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初仕事

 さて、給料を前借したら2000万振り込まれた。

どんなことをさせられるのかと内心びくびくだったが、

この一か月、何の音さたもない。


 ただ、このウサギをかぶった、少女と、

その、同じ部屋で寝泊まりしながら,それ以外何もしていない。


 ただ事あるごとに話しかけてくるのは、気がめいる。

別に嫌いという訳じゃない。そもそも俺が嫌いになっていい人間などいない。


 自分が嫌いってわけじゃないんだ。

他の人たちがまぶしいすぎるくらいで。


「おはよう」


 これだ


 顔をくいっと傾げて、あいさつしてくる。

やっべ可愛いと思う。そのぐらいの普通の感覚がある。


 しかし、俺にはこれは重過ぎる。

毎日これをやってくるので、週二にしてくださいと

毎日手紙を書いて机の上においていたら、

机の上がその紙だらけになってしまい、

怒らせたことがあった。


 一日中質問攻めにあい、彼女の真っ赤なドレスが

5枚ほど増えるまでやめてもらえなかった。


 今日こそは返そうと思う。挨拶を。

なぜなら、もし挨拶を返したら、週二にしてくれるらしい。


「お、ぐはっ」


 彼女の赤いドレスがまた増えた。


「私その挑戦する姿勢、偉いと思うわ。

だけど今日はあなたの目を見続けるから。」


 待ってくれ、お、まで言えた!

これは小1時間ほど弁解したいが、俺にはしゃべることさえできない。


 もうお腹痛い、目が合っているわけじゃないんだが

見つめられていると意識するだけでもきついのだ。


「あ、そういえばやっとダー、あなたに、

やってもらわなくてはならない仕事が出来たわ。」


 今のはダーリンというのを言い直してくれたんだろう。

これを言われて、気絶させられた。否、した。

  

 だが、この仕事に絶望する。

最も俺に向かない仕事だった。


「この人と友達になってきて。」


 鬼か―――


 俺は心の中で絶叫することとなった。


「安心して、私のこの灰色の頭脳が、

あなたに、このミッションを可能にする

エレガンスなアイテムを用意したわ! 」


 なぜかテンションが上がりまくりだな。

いやだな、陽子が俺を女装させようとしたテンションに似ている。


 だが、ここで仕事を断るのは気が引ける。

やらねばならないだろう。


「はい、これはデータよ。」


 紙をわたされる。


写真はひげを蓄えたちょい悪おやじって感じだ。


 童心 俊三

職業 殺し屋

好きな食べ物 なると

 

 そこまで読んだ。


 無理だ。殺し屋はない、そもそも友達が一人もいない俺に

この仕事は、きつい。何より殺し屋と、友達になれる人間がどのくらいいるんだろうか。

 いや、いるんだろうがそれは俺じゃない!


「あ、間違えちった。」


 てへっと舌を出す。こいつわざとか。

 だが安心だ。今なら殺し屋以外誰とでも友達になれる気がする。

もしかしてそんな効果が出るように配慮してくれたのだろうか。


 大神 緑

職業 高校生

好きなもの イルカ

趣味 勉強


 ここまで読んだ。

やっぱ無理じゃん。女子高生とか。

ははっ死のう。


 俺の様子に何かを感じ取ったのだろうか。

あわてて段ボールをトコトコといった足取りで運んでくる。


「あ、安心して。アイテムがあるのよ。

コンピューターもこのアイテムさえあれば大丈夫と出ているわ。」

(実際はましって表示されただけなのだけれど。)


 かっこの中の言葉は気を使って小声になったのだろうが、

俺にはどんなに小声でぼそっと言った言葉でも聞こえなかったということはない。


 俺は、ウサギの着ぐるみと被り物を手に入れた。

そしてある公園に放り出された。


「あのさ、ウサギさんだよね。」


 緑の髪の毛の女の子だ。

ショートヘアが良く似合う。

前髪が一房だけ肩まで伸びていて、かわいらしい。


「わたし、大神緑です。

その、よろしく。」


 えっこの子マジで高校生か?

何故そう思うのかというと、ちっこい。

小学生としか思えない。

そんなことを思っていたら、ふふふふふふふと笑いだした。



「やったーー」


「自由だーーーーーーーーー。」


 女の子は分からない。

俺は驚くべきことに、童心 俊三さんのほうが良かったかもしれないと思い始めていた。











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