21話 アルトのとっておき
時代感中世のヨーロッパをイメージしてますが、若干現代寄りのところはあります。そっちの方がなんかおしゃれでしょ?
会場全体が静まり返る。
俺の技によってアルトの姿が消えてから2分程度がたった。それからアルトは姿を現さない。痺れを切らした俺は審判役を務める秘書に向かって叫んだ。
「どんだけ待ってもアイツは出てこねえ!時間の無駄だ!俺の勝ちでいいだろ」
それにと続ける。
「それに、このまま時間が経てばアイツは死ぬかもしれねぇぞ。あんたら的には助けなくていいのか?」
土に埋もれたなら時間を掛けるだけアルトの助かる確率が減る。場合によっては死ぬかもしれない。そのことを忠告したと言うのに秘書は顔色一つ変えず、ただアルトの埋もれてる盛り上がった土を見つめる。その姿に呆れた俺は、
「俺の勝ちだ。あとは好きにしろ」
と出口に向かって歩き始める。
「まさか、本気で勝ったと思ってるんのですか?」
「なに?」
秘書の言葉に足を止め、振り返る。
「どう言う事だ?」と聞きたそうなダイチに対し秘書は丁寧に話す。
「もし、あなたがこれで勝ったと思ってるのでしたらAランクを辞めてもらいます。実力はどうあれ判断が愚かすぎますので」
「なんだと...?」
その言葉がイラッとした俺は秘書の胸ぐらを掴み問いかける。
「どう見ても俺の勝ちだろ!それともなんだ?お前らはアイツの勝ちしか認めないのか?」
怒りを露わにした俺に忠告をするかのように笑いながら喋り出す。
「私に文句を言ったところで何にもなりません...ただアルト・シャドウはまだ倒れてないですよ...」
不敵な笑みを浮かべた秘書から不気味さから手を離すと、その瞬間俺の体は壁の方まで吹き飛ばされた。
「ぐはっ!」
壁に激突した。
痛みをこらえながら剣を支えに立ち上がり秘書の方に目を向ける。
「何が起きた...俺は何をされた?」
するとそこには二つの姿があった。一つは先程まで話していた秘書。もう一つは...
「不意打ちは申し訳ないが、俺も負けたくはないんでね」
聞き覚えのある声。とても気に食わない、聞くだけ腹が立つ声だ。けれど、今はそんな腹立たしさよりも驚きの方が遥かに俺の頭の中を埋め尽くしていた。
「第二ラウンドだ、ダイチ・ダイガ。俺達のとっておきを見せてやる」
秘書の忠告は正しかった。倒したはずの、いや、倒したと思っていたその男は再び俺の前に立っている。
「さぁ、覚悟を決めな!」
そう言い刀を構えた。
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正直に言えば、何故自分が無事なのかわかってない。
ダイチの攻撃を避けれる距離じゃなかったし、縮地も咄嗟には使えなかった、防御手段もなかった、助かるとも思ってなかった。けど、今俺が無事でいるのは事実だ。
ダイチが立ち上がったのを見てこちらも攻めかかる。
まだ意識が朦朧としているのか、岩で防御せず剣で刀を受け止めた。その剣にも力は入っておらず、普通に押し切ることが出来る程。やがて危機感を感じたのか俺を引き剥がすように岩を突き出した。追い打ちをかけるように幾多もの岩を放つが今の俺なら十分に対応できる程度だった。
ダイチも余裕が出来たらしく攻撃を一度やめ、こちらに話しかけて来た。
「...なんで生きてる?あれを喰らってなんで立ってられる?手加減したつもりもないし、あの距離じゃお前がどんなに早くても避けられないはずだ。なのに何故だ?」
ダイチの表情からは疑問と怒りとそして不安が伺える。何に対して不安を抱いてるかはわからないが、俺はダイチの疑問に正直に答える。
「さてな、俺もどうして無事だか全くもってわからん。ただ...あっちの俺が何かしたんだろうな」
俺は言い分を聞きダイチは表情からは不安をかき消し、強気に言い返す。
「なんでもいいが、倒れてねえなら倒れるまでやるだけだ。お前のとっておきが何かは知らねえが、俺に勝てるわけねぇだろ!」
言い終わると同時に足元から針岩が飛び出す。
俺は咄嗟に反応し、一歩引いてからさっきと同じように刀で影を斬り落とす。そしてすぐさま縮地を使い距離を詰める。しかしダイチもそれを予想していたらしく地面から足が離れたタイミングで丸太岩と突き出す。対して俺はただ冷静に、
(今だ...)
