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2 ホクトの喪失

 女神リンカのいた真っ暗な空間から穴へと落とされた俺は、気が付けば見知らぬ天井を見上げていた。

 木造のそれは経年劣化が激しく、あちらこちらが朽ちておりボロボロの惨状となっていた。


「あれ……? ここは……」


「やっとで目が覚めたみたいだねー。まったくホクト君ったらお寝坊さんなんだからぁ」


 そう言って俺を見下ろす少女の名は――リンカ。

 見た目や纏う衣装は女神っぽい感じだが、俺はそんなの認めない。

 異世界チーレム生活なんかを強制してくるなんて、どう考えても邪神に決まっている。


 しかし、どうやら一連の出来事は夢ではなかったらしい。


 ……てことは、俺は本当に死んで異世界に転生したのか。


「そそっ、日本人の星見北斗君はもう死んだんだよ。んで、今の君は晴れてこの世界の住人となった訳さー」


 なんとも信じ難い話だが、俺の本能は残念な事にそれが真実であると告げていた。


「……そうか」


 嫌な現実から逃げても仕方がない。ともかく今は現状を把握すべきだと俺は身体を起こそうとする。だが――


「ってあれ? 身体が……動かない!?」


 何か見えない紐で雁字搦めにされているような感覚で、その場から身動き一つ取れないのだ。


「ボクさぁ、ちょっと考えたんだよねぇ。ホクト君がなんでそんな頑なに異世界チーレムを否定するのかなって……」


「そんなん当たり前だろうが……」


 誰がそんな借り物の力で、他人の上に立ちたいと思うんだ。

 だがそんな俺の想いなど気にも留めた様子もなく、尚もリンカは語り続ける。


「それでボク、分かっちゃんたんだー。ねぇ、ホクト君って童貞でしょ?」


「は!? いや……ど、童貞ちゃうわ!」


 思わずそう叫ぶも、実際には正真正銘の童貞であった。


「いいっていいって、別に見栄なんか張らなくったってさー。誰でも最初は童貞なんだよ?」


 そう言いながら、先程まで隣に立っていたはずのリンカが、気が付けば俺の上に跨る位置へと移動していた。


 いつの間にか服装も別物となっており、Yシャツをはだけた扇情的な姿へと変貌を遂げていた。

 服の隙間から覗くシミ一つ存在しない肌と、何より凹凸のはっきりした双丘が、俺の想いとは無関係にその脳髄へと電流を走らせる。


「ちょっ、お前なんて恰好を……」


 性格は最悪であっても、リンカは女神と呼ぶに相応しい容姿とプロポーションを持ち合わせていた。

 そんな彼女のあられもない姿を見て、不覚にも俺の息子はエレクチオンしてしまう。


「おいっ、ちょっ、何をする気だっ!」


 上に乗ったリンカの手が、今度は俺の衣服へと伸びていく。

 その動きに抵抗すべく必死に身体をよじるも、あっと言う間に生まれたままの姿へと剥かれてしまった。


「くぅ……俺だけに飽き足らず、息子まで(はずかし)めて何のつもりだ!」


 俺はもはや身動きがとれない状態だが、一方で息子の方は背伸びをしながら自由を満喫していた。

 その姿は記憶よりも遥かに大きく、そして力強い。……あとちゃんと皮が剥けてた。


「うーんとね。異世界転生って、本当は容姿とかはそのままのルールなんだけどさ。特別にちょっとだけサービスしてあげたんだよー」


 そう言って立派に育った俺の愚息を指差すリンカ。


 ……くそっ、余計なお世話にも程があるぞ!


「こんな事して、俺に一体何をするつもりだよ!」


 俺がそう言って睨み付けるも、リンカはただ不敵に微笑むばかりだ。


「えっとねぇ。ボク分かったんだぁ。ホクト君が異世界チーレムを否定するのって、童貞だからだよね?」


 そうリンカが言った次の瞬間、彼女の顔が俺の眼前へと迫り――そして唇を塞がれてしまう。

 そのまま身動きが取れない俺の口腔は、艶めかしいリンカの舌の動きによってなすがままに蹂躙されていく。


「ちょっ!? おまっ!? イキナリ何をしやがる!」


 初めての感覚からようやく解放された俺は、すぐさまリンカへと抗議の言葉を叫ぶ。


「何って……下準備?」


 リンカが指差す方を見れば、俺の息子が更なる成長を遂げていた。


 ……まさか、あれで全力では無かったというのかっ!?


 我が子とは思えない気高く雄々しいその立ち姿に、思わず戦慄を覚えてしまう。


「ふふっ、ホクト君、まだまだこれからだよぉ」


「くっ、こらっ、やめろ! マジでやめろ! ……もうホントにやめて!」


 しかし俺の抵抗の声は一切聞き入れらず、女神の舌技によって今度は全身が蹂躙されていく。

 未知の感覚――いや快楽によって体力を奪われ、息も絶え絶えとなってしまう俺。


 反して俺の息子はついに神代の領域へと達しつつあった。


「うんっ、そろそろかなぉ? 異世界ハーレムを認めない原因が童貞なんだったら、それを捨てさせればいいだけの話だよねー」


「……おい。おまえ……まさか。頼む、どうかそれだけは許してくれ……」


 これから自分の身へと降り掛かる災厄を理解した俺は、必死にそう懇願する。

 俺にはこれと決めた運命の女性と互いに初めてを遂げるという夢があった。


 だがここでリンカの暴虐を許せば、その夢は散る。


「ダーメ。どうしても辛いならさ、天井のシミでも数えとくといいよー」


 だがそんな俺の懇願は空しく通り過ぎ、俺の純潔は儚く散っていった。


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