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ディフェレンター  作者: 論です
1章 東洋編
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40話 一瞬の好機

前書きでかくことが無いこの頃。強いて言うなら一週間後テストってことくらい…テストか…

ハヤテとポチの協力によりかなり戦いやすくなった。

地雷と飛んでくる石を気にせず、ただ頸を斬ることだけ考えれば良い。それだけでここまで楽になるとは思っていなかった。

とは言え相手は異死徒拾五段、第拾参段。少し戦いやすくなった程度倒せる程簡単な相手ではない。事実、ハヤテとポチが助けに来てから三十分くらい経つが未だ刃が頸に届いていない。

こちらもやられていない以上お互い決め手に欠けていた。

拾参段が()()()()は、


「ふむ、空対地では多少不利になるか...ならば!」


拾参段は掌を下に向け、()()させた。

爆風に任せて飛ぶその速度は投石と同等、またはそれ以上のものだった。当然こちらに飛んできているということは頸を狙う事も出来たという事。けれどしなかった。ポチは投石同様体を捻って避けた。


「てっきり、頸狙いに行くかと思ったよ」

「まさか。そこまで馬鹿じゃない」


掌を爆発させこちらに飛んできているのだから、その意図は俺達に至近距離で爆発をぶつける為だろう。それに気づかない俺ではない。

それは拾参段も同じらしい。投石の時と同じように爆発を駆使して方向を変えてきた。というより追って来た。

最初は一直線に飛んでいた拾参段だが力加減がわかったのか細かく動くようになり、段々と距離が詰められて来た。

ポチも木々の間を飛んで振り切ろうとするがなかなかうまくいかない。


影陰乱舞(えいいんらんぶ)...神無月(かんなづき)...ッ!ハヤテ!」


技を出そうと刀を構えた俺をハヤテは止めた。


「焦るのは良くないよ。不利になるだけ」

「このまま逃げてたっていずれ追いつかれるだけだぞ!ならここで一旦引き離した方が...」


言い終える前に既にそこに拾参段がいないことに気づく。

急いでに辺りを見渡すが前後左右に姿はない。

まさかと思いポチの下に視線を向ける。


「なっ!」


まさかと思った通りだった。視線の先にはこちらに掌を向ける拾参段の姿があった。

目と目が会うと拾参段はニヤリと笑いそして、


「終わりだ!」


掌を爆発させた。

先程と同じく火炎放射に似た爆発の連鎖。

距離も速度も充分過ぎる。先程と同じ威力なら防ぐ事も斬ることも出来ない。

避ける事も出来...えっ...?

