43話 期待と怒り
クリスマスssあげなかったことを少し後悔してるリヴァイ論です。
初夏と言ってもこの時期の夜は冷え込む。ましてや現在地が北陸に近い森の中で時間も深夜と一番気温が下がる時間帯。とはいえ、防寒機能のあるマントを羽織っているうえ何枚か着込んできたからある程度は大丈夫だと思っていた。思っていた...
「マジで言ってんのかよ...これ...ッ!」
目前の光景に愚痴を漏らすと吐いた息が白いことに気づく。そして、その白い吐息が目の前で凍り形を持った。
それだけでも異常なのだが、何よりヤバいのは愚痴をこぼした目の前の光景。
森を半壊させたリュウトの技よりも強力で、最早小さい国なら丸ごと多い尽くせるような。それ程までに計り知れず、尋常を超越した大規模過ぎる氷。
「おい、雑魚共いつまで遊んでんだ。門限はとっくに過ぎてんだろが!」
森の約半分程を氷で覆った張本人が凍りついたリュウトとその光景に唖然してた俺に怒鳴りつける。
「ヒュウガ...」
俺がその名を呼ぶと男-ヒュウガがこちらを睨む。
「何生まれたての羊みたいな声を出してやがる。みっともねぇ」
ヒュウガの鋭い眼光は俺の背筋に緊張を走らせた。
「だいたい、お前とハヤテが帰って来ないこの馬鹿共を探しに行ったんだろ?ただの人探しにどれだけ時間をかけてやがる」
「いや二人が戦ってて、止めに入ったら今度は俺がリュウトと戦うことになって...」
自分でも分からないほど俺は怯えていたらしく、いつもより声小さくこれまでの出来事を話すと、態度が気に食わなかったのかヒュウガの視線がさらに鋭くなった。
「それはお前が弱いからだ。どうせお前は相手が人間だからなどと言ってその刀を抜かなかったんだろが、それ都合のいい言い訳だ」
言い訳。ヒュウガはそう言った。
「自分の命が危険に晒されているのに武器を取れないのは弱い奴の言い訳だ。そしてお前はまだ、誰かの命を優先出来るほど強い人間じゃねぇ。そこは弁えろ雑魚」
その台詞はどこか俺の確信をつくようなものだった。
恐らくヒュウガが俺のことを雑魚と呼ぶ理由のひとつはこれなんだろう。
普段なら雑魚と呼ばれるのはものすごく嫌だが、この時だけは、ヒュウガが俺の為に言っていることだと理解出来たから何も言えなかった。
凍りついたリュウト触れ解凍していくヒュウガにこの状況をいつも通りと軽く見ている者が一人、高らかに声を掛ける。
「いやぁ、すみませんねヒュウガさん。助かりました」
頭を軽く下げながら変わらぬ調子でリヨウは話した。ただその口調は、
「今回はそいつの動きを止めきれなかった俺にも落ち度がありますし、アルトが未熟なのは元々。何より事の発端であるリュウトが全部悪いですし、あまり怒らなくても...」
まるで上司を宥める部下のような感じだった。
「そうだな...」
すると本当に宥められたのかヒュウガの表情から怒りが引いていくような気がした。
(すげぇ!リヨウすげぇ!)
