31話 大切な仲間
四連休中ぐうたらし過ぎたと気づいたこの頃。
「私と...付き合って...!」
部屋にやってきたミアの開口ひとこと目に俺は頭を悩ませていた。
(付き合って?え?どういう事?本気ですか?本気なんですか?本気で捉えていいんですか?え?)
俺が身を捩って悶えているとミアがお前の一言を付け足した。
「散歩...付き合って...」
「......ん?散歩......?」
「うん...散歩...」
まだ半分くらい理解出来ておらず、何処ろか頭が回ってない中ミアは俺の手を引いて外へ向かった。
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冷んやりとした夜風が肌を撫でる。
街の灯りは賑わいを忘れず、未だ多くの人があちらこちらを行き交っていた。
(首都とは言え夜という時点で死徒が出る可能性もある。それでも働き続けるのだからよっぽど働き者なんだろう)
人が行き交うのだから当然、店の人も起きて働いてるという事。
面倒なことは極力避けたい俺からすれば彼らの働きは感心するものだった。
同時に以前ユキナに言われたことが頭に浮かんだ。
(どうして面倒なことを見返りも求めずやろうとするのか...)
今やっている境地の特訓はプラスになるから良いとして、
なんで俺は死徒からあの村を、あの人達を守ろうとしたんだ?
なんであの時、異死徒拾伍段と戦うことを選んだんだ?
大怪我をして死にかけてたのに、どうしてまた戦おうとしてるんだ?
本当に俺は見返り求めてないのか?
その答えは首都に来た今でも出ていなかった。
体が勝手に動いた。それ以上でもそれ以下でもない。ただそれだけ。
ユキナは最も大切など思える人が出来たらわかると言っていた。
確かにカエデやエルモアは大切な人だし、ハヤテ達も大事な仲間だと思うけど、やはり答えは出てない。
(大切な人...か...)
俺は隣を歩くパートナーを見る。
(どういう意味での大切なんだろう。恋愛感情的なものも含めるのだろうか...)
視線に気がついたのかミアが俺を見つめ返す。
その途端、顔に熱が篭るを感じる。
(そういう意味じゃないだろ!仲間としての意味のはず...)
俺が心の中でそう決めつけるとミアが口を開いた。
「アルトにとって...私は大切な仲間...?」
「え?」
自分が考えていたことを言われ驚いていると、ミアが不思議なことを言った。
「私は耳がいいから...アルトの考えてることが音として聴こえる...」
「音として?はぁ...でもじゃあ、なんで耳がいいのにいつもヘッドフォンつけてるんだ?」
耳がいいなら声をよく聴くためにヘッドフォンは付けないはず...どうしてなんだ?
「それは...」
「言いづらいなら無理して言わなくていいよ」
辛そうな表情をしてるミアを見て無意識に言葉が出た。
感情を聴きとる。
似たような事は出来なくはない。
ただ、俺の場合は観ると言うだけ。
観ると聴くでは感じ取り方が違うのだろう。
だから、ミアにつらい思いはさせたくないと思った。
ミアは「ありがとう...」と言った後、最初の質問から続けるように言葉紡いだ。
「私にとってアルトは大切な仲間...パートナー。死んで欲しくないし、辛い思いをして欲しくない。苦しい時は無理せず口にして欲しい...相談に乗るから...」
「それに...」と言葉を繋げる。
「アルトが頑張ってるのはちゃんと私が理解してる...その努力はちゃんと積み重なってる...」
ミアはヘッドフォンを外し、俺の肩に頭を置いく。そのまま話を続ける。
「積み重なった努力は形になる...絶対に...アルトの強さになる...」
その言葉はとても優しかった。
母親が慰めてくれるような優しさだ。
母親を殺した死徒を殺す。その憎しみは忘れたわけではなかった。
けれど、ミアの言葉は俺の憎しみを包み消すほど優しく、暖かかった。
「ただ...どんなに積み重なっても、どんなに成長してもアルトはアルトだから...そして、私はアルトの隣にいつでもいるから...」
努力は積み重なり形になる。けれども俺の姿は変わらない。俺は俺のままで在り続ける。
その言葉に俺は頭の中で何が流れた。
昔の思い出。村での思い出。
「ああ...そういう事か...カエデはこの事を言ってたのか...本当に回りくどい奴だ」
