 静かに開けろ!」
扉の近くにいた俺は思いっきりぶつかってしまい額を抑えている。
「大丈夫ですか? アルト様傷は浅いですよー」
「お前一回本気で殴らせろ」
俺が怒りを込めて拳を握っているとカナエが手に袋を持っているのに気がついた。
「それはなんだ?」
「ああ、これは厨房で余っていたご飯です。あの様子でしたから恐らく昼食を取られていないと思い持ってきました」
何気気遣いは出来るんだなと少し感心しながら俺は袋を受け取った。
「腹が減ってて丁度外で食いに行こうか悩んでた所だ。ありがたく頂くよ」
お礼の言葉を述べて部屋のテーブルに着くとカナエが何故か着いて来て俺の前に座った。
「別にゴミは自分で処理するから仕事に戻っていいよ。てか戻ってくれるとありがたい」
「いえ、私今休憩時間なんです。暇です。ですので話相手になってください」
「俺が少しだけお前に対してありがたいと思った気持ちを返せ!そして休憩するなら他の所行け!」
「いいじゃないですかぁお話しましょうよ、お・は・な・し」
「めんどい! しない! 近い! 近い! 顔が近い! 飯が食えないから離れろ」
「それ私が持って来たんですよ。じゃあ食べてもいいのでお話しましょ」
「もう食べてる」
「じゃあお話で!」
「お前と話すと無駄に疲れるんだ! 俺を休ませてくれ!」
「ではまず、アルト様の村の話から」
「無視か!」
どう言っても帰りそうのないカナエに負けた俺は食事を終えた後に付き合う事にした。
------------------------
「へぇ、アルト君は首都の学校に入りたいんだ。って事はやっぱり異能力持ってるんだよね! すごいなぁ」
「異能持ってるのがそんなにすごいのか? それとお前なんで俺の事君呼びしてんだ?」
「様は仕事の時だけ今はプライベートの時間だから君呼びなの」
「仕事との区別が出来てるのは良いと思うが、馴れ馴れし過ぎだろ」
「良いじゃないそんな小さい事ぐらい」
小さくねぇだろ。と言おうとしたが流石にめんどくさくなりそうなのでやめた。
「.....アルト君は異能力使えるんだよね」
少し間が空いた後今度は先程と打って変わりカナエは悲しそうに話し始めた。
「私、異能力が無いんだ。お父さんもお母さんも異能力を持っていたのに私は持てなかった」
その表情は以前見たことがあった。そう、それは自分の力不足で自分だけが首都に行けなかったあの時と同じ表情だ。
同じか。いや俺は持っていて使えてないだけ、けどこいつは元々持つことが出来なかった。最初からその資格を持つことさえ出来なかった。
そう思うと込み上げてくる悔しさに胸がいっぱいになっていた。
「それである日、首都のお偉いさんがうちに来てねいつも以上に丁寧に対応してたんだけど、私がミスしてそのお偉いさんの服を汚しちゃったのそれを聞いた町長がお父さんを牢の中に閉じ込めたの、それで私......お客さんに何言ってんだろ。ごめんね、アルト君。今の忘れて」
同じなんかじゃない、俺より何倍も酷い目にあってる。
しかしそれを何も出来ない俺に、関係ないと考えてしまう俺自身に怒りを感じていた。気分を変えるためにひとつ質問してみる。
「お前がずっと笑っているのは接客業だからか? 苦労一つ見せず合間合間の休憩すら笑顔が絶えないのは何かあるのか?」
顔には出してないが後悔していた。何故こんな質問をしてしまったのか、今の発言を取り消そうと必死に考えるがそれより先に回答されてしまった。
「お父さんに言われたの。絶対帰ってくるからその時、私には笑顔で迎えて欲しいってだから、いつ帰って来ても良いようにずっと笑ってようって......」
カナエの目に涙が溜まるのが見える。俺はそんな彼女を見て何を言っていいのかわからず、ただ顔を伏せ「そうか」と短く返した。
前半バラエティ?よりで後半はちょっぴりシリアス。
次回はガンガンシリアスにするつもりです。
あと他のキャクターの案は何人かの友達に聞いてる感じですのですごい楽しみです正直早く出したい!
えっ?友達居たのかって?居るよ!両手で収まらないくらいには!...多分...とりあえず終わろう!
最後までご愛読ありがとうございます。次回も是非見てください