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37 何かの終わりと何かの始まり

 魔王セッテに勝利したホクトは、その後2人の妻を娶ることになった。

 アリアとリンカ。

 どちらも美しい女性たちだ。


 聖ノルテ王国の片隅で、娘のリズを含め4人仲良く暮らしていた彼らだったが、やがて他の魔王たちがその平穏を脅かす。


「あーもう。のんびりチーレムライフを邪魔するなよなぁ!」


 それに怒った彼らは、魔王と魔物の駆逐を決断する。


 女神の化身と勇者、それに彼らから加護を与えられ優秀な戦士へと成長したアリア。

 その3人の圧倒的な暴力によって、この世界から魔物たちは全て駆逐される運びとなった。


 魔王たちは特に見せ場もないまま十把一絡(じっぱひとから)げに処理され、その庇護者たる神々もリンカの本体にボコられて泣きながらこの世界から去っていく。


「あとは人間どもの統率だけだが……」


 魔物が消え去った世界では、当然の如く人間たちが覇権争いを始めていた。

 いつもなら、この後ホクトが勇者として世界を統一する流れとなる。

 手慣れた事であり、特に問題ないはずのその作業だったが、今回は少しばかり苦戦を強いられるていた。


「もう! たまには自力でがんばんなよさー。いつもいっつも女の子たちにばっか働かせてっ。そんなんだから万年生きても全然成長しないんだよっ君は」


 理由は単純で、お得意のハーレム戦法をリンカに封じられていたせいだった。


 本来ならば、有能な女性をその左手でナデポする事で片っ端から篭絡し、彼女たちの力でもって世界を治めるはずだった。

 だがリンカが正妻戦争に名乗り出たことで、それは阻止されてしまう。


「そうですよ。リズの父親として、もう少しカッコいい所を見せて下さい」


 戦闘と種付以外の面では、ホクトはダメダメだった。

 才能やセンスはあるのだろうがが、根本的にやる気がないせいだ。


 その脅威の種付能力も、リンカによってパイプカットの呪いをかけらたせいで、用をなしていない。

 

 最強の座も女神の化身たるリンカに奪われてしまい、今のホクトは、もはやただの種なし絶倫野郎に過ぎなかった。


「ううっ。俺の味方はもうリズだけか……」


「いやいや、勝手に私をお父さん側にしないでよー」


 成長し15歳となったリズは、ホクトの想定以上に美人へと育っていた。

 しかしその予想に反して、歳を経るごとにホクトから距離を置き始めていた。


「ああっ、リズまで俺を見捨てるのか?」


「ちょっ、くっつかないでってば!」


 縋りつく父と、汚いモノを払うように押しのける娘。


「……ボクはやっとで理解したよ。ホクト君がこれまで上手くやれてたのは、全部ハーレムのお蔭だったんだね」


「どういうことですか、リンカさん?」


 長年で正妻戦争を続けていた2人の間には、友情が生まれていた。

 女神であるリンカとただの人間のアリア。

 その2人が絆を築く、ある意味では奇跡とも言えるだろう。


「ホクト君ってばさ。ただ口説くだけなら、実はチートなしでも割と上手なんだよね」


「ああ……。上っ面だけは無駄にいいですからね、この人」


「そっ。でね口説いた女の子たちが、なんでホクト君を見捨てないのか。これまでちょっと不思議だったんだよね」


 ナデポの力で強制的に惚れさせたならともかく、普通に口説いた場合、その本性を知ればその想いは消失していくはず。

 だが実際はそんな事もなく、彼はずっとモテ続けたのだ。

 これまでは。


「結局のところ、ホクト君の価値はさ。常に女の子にモテ続けてる。その点にあったんだよね」


「といいますと?」


「えっとね。常時モテてるって事はさ、ようするに常に誰かから求められているって事だよね?」


「ええ、まあそうなりますね」


「でね。常に誰かから求められている事は、それだけ需要があるって事なんだ。そして需要が多ければ多いほど、その価値もまた上がっていく」


 存在の価値というものは、結局のところ需要と供給によって決定される。

 それは何も流通する商品にのみ留まる話ではないのだ。


「なるほど。沢山の女性が相争ってホクトさんを求め続けていたからこそ、その価値の下落が生じなかった訳ですね」


「そうそう。しかもその中には、多くのナデポ犠牲者たちも混ざってるしね」

 

 チートで強制的に魅了されているが故、彼女たちはホクトがどんな悪逆非道をしようとも、求めるのを止めない。

 ある意味ではサクラ(偽客)のような存在とも言えた。


「なるほど。例え裏で何人もの女性たちが幻滅しようとも、それが表に出てくる事はなかったのですね。それ以上の数の女性たちがずっと押し寄せていたから」


「後つけ加えればさ。女の子たちをずっととっかえひっかえしてたから、悪い部分があまり女性側からは見えてなかった。多分その辺も理由の一つだろうね」


 大量の女性を侍らせていたせいで、結果的に個々との接触時間が短かく、ボロが出なかった。

 そんな話だった。


「なるほど。だからナデポも使えず、ハーレムを作れなくなったホクトさんはこんなに情けないのですね」


「そう言うことだねー。こうして化けの皮を剥がしてやれば、ホクト君なんて所詮与えられた力で粋がってるだけの、ただの道化だったわけさ」


 2人の言葉を聞いて落胆を見せるホクト。

 そうしてホクトを散々ディスリ続ける彼女らだが、それでも決して彼の傍を去ろうとはしなかった。


「まったく仕方がない人です。私が一緒に居てあげないとやっぱりダメですね」


「そうだねぇ。ボクが居ないと、ダメダメだからねホクト君ってば」


 言いながらホクトの両端を陣取る彼女たち。


「お母さんもリンカさんも何でこんな人の事好きなんだろうねー」


 リズの言う通りで、2人はなんだかんだでホクトの事をずっと愛していた。

 それだけはあの時から何も変わってはいなかった。


「それは簡単な話だよ、リズ。お父さんが言葉では語れない魅力に溢れた存在だからさ」


「はぁ……。ホント、この人の一体どこがいいんだろう?」


 年頃の少女となったリズは、口ではそう言っているが、しかし内心では父ホクトの事を好きだった。

 今は情けない感じだが、2人きりになれば、ホクトはとても頼り甲斐のある男だった。


 それをアリアやリンカの前で見せたくない。

 彼女のそっけない態度は、そんな複雑な乙女心のせいであった。



 魔王たちから世界を救ったホクトは、それから10年以上の時を経て、世界の王へと君臨する。

 ナデポ縛りによって苦戦した彼だったが、それでも数十人規模の小ハーレムを築いて、どうにか統治体制を構築するに至る。


 そんな色に溺れた王の傍らには、いつも3人の女性が控えていた。

 そして世界はゆっくりと彼の色に染められていく。


これにて終了となります。

ここまでお付き合い頂いた皆様、どうもありがとうございました。


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