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元社畜、ダンジョンマスターになる。 ~残業ゼロ・福利厚生完備の魔王軍を作ったら、人間界の勇者まで転職してきました~  作者: 綾瀬蒼
第2章「国家再建コンサルティング編」

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第11話 魔王、ボロボロの王国をM&A(合併・買収)する

『シチューの乱』による無血開城から数日後。

 聖王国の王城は、かつてない活気(と悲鳴)に包まれていた。


「――はい、次。財務大臣」

「は、はい……!」


 玉座の間。

 しかし、そこに玉座はない。代わりに持ち込まれたのは、機能的な大型の会議テーブルとホワイトボードだ。

 上座に座るのは、スーツ姿の魔王ヴェルム。

 その隣には、必死にメモを取る王女エレオノーラ。

 そしてテーブルの反対側には、冷や汗をダラダラと流す王国の重鎮たちが並ばされていた。


「この『不明金』という項目はなんだ? 国家予算の15%も占めているが」

「そ、それは……その、機密費のようなものでして……」

「使途は?」

「あー、えーと……外交上の接待(宴会)とか、調査費(愛人への貢ぎ物)とか……」


 財務大臣が視線を泳がせる。

 ヴェルムは無表情のまま、手元の書類に赤ペンで大きく『×』を書き込んだ。


「廃止だ。全額、公共事業費に回す」

「なっ!? 困ります! それでは我々の生活が……いや、国家の品格が!」

「品格で国民の腹は膨れない。次、内務大臣」


 バサッ、と次の書類がめくられる。


「王都の城壁補修工事、進捗率が5%で止まっているな。予算は計上済みだが?」

「はっ! い、今は優良な業者を選定中(賄賂をくれる業者待ち)でして!」

「遅い。魔王軍の『工兵部隊(オーク&ドワーフ)』を投入する。彼らなら三日で終わらせる」

「ま、魔物に神聖な王都の壁を触らせるなど……!」


「文句があるなら、彼らより安く、早く、高品質で作れる業者を明日までに連れてこい。できないなら黙って印鑑を押せ」


「ぐぬぬ……」


 ヴェルムの容赦ない『事業仕分け』に、貴族たちはぐうの音も出なかった。

 彼らは理解していなかったのだ。

 目の前にいるのが、ただの暴力的な魔王ではなく、ブラック企業で鍛え上げられた「コストカッター」であることを。


 ◇◇◇


 会議が休憩に入ると、王女エレオノーラが机に突っ伏した。


「……死ぬ……頭がパンクしそう……」

「お疲れ様です、王女様。いや、今は『聖王国支部長』でしたね」


 ヴェルムがコーヒーを差し出す。

 エレオノーラは涙目で顔を上げた。


「ねえヴェルム。……本当に、この国は立て直せるの? 蓋を開けてみれば借金まみれだし、貴族は腐ってるし、お父様はあんなだし……」


 彼女の視線の先――部屋の隅っこに、小さな机が置かれていた。

 そこには『名誉顧問』というタスキをかけられた前国王が座っていた。

 彼の仕事は、ひたすら書類の空欄にスタンプを押すことだ。


「くそぉ……わしは王だぞ……なぜこんな単純作業を……」

「お父様、文句を言わない! それが終わらないと今日のおやつ抜きですよ!」

「ヒィッ! わ、わかった!」


 かつての暴君は、今や娘と「おやつ」に管理されていた。


 ヴェルムは苦笑しながら、窓の外を見た。

 王都の街並みが見える。


「立て直せますよ。……いえ、正確には『スクラップ・アンド・ビルド』ですね」

「壊して、作る?」

「ええ。土台が腐っているなら、その上に何を建てても傾く。まずは腐った部分(既得権益)を徹底的に排除する。多少の痛みは伴いますが」


 ヴェルムの目が、鋭く細められた。

 その視線は、会議室を出てヒソヒソ話をしている大臣たちの背中に向けられている。


(……大人しく従っているフリをして、裏で工作する気満々だな)


 社畜時代、こういう「抵抗勢力」には嫌というほど煮え湯を飲まされた。

 「前例がない」「現場が混乱する」「俺の顔を立てろ」。

 そんな戯言で改革を阻む老害たち。


 だが、今の俺は「魔王」だ。

 人事権も、武力も、すべて掌握している。


「支部長。……少し、荒療治をしても?」

「え? ええ、国のためなら……。でも、殺すのはダメよ?」

「もちろん。死ぬより辛い『社会的制裁』を与えます」


 ヴェルムは懐から通信機を取り出した。

 相手は、魔王軍の『情報工作部隊』――すなわち、目立たない下級悪魔インプたちだ。


「……あー、俺だ。例の件、どうなってる?」

『ヒヒッ! バッチリでさぁ、魔王様! 大臣たちの「裏帳簿」、愛人との「密会記録」、賄賂の「証拠写真」。全部集まりましたぜ』

「上出来だ。……明日の朝刊、一面トップでバラ撒け」


 ヴェルムはニヤリと笑った。


「さて、明日の会議はもっと騒がしくなりそうだ」


 ◇◇◇


 翌日。

 王都の広場に張り出された新聞を見て、民衆たちは驚愕し、そして歓喜した。

 そこには、今まで私腹を肥やしていた悪徳貴族たちの悪事が、事細かに暴露されていたからだ。


「おい見ろよ! 財務大臣のやつ、俺たちの税金で『猫耳カチューシャ(純金製)』を買ってやがったぞ!」

「内務大臣は、公用車(馬車)を私物化して家族旅行だと!?」

「ふざけるな! 金返せ!!」


 民衆の怒りのデモが、大臣たちの屋敷を取り囲む。

 その様子を高台から見下ろしながら、ヴェルムは満足げに頷いた。


 これが、魔王流コンサルティング第一弾。

 【情報開示ディスクロージャーによる自浄作用の促進】である。


「さあ、掃除の時間だ。……ゴミはゴミ箱へ、有能な人材は適正なポストへ」


 魔王の手によって、腐りきった王国の大手術が始まった。

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「王都の広場に張り出された新聞を見て、民衆たちは驚愕し、そして歓喜した」 ん?喜んじゃったの?
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