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 前回さらっと書きましたが、ネズミに耳を齧られる経験なんて、父と有名な青色ロボットしか思いつきません。


 若い頃の父は、面倒な関係を嫌って、日雇いで寝泊まりさせてくれるお店で働いていたそうです。


 そんな父がお世話になっていたお店ですが、そう毎日床屋さんがにぎやかなわけではなく、時に大工さんのところに派遣されたり、漆塗りをさせられたり、様々です。


 時にはすべてが嫌になって、ホームレスになろうと決意したことがありました。


 その時。


 父の前に、一人の老人ホームレスが現れました。

 

 彼は、父に腹は減ってないか? と聞きました。


「腹減ってる」

「ならアンパンをやろう。俺も腹が減ってるからな。半分ずつだ」


 こうして、老ホームレスにより空腹を少しだけまぎらわせた父は、ホームレスになろうと決意していることを話したそうです。


 すると、老ホームレスは父に当時の百円を握らせてくれました。


「これで、店に謝って戻らしてもらえ。それができなければ、実家に帰れ」


 こうして父は、百円で行けるところまで帰り、お金が足りない駅で降りて、実家に帰りました。


 ですが、祖母はすぐに父にお稲荷さんを作って重箱に入れて渡しました。


「これを持って、お店に謝りなさい」


 父は納得できないまでも、またその店に戻ることに決めました。


 お稲荷さんは電車の中で全部食べてしまいました。


 このエピソードを思い出すと、やはり父は分岐点で人に恵まれているんだなと関心します。


 私、ひょっとしたら生まれていなかったかもしれないと何回目かで思ったのでした。


     つづく


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