スッとほんの少しだけ小さく息を吸い、吐く。そして突き出された丸太岩の手前で本来着く事の出来ない一歩で踏み込み、岩を斬る。そしてまた小さく呼吸をし、そのままさらに一歩を踏み込み縮地で距離を詰める。
「なっ!」
その動きにこの場にいる誰もが驚愕しただろう。当然だ。俺でも出来ると思ってなかったのだから。
人間縮地に限らず一度地面から離れた足を意図的に着かせるなど簡単に出来るものではない。ましてや縮地は速度で表せるものではない。その動きを勢いすら留めずあの攻撃を返したのだ。
俺はさらに距離を詰め、懐に入ることができた。そして再び剣術戦に持ち込んだ。
やはり剣術は俺の方が上らしく、一歩ずつ後ろに下がっている。
また小さく息を呼吸をする。それと同時に勢いよくダイチの剣を弾く。俺はそのまま無防備になったダイチのみぞおちに渾身の一撃を打ち込む。
ダイチは何歩も後退り少ししたところで膝をつく。かなりダメージが入ったようで未だに腹部を押させている。しかし本人はまだ負けを認めていないらしく、こちらを睨みつける。
「はぁ...」
溜息をつく。俺はしょうがないと思いダイチの所まで距離を詰める。しかしまたしても直前のタイミングで土壁を作り出し防がれる。ただ今の俺ではこの程度で手こずる事もなくすぐに斬り落とす。だが、その一瞬でダイチは攻撃の準備を完了していた。
「これでも喰らえ」
周りにいくつもの岩が浮かんでいた。
「『土流・乱れ弾岩』!!」
ダイチの合図とともに一斉にこちらに向かって飛んできた。
見てわかる。あれは絶対痛い。
小さく呼吸をする。そして後ろに向かって縮地をし、飛んでくる弾岩を避け、斬り落とした。着地のタイミングで体の向きを変え縮地で逃げる。オートというよりダイチの意思で操ってるようで延々と付いてくる。
「くそっ!めんどくせぇ!」
振り切らないと捉えた俺は小さく呼吸する。
「おりゃあ!」
地面に刀を突き刺し、影を引っ張り出す。そして飛んできた弾岩を巻き込むように影をぶつける。
「何だよそれっ!」
「自分の技は教えねえくせに、俺の事は教えろか?調子乗んな!」
小さく呼吸をしてからすぐに向き直し、縮地を使い距離を詰める。道中岩を突き出し妨害するもその程度では止まらない。
「オレもそろそろ飽きてきたし、この体も長持ちしねえからなっ」
呼吸と共に強く踏み込み、黒く禍々しい影を持った刀で、全力で斬りつける。
「これで終わりだ!」
ガンッ!
鈍い音がした。ダイチの剣は折れ、ダイチの体と共に地面に倒れ伏せた。
「.........」
沈黙が流れる。倒れて動かないダイチを見て生徒教師全員がその結果を悟った。悟ったからこそその事実を受け止めきれず口を開けたまま固まっている。
そして俺達の戦いを間近で見ていた秘書が熱を注ぐように高らかに声を上げる。
「勝者あり!勝者、アルト・シャドウ!!」
俺は小さく呼吸し、左手をあげ拳を握る。そして、
「しゃあぁ!」
勝利の雄叫びをあげる。
それを聞いた生徒達はみるみる表情を変え、一斉に「オーッ!!」と喝采を浴びせる。
(勝った。俺がダイチに、勝った。体中の痛くて今にも倒れそうだけど、その前にやりたい事がある。この喜びを伝えたい相手がいる)
会場内をキョロキョロと見渡す。探していた相手はすぐ見つかった。
この喝采の中唯一声を上げず、ただこちらに笑顔を向け拍手を送る相手。
短期間で俺が勝てるまで特訓してくれた相手。
俺を学園に連れてきてくれた相手。
俺の勝利を信じ続けてくれた相手。
その相手ー自分のパートナーに親指を立て、
「勝ったぜ、ミア」
最高の笑顔を向ける。
影対土これにて終了。
それなりに頑張りましたが、やっぱり戦闘シーンの表現は難しいですね。ただ最後の部分は良い感じに出来たと思います。話が進んだらアルト君とミアちゃんのss書きたいですなぁ。
次回は来週中に投稿できればと思います。テスト間際なのでそろそろ勉強しないと...!まあ余裕ありますけど。
それとこの前書き後書き見てる人ならわかると思いますけど、俺学生ですよ笑。
最後までご愛読ありがとうございます。次回も是非見てください。




