合格
そんなこんなで、俺は下を脱いだ。
勿論、ウサギの着ぐるみだ。
着替えるといっても下にジーパンとTシャツを着ていたので、
それをただ脱ぐだけだった。
着替えてる最中にも、なんで私気付かなかったんだろう。
そういえば最初からなんかいろいろおかしい。と小声でぶつくさと、
言っているのが聞こえる。
従業員さんはまだ笑いをこらえている。
お客様は神様ではないのか。神様を笑うのはどうなんだろうか。
「そ、それじゃぁ、始めます。」
席に戻ると、新しいコーヒーが用意されていて、唐突にこう切り出された。
このコーヒー、あの従業員さんが入れたのだろう、少しこぼれている。
「わ、私は合格でしたか? 」
よく分からない。なんのことか、
そう思っていたらっケータイに着信が入った。
知らない番号からだった。
まぁ知っている番号なんて、家族のものだけなんだが、
俺の耳はいい、耳に押し当てなくとも、携帯の声が聞こえる。
それなら失礼にならないだろうと、通話のボタンを押した。
「もしもし、こちら香美ちゃんです。」
香美ちゃんですか。
「合格って言っていいわよ。」
どういうことだが本当にわからない。
しかし、合格なら悪い意味ではないだろう。
合格と紙ナプキンに書いて渡した。
もうすでに、もらったメモ用紙は使い切っていたからだ。
「ほ、本当ですか。信じていいんですよね。」
「大神さんに代わってくれない? 」
電話を渡した。
彼女の声を聞いたら大神さんは本当に嬉しそうに何度も、お礼を言っていた。
そう、何度も。
「今日からよろしくお願いします。一樹さん。」
こいつもか、しかし俺は香美さんが俺の名前をこう教えたのを知っている。