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希望の源泉

作者: せおぽん

俺は相模タモツ。この無人島に流れついて、もう3ヶ月経つ。幸い、温暖な気候のこの島は食料には困らない。魚は人に慣れておらず、素人の俺でも簡単に取れてしまう。野草も豊富でビタミン不足の心配は無いだろう。


島に流れついた当初は、食べられる食料を見極められず酷い下痢に悩まされた。三日三晩高熱に苦しんだこともある。だが、今はすこぶる健康だ。なんならサラリーマン時代より健康であるともいって良い。


サバイバル生活が安定すると娯楽に飢える。贅沢な話ではあるが都会での生活に慣れた人間には、食の安定だけでは心が死んでしまうのだ。


あの高熱をだした夜を思い出す。満月の夜、朦朧とした意識の中で俺はあのは花を見た。


薄赤い縁に彩られた白い美しい花が開く様を。手の平大にまで大きく開いた花は鼻腔をくすぐるような甘い香りを放っていた。その香りは街で俺を心配しているだろう彼女を思い出させた。俺は朦朧とした意識の中、花を摘みその蜜を吸った。


その蜜は、長く甘味から離れていた俺の舌を刺激し脳を痺れさせた。余りの官能に俺は気を失った。


よく朝、目を覚ますと俺の体調はすっかり良くなっていた。あの花はすっかり絞んでしまっている。絞んだ花を摘み、蜜を吸ってみたがそれはただの苦い汁でしかなかった。


その日から、俺は日記を記す事を始めた。あの花が咲くタイミングを把握する為だ。生きる力が湧いてくるのを感じた。


あの花は1ヶ月周期で咲くようだ。日記をつけ始めて1ヶ月ほどの朝、目が覚めると萎れた花を見つけたからだ。この花はおそらく満月の真夜中にしか咲かない。


次の、満月はおそらく3日後。天気も晴れるだろう。あの花は俺の希望の源泉になっている。

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