超対人恐怖症 深見一樹
<二人目のerror 深見一樹>
俺は不幸なのかそうではないのか
人にそれを問えば不幸だという
しかし俺は何の不幸にも見舞われていないし
そう思ったこともない
なぜなら俺の家族のほうがずっと不幸だ
幸せが相対的なものなら俺は絶好調に幸せだ
俺は人と目を合わせることが出来ない
自分より立派な人間と出会うと少なからず緊張するだろう
俺は最低な人間だからそれはすべての人に当てはまる
つまり人としゃべったりできないのだ
話しかけられれば冷や汗が出る
目が合えば腹が痛くなる
そしてしゃべろうとするだけで吐き気が出るのだ
何かきっかけがあったわけではない
気付いたらこうだった
よく分からない人もいるかもしれない
例を挙げよう
あれは中学の時新任の先生の言葉だ
「はい、深見さん例題8を解いてみてください」
おれは吐いた
このレヴェルである
そして妹以外話しかけられないので訂正できないのだが
おれは深 見一樹だ
わざとか、俺のクラスに妹がいてそいつのみよじが深なんだから察せよ
だが捨てる神あらば拾う神あり
そんな俺にも唯一会話できる相手がいた
妹の陽子である
口癖はドラゴンパンチ
双子の妹で明るく友達も百人できていてもおかしくない
彼氏はいない作らせない
もし妹に告白でもしてみろ毎日画びょうを靴に入れてやるかんな!!
彼女が笑えばみんなもつられて笑ってしまうような笑顔を持っていた
可愛くうへぇと笑うのだ
俺のこの暗すぎる性格は初め誰も気づかなかった
陽子とはよく話していたし
何か言うときも陽子がお兄ちゃんが~って言ってるー
と俺の代わりに喋ってくれていた
初めに両親が異変に気付いたのは
小2の夏陽子が友達のうちに行ってるときだ
その時まだ小さかったので覚えていないが
夕飯が何かいいか聞いたという
いつもは陽子が言っていたし好きなものだけは似ていたので
それでうまくいっていた
しかしその日は陽子もいない
いっこうに返事もしないことに不審に思った両親
もその時は何も言わなかった
しかし目も合わせない
そして両親は自分たちが話しかけられたことがないと知ると
母さんが「ちょ、おま、ちょ」といって
急いでカウンセリングに連れて行ったらしい
しかし話しかけられればお腹が痛くなり
話そうとしたと思えば嘔吐するのでは何もできない
カウンセラーも
最終的に鬱になってしまった
話しかけるごとに吐き気をもようされたらかなりくるものがある
しかし陽子は違った
親からも変な子が生まれたと嫌な顔をされるようになったのを
自分のせいだと言い張り世話を焼いてくれた
俺の自室に監視カメラがあるのはそのためだ
いまだに何のためかはわからない
そのおかげで話しかけられても吐かないぐらいに成長した
しかしそれでも限界がある
親に愛想をつかれるのも時間の問題で捨てられると考えた
その日から俺はいい子になった
何か人が困っていればその困っている内容を盗み聞き
こっそりと準備をして助けるのだ
友達などできるわけはないが学校に行き
そこでも誰かが困っているとこっそりとその内容を聞き
手伝っていた
そのおかげで評判も悪くはなかった
先生にも気に入られ(頻繁に手伝いをしていた)
病気だからみんな話しかけないようにという
聞きようによってはクラスぐるみのいじめだが
俺にとって最高のフォローもしてもらえた
自分の耳が異常にいいと知ったのはこの頃だった
この耳のおかげで親の要求をいち早く知ることが出来
情報収集も容易で人と話さなくとも困らなかったのだ
親からもお前は人の顔色を読む天才だな
と言われ家の中で地位を確立した
だが本当に気の休まるのは陽子といるときだけだったし
俺たちが大きくなっても仲が疎遠になることはなかった
高校も同じものに入った
同じクラスだといいねと言ってくれていた
そんなときだ陽子は病気にかかったのは
心臓の病らしい
だがお金さえ払えば意外と簡単に治るものらしく
みんなほっとした
しかしその帰り道交通事故が起きた
俺たちの乗った車だった
その時のことはよく覚えていない
目が覚めたら病院だった
けがはなく一日で退院できた
話を聞くと
飲酒運転をしていたトラックに正面からぶつけられたらしい
しかし運の悪いことに犯人はそのまま逃げてしまい
父は足をけがして
全治二か月だといい渡された
あまり大したけがではなかったと父は笑っていたし
病院に縁がある日だと笑ってもいた
しかしそれから散々だった
家に帰れば家が荒らされていて
貯金もなにも残ってはいなかった
母はそれを見て陽子はどうなるの!と叫び寝込んでしまった
俺には慰めることもできない
声をかけられないからだ
陽子はそんなことがあったというのに笑っていた
そして俺の顔を見て泥棒なんてしないでね
私はこのままでもいいからと俺にやさしい言葉をかけていた
俺は妹のために泣きたかったがなぜか涙が出なかった
変わってやりたいとも心の底から思えたし
陽子がいない世界に俺の居場所はないとも思った
そんな時神の選択から呼び出しをうけた