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2話食卓の中で

「イタッタァ!!」

「はいはい。我慢しなよ男だろ?」

父親とのバトルによってコテンパンにされたイシルクは幼じみのケイラウに手当てしてもらいその近くでもう1人の幼じみのカンルスはケラケラとイシルク見て笑っている。ケイラウは、金髪を肩まで伸ばして可愛らしい顔をしている。彼女は傷に効く薬草を潰したやつをイシルクの怪我をした箇所に塗るたびに激痛がはしるのだった。

「しっかしまぁ、おめぇもしつこい奴だよな〜何回目だよ?」

「35回目だ。」

「35!!もう、諦めろよー」

やられた回数を聞いてさらに笑うカンルスにイシルクは若干、ムカつきを覚えながらも彼自身の気持ちを変えることはなかった。

「そうよ。ねぇ、いい加減あきらめたら?」

「何だよ?ケイラウまでカンルスと同じこと言うのか?」

「だって、あんたの父親ってこの村の族長でしょ?勝てっこないわよ。」

年に一度開かれる大会で1番強いやつが次の族長となる。ゼルンクが族長になってから100年の間、族長は交代することはなかった。100年無敗の父親にやっと成長が止まり大人となった若いイシルクでは勝てないのは道理だった。

「いいや!!俺は、諦めない!絶対に勝って俺は世界を冒険する!!」

「・・・何でそんなにも冒険がしたいのよ?この村にずっといればいいじゃない?」

「俺は、この村以外の世界を見たい。魔物の溢れる大陸や精霊が集う大陸。海というものや1面砂だという砂漠。自分の知らないものを俺は知りたいんだ。母さんみたいに。」

「あぁ〜お前のお袋って旅してたんだっけ。」

「そうだ!!これら、全部母さんから聞いたものだ!!」

半分近くは、前世の記憶からであるが1番の理由は小さい頃に亡くなった母親から寝物語で聞いた話だった。

「さてと!!父さんを倒すためにもっと修行しなくちゃな!!」

イシルクは勢いよく立つと2人を後にして走り出す。

「あいつも、変わんないねーお前も一苦労だな?」

「うっさい!!」

カンルスと一言にケイラウは、悪態をついた。









渓谷抜けるとそこから森が生い茂っておりその中の奥深くに綺麗な水を流す滝がイシルクの修行の場所だった。イシルクは、服を脱ぎ上半身を露わにすると腰を低く落とし、右腕で撃つ右腕で撃った後、右腕を引き左腕で空を撃つ。俗に言う正拳突きを彼はおこなっていた。1回撃つのに己の力を全て込める気で取り組んでいた。撃った数が数十から数百になって彼は止まらずイシルクの全身から汗が流れでる。撃ってから丁度1000回を超えたあたりで正拳突きをやめ、近くの滝で汗を流す。冷たい水が皮膚を刺激しむさ苦しい気分を消し去ってくれた。

「ふう。」

滝で気分を一新したイシルクは次に滝から落ちてきたと思われるイシルクの身長を越える流木を両手で担ぐ。そして、流木を上下に振る。右足を前に出すと同時に振りイシルクの頭らへんで止め、右足を戻すと同時に流木を上げる。

「もっと、高く上げた方がいいか?」

イシルクは、誰からも手ほどきを受けていない。そのため、どこがダメでどうすればいいかなど自己診断で済まさなければならない。100回ほど振って不満に思ったところがあったらそれを直しまた、100回振り次の不満を生み出す。こうした、一見、負の連鎖のようにみえる修行をイシルクは愚直なまでに行い続けた。









イシルクが、修行を終えたのは日が落ちかけ月が少し現れ始めたところだった。イシルクは急いで服を着て我が家へと帰る。家に帰ってくるとゼルンクが食事を食卓に並べているところだった。

「ただいま。」

「あぁ。」

帰宅時の挨拶を済ませると外から汲んできた水を溜めている桶で手を洗い食卓のある椅子に座る。ゼルンクもイシルクが座った後に椅子に座った。食卓には畑で採れた野菜と豆のスープにゼルンク特製のパンと渓谷を抜けた先の森で父親が先月狩った鹿の魔物の肉の燻製が並ばれていた。

「生きとし生きるモノに感謝と慈悲を」

「生きとし生きるモノに感謝と慈悲を」

巨人族特有の食事の挨拶を済ませると2人は黙々と食べる。そこには普通の家族にあるべき会話などなかった。

(母さんがいた時は普通に会話してたのになぁ)

イシルクの母親はこの村出身ではなかった。この村にふらっと現れそしてゼルンクと結婚した。しかし、イシルクが7歳の時に病で死んでしまった。それ以降、彼らの中に必要以上の会話が消えてしまった。

「イシルク。」

「何?」

イシルクが燻製に手を出そうとしているときにゼルンクから声がかけられる。イシルクは手を止めてゼルンクの次に放たれる声を待つ。

「一体いつになったら諦める?」

イシルクの夢のことを聞いているのだろうかゼルンクは冷たい声でイシルクに聞いた。

「諦めないさ。何度だって立ち向かう。」

イシルクはそれに明確な決意を声に乗せてゼルンクに返答する。

「絶対にか?」

「あぁ、絶対に」

「なぜ、そこまで、外にこだわる?」

「自分の見たことのない世界を見るために。」

ゼルンクは1回ため息をするとイシルクを見る。

「なら、チャンスは次で最後だ。1週間後、渓谷を抜けた先の丘で本気で闘ってやる。それまでに自分を磨け。」

ゼルンクの本気。

それは、何度やっても出すことのなかったモノ。100年間無敗の男の本気。イシルクにはそれに絶対に勝てるという自信はなかった。

「わかった。」

しかし、彼は諦めない自分の夢のために。

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