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その13

「……アナトールを?」

 呆然とした表情でザムゾンが答えると、アナトールはさっきまで大笑いしていた表情を引っ込め、澄ました笑顔を作った。子供のザムゾンんから見ても明らかに作ったと判る笑い顔。

 それは同年代の友達がいたずらを仕掛けたり、からかっている時の表情と重なる。

 大人気ないこと、この上ない。

 でもそれは嫌ではなかった。

 むしろ心の距離が近くなってきた気がする。

「ああ。それくらい出来るだろう。私よりもキルシュの方が強いからな。キルシュを護れるなら、私なんてそれから比べると僅かな力しか必要ないさ」

 アナトールは言い切ると、軽く片目を瞑った。

 コミカルな表情をすると、近所で商売をしている青年達と同じ。親しくなれば、そんなものか。そう腑に落ちた。彼は自分と全く違う訳ではないと痛感する。置かれた立場は違うが、それだけだ。目の前に居れば話も出来るし、理解し合える。友情も育めるような気がした。

「そう説明されれば、そうかも知れません」

「そうだろう。それくらい強い大人になってくれるか。ザムゾン」

「はい。アナトール」

 ザムゾンが答えると、アナトールは本当に嬉しそうな笑顔を浮かべる。

…強くて寂しいこの人をこの人達を守りたい。

ザムゾンは心の底から思った。


「霜刃さま?」

「アナトール」

 ほんの近く…後ろで声がする。

 怪訝そうな声の響きに振り向くと、さっき遠くから呼んでいたと思われる男達、近くにいた。 

 あの後、ザムゾン達が話している間に、到着したのだろう。

 二人は少し距離置いたまま近づかず、神妙な顔をしながら視線を巡らせる。

 ひとりは見るからに厳しそうな顔をした身分の高い壮年の男性で、ひとりは二十台前半にしか見えない若い青年だった。

 青年は何かを口の中で呟き、両手の指で何かを宙に描いた。

 周辺の空気が緊張を孕む。

 何かの術を使ったという事だけはザムゾンには判った。何だかは判らないが。

 二人とも難しい顔をした後に顔を見合わせ、沈黙をする。

 しばし無言の時間が流れた後。若い方が口を開いた。

「どうして…こんな事が起こったのですか?」

「ああ。彼のお陰でね…」

 曖昧な疑問にアナトールは楽しそうに笑って答えた。急にザムゾンの存在を告げられ、ザムゾンも驚いたが、二人の男性はもっと驚いたようだ。

「彼の…?」

「この少年が?」

 青年は呆然とした顔で不思議そうにザムゾンを見つめ、壮年の男は不信感を隠すことなくザムゾンの中を探るような視線で見つめた。

 足の先から頭のてっぺんまで。体の内部の隅から隅まで。全てを見られ撫でられるような感覚に、不快感が走る。

 気持ち悪さから一歩男から距離を取ると、肩に乗っていたキルシュが肩に爪を食い込ませる。

「…痛っ」

 痛みにザムゾンが顔をしかめる。その瞬間、今まで感じていた不快感が無くなった。

「そんな風に探る必要はないわ。大神官。その術を使うには、ちゃんと本人の了解を取って頂戴。それから私とアナトールに挨拶がまだよね。年長者がそれでいいのかしら」

 キルシュが尊大な声で言うと、壮年の男性は深々と頭を垂れた。

「これは失礼しました。『嘆く竜』様」





更新、遅くなってスミマセン!!!!

次は明日です~頑張りますw




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