いつの間にか俺の体は浮いている。

俺の体は空中へ放り出されていた。

俺だけではない。ハヤテもだ。ポチの上から放り出されていた。


「ちょっ!まっ!...って危なっ!」


ポチのから放り出されたことで爆発を避けることは出来た。けれど、依然体は浮いたままなんの進展もしていない。

拾参段が再び掌を構える。

空中で身動きが取れない以上次の攻撃はどう足掻いても避けられない。

悪足掻きでもと思い刀に影を纏わせる。上手くあの爆発を斬れば直撃を避けられるかもしれない可能性にかけて。

だが、その可能性は一瞬にして消えた。


「な...んだと...!」


驚嘆の声を上げたのは拾参段だった。

こちらに掌を向けていた拾参段の腕は二本とも斬り落とされていた。

もちろん、俺もその光景を目の当たりにして驚いている。声にならないくらいには。

しかし、この中でただ一人。この瞬間を狙っていたかのような人物が一人。


「だから言ったじゃないか。焦るのは良くないよって」


俺達を抱えながら再び飛び上がるポチを撫でながらハヤテは言った。


------------------------


ポチの羽と羽の間に反射して光る何かが見えた。


「ナイフ?なんでここに?」

「僕が付けておいたのさ。あいつがポチから視線を外し、フリーになった瞬間を狙ってね」


ハヤテが言うには拾参段はいつでも振り払う事が出来たが、確実に仕留める為の一瞬を作る為、敢えて速度を落とし、追いつかれ、ピンチになる状況を作り出したと。

俺達に気を取られている拾参段をポチが下から不意打ちをかますと。

敵も味方も騙す大掛かりな、一度しか通用しない一瞬をこの男は作り出したのだ。

この時俺は心の底からハヤテのことを「すげぇ」と思った。

だが、まだ戦いは終わってない。

拾参段は腕を斬られ自由落下している。いくらこの高さとはいえ死徒である以上死ぬ事は無い。

俺は隣に視線をやるとハヤテは無言で頷いた。

それを見て俺はポチの背中を足場に拾参段目掛けて飛ぶ。

なかなか腕の再生しない拾参段はほぼ無防備。このまま頸を斬ればいいだけだった。

しかし、どんなに好機でも相手は異死徒拾伍段。簡単に頸を斬らせるほど優しくはなかった。


「この程度で勝てると思うな!」


拾参段は斬れた腕に自ら刺激を与え血を噴き出させた。


「俺の血には爆発粒子がある!空気中の二酸化炭素に触れる事で爆発する!お前が俺の頸を斬りに近づけば爆発の餌食となる!」

「チッ!」


現在急激な速度で拾参段に近づく俺はどうやってもここから引き返す事は出来ない。仮に引き返す事が出来たとしても、それはハヤテの作ったチャンスを無駄にすることになる。それだけは駄目だ。

粒子は目に見えないくらい小さな粒だ。小さすぎて影を斬ることが出来ない。影を見る事が出来ない...はずだった。

俺の視界にはバッチリと影が見えていた。()()だけ。

左眼は何も異常はなく、右眼の視界だけ()()()見えていた。

何が起こっているのか俺にはわからなかった。けれど、そんなことはどうでもいい。見えている以上斬ることは出来る。技を繰り出すことが出来る。

右眼によって見えた粒子の影は周囲に散らばっている。ただ、影を斬るだけでは意味が無い。全て同時に斬らなければ意味が無い。

ならば、この粒子達を一箇所にまとめればいい。


影陰乱舞(えいいんらんぶ)...葉月(はづき)...」

刀は影に触れ、捻り巻き取るようにして体を回転させる。

巻き陰(まきかげ)!!」


粒子は周囲に散らばった粒子を巻き込みながら、影に引っ張られた。

刀の後ろで影に引っ張られた粒子は二酸化炭素と触れ合う事で連鎖的に爆発し、そして拾参段の頸に刃が、届いた。


「これで終わりだ!」


俺は爆発の力に任せ刀を振り、頸を斬った。


------------------------


拾参段の体が灰のように消えたのを見届けると、頃合を見計らってかハヤテとポチが空から降りてきた。


「お疲れ様。拾参段討伐おめでとう」

「おう。でも、ほとんどハヤテのおかげだ。助かった」

「片方が欠けてたら勝てない相手だったんだし、そういうのは無しでいいよ」

「そうだな...」


ハヤテは二人で協力して倒したのだと言うが、それでも俺よりハヤテの方が頑張っていた。ハヤテがいたからこその勝利だ。

俺は口には出さず心の中でハヤテを賞賛した。

それから数秒経つとハヤテの元に一匹の鳩が飛んできて耳打ちをしている。

鳩が人間の言葉を喋れるとは思えないが恐らくハヤテの異能力で伝わっているのだろう。話し終えた鳩にハヤテは「わかった。すぐ向かうよ」とだけ言い再び飛んで行った。


「何かあったのか?」


俺が聞くとハヤテはこちらに笑顔を向け答える。


「一日目の遠征終了だってさ」


その一言に俺はやりきったかのように脱力する。

拾参段を倒しても遠征が終わってないということから強ばっていた体が一気に力が抜ける。

安心感と疲れからその場に倒れ込んでしまった。

ハヤテも緊張していたのか、俺のだらしない様子を見て苦笑し、隣に佇むポチに体を預ける。

それから二人で疲れきった声で談笑していると、遠くから一人の姿が見えた。


「ミア!」


見間違えるはずのないその姿に俺は勢いよく立ち上がり駆け寄る。


「アルト...良かった...無事で...」


俺を見つけるなりミアは消え入りそうな声で呟いた。

そんなミアを見て俺は申し訳なさと帰ってきたと言う達成感を込め言う。


「心配かけてごめん。それと...ただいま!」

「お帰り...アルト...」


二人いつの日かと同じようなやり取りをした。

一人状況に置いてかれてハヤテはわざとらしい咳払いをする。


「えー...アルト、ミアさん。僕はこれから他のチームに遠征終了の事を知らせに行くんで先帰っていて下さい。あと、あんまり人のいる前でイチャイチャしないで」


そう言ってハヤテは俺が反論するよりも速く、ポチに乗って飛んでってしまった。

俺が顔を真っ赤にして抑えていると、ミアは不思議そうにこちらに顔を覗き込む。

相変わらず何も感じていない様子のミアに、呆れるような、少し安心したような気分になった俺はミアの前に立ち、


「さて、帰るか」


彼女の手を引いて歩き出した。

手を引いたのは良かったが、途中で恥ずかしくなり、引き剥がすように手を離した。


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