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16A 魔王セッテ

 ホクトがアリアとの和解の一歩を踏み出していたその裏側で、別の危機がにじり寄ろうとしていた。


 その存在は、大陸北部に位置する"魔の森"と呼ばれる昏い森の最深部に鎮座していた。

 7大魔王の一角、セブンスギルティビースト"セッテ"だ。


 彼ら――あるいは彼女らは、この大陸に住まう鳥獣系の魔物たちを統べる王だ。

 そして女神アマルティアによって、ホクト同様に権能を与えられた超常の存在でもある。


『人間族に新たな魔王が出現しました』


 そんなセッテへと女神が告げる。


「マジかよぉ。他の魔王だけでもくそ面倒なのに、人間族にまでかよ。はぁ……」


 ひどく怠そうな男の声が響く。


 7大魔王たちは、それぞれが大陸の覇権を争う敵同士だ。


 現状は互いの戦力を削りながら測りながら牽制しあっている段階にある。

 人類がまだ滅亡していないのも、単に弱いが故に放置されていたに過ぎなかった。


 だが魔王が誕生したとなれば話は大きく変わる。

 いずれ人間族が覇権争いに食い込んでくることは明白となったからだ。

 

『ええ、しかもよりにもよって、格上の女神が介入してきたわ』


「ねぇ、それはちょっと不味いんじゃないのぉ?」


 女神の言葉に色気のある女性の声が応える。

 さきほどとは明らかに別人のようだが、その声も確かにセッテから発せられていた。

 そもそもこの場にはセッテの他に存在しない。


『ええ。恐らくだけど、あなたたちに与えた以上の権能を得ているはずよ』


「妬ましいわね。私たちにくれればいいのに……」


「はー、面白くなってきたじゃねぇか。いいねぇ!」


 また声の調子がガラリと変わる。

 ねちっこそうな女性の声に、気の強そうな女性の声が続く。


「そいつ……おいしいの?」


 続いて今度は無邪気な子供のような声が発せられる。

 食べる事のみに興味が向けられた、ある意味ではとても純粋な言葉だ。


『どうかしらね? 味は保証できないけど、上手く喰らえばきっと強くなれるわよ』


「はんっ、誰だろうが俺様たちの方が上だってことを教えてやらぁ!」


 全てを見下すような男の声がそう吠える。


「ああ、敵は全て殺す。殺す!殺す!殺す!!」


 また別の男の声が、壊れた機械のようにそう叫ぶ。


『なら早い方がいいわよ。まだ能力を全然使いこなしてないみたいだから』


 女神アマルティアの言葉どおり、人間族の魔王――ホクトは力を持て余し、いや疎んでいた。

 ならばそこに付け入る隙は大いにある。


 女神からホクトに関する情報を一通り聞いた魔王セッテを形成する7つの意思たち。

 そんな彼らが話し合いを始める。

 議題は人間族の魔王への対応についてだ。


 魔王セッテの肉体は複数の魔獣を合成したキメラがベースとなっている。

 獅子、狼、蛇、鳥、狐、虎、山羊の7体だ。

 

 その7体の意思が、7つの人格の核となっていた。


 もっとも現在は多くの魔獣やそれ以外さえも取り込んでおり、もはや獣とも呼べない異形の存在と化しつつあったが。


『結論は出たみたいね。応援してるわよ』


 話し合いはあっさりと終わり――そしてセッテは決断した。

 そうして彼らが率いる鳥獣系の魔物たちの連合体――"カルネージビースト"がついに動き出した。


 その目的は人間族に出現した8番目の魔王――ホクトの殺害であった。


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