悩んでいたものに答えが出た事、回りくどくも手を貸してくれた事、村の事を忘れてなかった事。
それが嬉しくつい笑いが溢れる。
ミアが心配そうな顔で見つめているのに気づき、俺は「大丈夫。それとありがとう」と答える。
夜も深くなり、街を歩く人の数が減ってきたので寮に戻る事にした。
寮に着いてからは余計な話はせず二人とも部屋に帰った。
帰る間際、俺は改めてミアに「今日は本当にありがとう...」と言った。
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翌日から俺はカエデに手伝ってもらい、村にいた頃やっていたある事を練習した。
久々にやったにも関わらず体はよく覚えていて無理せず出来た。
境地の特訓もエルモアやハヤテ、アキハ達の指導と体力が伸びたことにより体に染み込んできた。
そして、さらに五日経った頃。
前回と同じ時間にヒュウガは木刀を持って現れた。
最初は準備万端の俺を見て驚いていたが、後ろにいるミア達を見て納得が行ったかのように頷く。
「準備が良さそうで、何より顔つきが変わったな。雑魚から挑戦者になった...悪くねぇ...」
そう言いヒュウガは木刀を構える。
俺も同じく刀を構える。
風が吹き葉が揺れる。
一輪の花から花びらが落ちた時、俺とヒュウガは互いに動いた。
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その日呼ばれやってきたのは学園長の部屋だった。
学園長はいつもと変わらず微笑み俺とミアを迎えた。
「呼び答えに応じたと言う事は...境地に至ったようだね...」
学園長の発言に俺...ではなく、ミアが首を横に振り答えた。
「アルトはまだ境地に至ってません。ですが、アルトには境地に至る実力があります。私が保証します。ですので、依頼...受けさせてもらいます」
学園長は「うんうん」と笑顔のまま頷いた。
「ミア君が言うなら間違い無いんだろう。実際、戦場の方で直接戦って境地に至る事が多いからね。アルト君、ミア君、君たちを信じよう」
学園長は自らの引き出しから一枚の紙を取り出す。そして、
「君達に北の街ウヌスの調査を命ずる」
そう言って机に置いたその紙に力強くハンコを押した。
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出発当日。
その日の出発には珍しくカエデ達が見送りに来ていた。
「アルト、ヴァイズ・レット。ちゃんと帰って来いよ!」
「二人とも頑張れ!」
「アルト、無理すんなよな!」
「二人とも頑張ってくださいね。お土産待ってます」
一人場違いな発言をした奴がいたが無視しよう。
俺らはカエデ達に手を振り馬車に乗り込んだ。
馬車からカエデ達を見下ろしていると、ヒュウガが俺達に言葉をかけた。
「無理せず出来るだけのことをこなせ。そして生きて帰って来い...頑張れ...」
最高のエールをもらった俺とミアは彼らに「行ってくる」と告げる。
その瞬間、馬車は動き出す。
だんだんと小さくなる彼らの姿を俺とミアは延々と見続けた。
そして、完全に見えなくなったところでミアが俺を見つめ言った。
「生きて帰ろ...アキハ達の元に...」
「もちろんだ。帰ってあいつらに朗報を聞かせてやろうぜ」
「うん...」
未だ応答のないもう一人の俺の事を心配しながらも俺は進む先を見つめる。
(ミアが、カエデ達が俺を手伝ってくれた。その想いに答えるため、決して死ぬわけには行かない。生きて帰る!)
俺はここの中で強く念じ刀を握った。
モチベーションと気力は比例しないと気がついたリヴァイ論です。
モチベーションはあるんですよ。絶えないくらいに。ただ、書く気力がないんですよ。てか、疲れが取れないです。辛いです。
さて今回は、日常回ラストですね。
前半ミアちゃんとアルト君が話して、後半は依頼行きますよと。若干駆け足感はありますが自分の中では良いと思ってます。
今回のミアちゃんは色々思わせぶりな発言多かったんじゃないでしょうか?読者の皆様には良い感じに捉えていただきたいです。
次回は成長したアルト君が北の街ウヌスに行って、死徒と戦います。成長したアルト君の姿を是非ご覧ください。
最後までご愛読ありがとうございます。次回も是非見て下さい。




