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ショートストーリーズ  作者: 松田葉子
9/18

鈴蘭の花言葉

Twitter投稿日:4月1日

春は出会いと別れの季節。


これは僕の不思議なお話。




入学式が終わり帰路の途中、僕は忘れ物をしたことに気づき再び教室へと向かった。


すると、僕の席に女子が窓の方を向き頬杖ついて座っていた。


「あの、僕の席なんですけど・・・」


「わっ、ごめんっ」


急に声を掛けたのと、その席の人間が来たのと両方に対して驚き謝ってきたようだ。


こちらも少し申し訳なくなった。


「私2年生なんだけど、この間までこの席だったの」


なるほど。


「ここから眺める桜はどんなかな、と思って、君たち新入生が帰った後に眺めに来たわけ」


確かに終業式の頃じゃ良くて蕾だからなぁ。


「先輩が新入生の時は咲いてなかったんですか?」


「私の時は咲くのがちょっと早かったのと、雨のせいで殆ど散って葉桜状態だったのよ」


なるほど。


「で、どうしたの。忘れ物?」


「はい、机の中にプリント忘れちゃって」


先輩がクリアファイルに入ったプリントを机の中から出して渡してくれた。


「ありがとうございます。じゃ、これで・・・」


「ねぇ、一緒に花見しよ」


「え?」


「一人で見るより二人がいい」


そういうものなのか分からないけど、僕はそれを承諾し自己紹介をしてお互いのことについて訊いて話した。


結局夕暮れまでいたのだが、家が近いことが分かったので一緒に帰ることになった。


先輩の家まで来た時。


「あのさ、いつでも良いからさ、何でもいいの1輪だけでも良いから花を持って私の母親に話しに来てくれない?」


「先輩にじゃなくて、お母さんに?」


「そう。最近元気なくて。まぁ私のせいなんだけどさ」


「よく分かんないですけど分かりました。土曜のお昼に伺いますね」


「ほんとっ?ありがと。じゃ、よろしくね!」


先輩に見送られながら帰宅した。


その時になって連絡先を訊いておけば良かったと後悔したが、学校で会った時に訊くことにした。


だが、先輩に会わないまま土曜が来た。


特に用事もないので、約束通り先輩のお母さんに会いに行くことにした。


花は鈴蘭にしてみた。


花の白さが先輩の肌を彷彿とさせたからだ。


先輩の家のチャイムを鳴らす。


高校の後輩だと告げると少し不思議そうな声音ながらも、玄関先にいる僕の制服姿を見て、同じ高校ということは分かってくれた。


「あの子喜ぶだろうから、家に上がって挨拶してあげて」


何だ、先輩家にいるのか。



案内された先は仏壇だった。



写真立てに入っていたのは紛れもなく先輩の写真だった。





先輩はいつ死んだのだ?


どういうことだ?


仏壇に手を合わせながら思った。


お母さんの話を聞くと、先輩が亡くなったのは入学式の2日前だった。


どうやら僕が会ったのは、丁度葬式が一段落した頃だったみたいだ。


桜の木に思い入れがあったのかは分からないけど、あの席から見ることが最後の願いだったのか。


信じられないかもしれないが、その日に出会ったのだとお母さんに説明した。


「不思議だけど、あなたが実際に来てくれたんだからそうなんでしょうね」


そう言って微笑んでくれた顔は、先輩が笑った時とそっくりだと思った。


会った時にどんな話をしたのか訊かれたので説明した。


お母さんはそれに関した思い出話をしてくれた。


「あら、お茶がなくなったわね。淹れてくるわね」


お母さんが台所の方に行くのを見送って、視線をさっきまでお母さんが座っていた所に戻すと、先輩が座ってた。


「先輩、何であの時教室にいたんですか?」


「言ったじゃない、あそこから眺める桜を見たかったって。あの教室って桜の木が横にあるから花も近いじゃない?そういうのって中々ないからさ、楽しみにしてたんだけど見る前にまさか事故で死ぬとはね」


「確かにあそこからの桜は綺麗でした。先輩の後ろ姿も儚げな感じがしました」


先輩はニヤリとしながら


「死んでるからね」


と手を前に出してお化けのポーズをした。


冗談を言うとは思っていなかったので、笑ってしまった。


「花、鈴蘭にしたんだね。花言葉知ってて選んだの?」


「いや、単純に先輩の肌みたいだなと思って選びました」


「・・・何かエッチだ」


僕がえっ、と驚いた。


「ふふっ、鈴蘭の花言葉はね、再び幸せが訪れる。お母さんにエールを送ってくれてるみたいで嬉しい。ありがとね」


「今、あの子いるの?」


部屋の入口にお母さんが立っていた。


「はい。僕鈴蘭の花言葉知らないで持ってきたんですけど、お母さんは知ってますか?」


「ううん、知らない」


「再び幸せが訪れる、ですって」


するとお母さんの目から涙が零れ落ちてきた。


先輩はお母さんの方へ行き、肩に手を乗せて微笑んでいた。


「ありがとね、あなたのお陰で前向きになれた。人が本当に死ぬ時って誰にも思い出されなくなった時だと思うの。だからあの子の話を聞きにまた来てくれない?」


思い出されないことは、肉体が死ぬことより辛いことかもしれない。


「良いですよ、また来ます」


僕は先輩とではなくお母さんと連絡先を交換したのだった。





春は出会いと別れの季節。


これは僕の不思議なお話。

これは大分加筆しました。

文字制限云々ではなく、間を埋めたかったところもあったので。

私の作品には度々「死」に対する考えが出てきます。

どれも一貫しているのでつまりは私の考えなのです。共感してくれた方は是非メッセージお願いします。

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