第六話:申の惑星
補足:ゴブリンには、神聖日本皇国を含めたUMAの連中から鬼人と呼ばれている種族がいる。見た目は、ゴブリンとエルフの見た目を足して2で割ったような種族で、普通のゴブリンよりは力は劣るものの素早さ、知能が優れており、なおかつ精霊魔法が使える。
岩原一行は宿泊先である、珍海亭のとある部屋で大型テレビを見ていた。
今は、丑三つ時でとても面白そうな番組はやっていなかった。強いて言えば、タコ型エイリアンに着物姿の外国人女性が色っぽい喘ぎ声をあげながら抵抗しているような番組しかなかった。
「ハア、ハア、アリスたん・・・ハア、ハア、」
いつの間にか気がついていた大金は、チリ紙を一箱使い切る勢いでテレビにかじりついていた。
「こいつだけ一人部屋にすればよかった」と岩原は、持ってきた携帯電話で電子遊戯(第一の地球でいうスマホゲーム)をやりながら木暮に愚痴った。
もちろんその顔は赤い。
木暮は半ばあきれ顔で言った。
「気持ちは解るが我慢してくれ、性格的にこいつは敵に利用されやすい。」
大金は下半身裸で不快感をあらわにした。
「ほ、ほっといてください。」「そ、それに、彼女はあなたたちと同じ大和民族のはずなのに角のようなものが生えていますよあれはいったい。」
おもむろに話を逸らそうと、浜里の正体を聞いてきた。
「何者なのか、そう言いたいのだね大金君」
「ハイ」
「よかろう、彼女は紛れもない大和民族だよ、別の星出身のな。」
すると岩原は電子遊戯に飽きたのか、会話に参加してきた。
「だとするとあの容姿から察するに、宇宙大和連合機構の申の国出身の人というわけか」
「そうだ。」
実は申の国がある星は、数百年前に異世界の覇権国家として君臨していた中世ヨーロッパ風の国家が、その星の第二次世界大戦末期に突如、陸地ごと太平洋に似た海のど真ん中に出現したのだ。
その後、紆余曲折を得てエルフやオーク、ゴブリン(鬼人)、竜神、果てはミノタウロスのような見た目が混じった日本人が誕生するようになった。
もちろん浜里は、その中のゴブリン(鬼人)と呼ばれる種族のクウォーターである。
「そろそろ時間だな」
「何がです?」
「わからんのかね岩原君、我々は坂口荘からずっと怪しげな二人組につけられているのだよ。」
すると、扉の方からノックをする音がした。すぐさま岩原と木暮は、自分たちのカバンの中から拳銃を取り出し、大金はあわててチャンネルをエロ番組が多い9から国営放送が流れる1にかえて、息子の素がまとわりついたがちがちのチリ紙を証拠隠滅用のゴミ箱へ捨てた。
扉から聞こえてきたのは、聞きなれた女亭主の声だった。
「夜遅くにすみません。女亭主の浜里と申します。」
岩原と木暮は拳銃を下ろし、大金はズボンを上げた。
部屋の前の防犯カメラとつながっている部屋の中に設置されている小型テレビには、確かに札の形をした合鍵を持った浜里の姿が映っていた。
「入ってください」
木暮がそういうと『ピッ』という小さい音とともに扉が滑るように横に開き、浜里が一礼して部屋に入ってきた。
「やはり招かれざる客が旅館の前まで来たかね」
「ええ、これを見てください」
そういって浜里は、おもむろに袂からそばに置いてあるテレビのリモコンによく似た形の魔石を取り出して、電源ボタンを押した。すると1チャンネルを映していたテレビが、ブーンという音とともに急に虹色の砂嵐になり更にその数秒後には、二人の怪しげな男たちを映していた。
「こりゃたまげたなー」
岩原は動揺を隠せずにいると、木暮は自慢げに「これはどういう仕組みで撮影しているのか、岩原と大金君に説明してくれんかね、」と浜里風香にいった。
すると浜里は首をかしげて木暮に尋ねた。
「よろしいのですか?」
「構わんよ。但し岩原君、大金君、今からいうことは、他言無用だ。もし破ったら私の携帯にある記憶消去機能ですべての記憶を消し去って、頭文字に『せ』がつく病院に一生暮らしてもらうからな。」
そういうと木暮は、自分の携帯に搭載されているその記憶消去機能が表示されている画面を、悪役顔負けの笑みで岩原たちにみせた。
「ぜ、善処します。」と岩原は、顔を引きつらせながら木暮の迫力に後ずさりした。
「こ、この星には性行為病院なるものがあるのですか?」と大金は、顔を赤らめながら後ずさりした。
「そんなもんあるか―!」と同時に木暮のツッコミ(鉄拳)がクリーンヒットし大金はまた気絶した。
月曜日が忙しくて火曜日の投稿になってしまいごめんなさい(;'∀')