俺はリヨウに尊敬の眼差しを向ける。
「それにリュウトも森を半壊させ暴走もしましたが、異死徒拾伍段は倒しました。拾弐段です!」
気づいた。多分これリヨウが異能力で怒りを沈めてるんだ。ていうかさっき引き金引いてたし。ふざけた口調にも納得がいった。
種がわかってしまった謎の喪失感も含め俺のリヨウへの視線は冷たいものへ変わっていた。
「まぁ、これ以上叱るのは俺の役じゃねぇしな。ジャッツの方からまた言われるだろうから俺はここで引いとくか」
「えっ?」
「あとでたっぷり説教受けて来い」
「えっ?」
ヒュウガの一言にリヨウは硬直する。
どうやらヒュウガは元々リヨウの意図に気づいていたらしい。......いやそれもあるがそれ以上に、ヒュウガにはリヨウの異能力が効いていないらしい。
リヨウの異能力がどんな能力でどれだけの効果があるかは知らないが、だとしても精神に影響を与える異能力が通じないことがあるのだろうか。
余程の精神力か、また別の何かか。
少し考え込んでいるとリュウトの解凍が終わったらしく、ヒュウガ達は既に移動を開始していた。
別に今考える事じゃない。と自分に言いつけ俺は彼らを追うように走った。
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「この馬鹿者が!」
俺らが帰ると整った顔立ちに額縁メガネを掛けた高身長の男が鬼の形相で叱りつけた。
「撤退の命令を無視して仲間同士で戦闘。迎えに行った方も巻き込まれるなど...一体何を考えている!!」
ごもっともで。
「お前らの身勝手な行動一つで他の者に迷惑がかかることを理解しろ!」
その通りでございます。
この男の発言が的確過ぎて言い返す言葉が見つからない。元々叱られている身なので言い返すつもりもないが。
「本来なら謹慎処分にでもしたいが、生憎今は遠征中だ。処分は帰ってからにする!」
そこまで言うと男は俺達に背を向けて立ち去った。
「あそこまで言っておいて処分は後でって...意外と甘いんだな」
「生徒長は甘いんじゃなくて、優しんですよ」
俺がぼそっと呟くと背後からミアではない女性の声がした。
振り向くと長い茶髪の女性が立っていた。
「あなたは?」
「私はライン・ペイント。生徒長...ソルルト・ジャッツさんの秘書を勤めてます。よろしくね。アルト君」
「はぁ...よろしくです」
なんというか優しいお姉さん的な人だ。
妹しか持ったことがないのでどことなく新鮮味があった。
さりげなく生徒長の名前も知れたし。知りたかったわけでもなかったが。
「それとアルト君」
「なんですか?」
ラインがこちらを見つめ真剣なそれでも笑顔で話し出した。
「生徒長はあなたに期待してるんです。ヒュウガさんが大事にしてる後輩だから生徒長として、あなたが間違った道に進まないように...それを理解してあげてください」
間違った道?不良になるな!ってことか?
「...善処します。というかヒュウガとあの生徒長って関わり合ったんですか?」
「あの二人はですね...」
「アルト...帰ってきてたんだ...」
ラインの声を遮るように、俺の帰りを待ちわびた誰さんが声を上げた。
「ミア...悪いな遅くなって」
申し訳なさと気恥しさに俺は後ろ髪を掻きながら話す。
「ううん。無事で良かった...話途中だった...?」
「あぁ...いや...」
返答に悩んでいるとラインさんが一体何を察したのか「邪魔者の私はここで」と言って足早に行ってしまった。
何、気遣ってるんですか。別にそういうのじゃないんですけど...
どこか誤解をして去って行ったラインを尻目に俺はミアに向き直る。
「あのさ、ミアに頼みたい事があるんだけどいいか?」
これは帰ってきてから言うと決めていた事だ。ヒュウガに言われ気づいた俺に足りないもの。
「?私でいいなら...」
ミアが承諾したので俺は内容について話す。
「対人戦の戦い方を教えて欲しい」
「対人戦の戦い方...いいけど、どうして...?」
俺はあの二人の元へ行ってからの出来事を話した。
俺がリュウトと戦った事。リュウトを相手にして刀を抜けなかった事。戦う事に躊躇してしまった事。
俺の話を聞いてミアは、微笑んだ。
「それで私に...ふふ、アルトは優しね...」
「ッ!...い、いや俺よりミアの方が優しいだろ...俺みたいな足手まといをちゃんとパートナーとして見てくれてんだから...」
毎度思うが不意打ちは良くないと思う。
俺は真っ赤になっているだろう顔を見せないよう努力した。
「アルトは優しいよ...私なんて...簡単に殺す人だから...」
「えっ...」
最後の方はボソボソしていて聴き取りにくかったが、今ミアの口から不吉な言葉が聞こえたような気がした。
「対人戦の戦い方だよね...今日は遅いし明日にしよう...」
「あぁ...そうだな」
ミアはそれ以上話を広げる気はないらしく俺も追求はしなかった。
ただ、ミアの表情はとても悲しそうだった。
そろそろ年末ですね。リヴァイ論です。
本編と何の関係もありませんがカラオケ行きました。六時間ぐらい歌ってました。すげぇ疲れたけどすげぇ楽しかったです。
さて今回...なんというかですね。ヒュウガのかなりヤバそうなスペックと生徒長の登場。色々ってほどじゃないですけど色々ありましたね。それ以上に話すことは無いですが...
次回はヒュウガが戦います。多分!!
最後までご愛読ありがとうごさいました。次回も是非見て下さい。




