晩聖節
水城がこちらの世界に来てからは、平和な時が流れた。
「水城ちゃーん、そっちのジャム取ってくれるー?」
「はーい」
今日はHalloweenで水城とミレイナが菓子作りをしている。
「久しぶりだなー、ミレイナの菓子」
リヴィは楽しそうに話している。
「なぁ棗。水城ちゃんて料理上手いの?」
「うん」
「ふぅん。じゃあ水城ちゃんてお前の彼女なの?」
「違う。てか、どこからそんな発想が出てくるんだ」
「だって俺とミレイナが恋人なんだから、お前等が恋人同士であっても可笑しくないだろ?前世だし」
「そんな感情は無いと思うよ思うよ。俺たちは幼馴染みだし」
「そりゃ俺たちだって同じさ。でも恋人になった」
「リヴィ達と俺達は違うだろ」
「まあなぁ~」
こんな事を話していて、何が楽しいのだろうと棗は思った。
「楽しいも何も、この時間を大切にしなくちゃな」
「おまっ!心読んだな!」
「まぁな。そんくらい易い」
「でも・・・・」
“この時間を大切にする”
って、どうゆう意味だ?
「平和な時間は限られている。って事だよ。お前等の世界では命が失われ、事件が起きたとしても、テレビの中での出来事であって、他人事のように思っている。でもこの世界ではお前等の世界より死が身近にある。それはお前も分かってるだろ?だから平和な時間を大切にしなきゃな。第一にこの平和だって仮初めに過ぎない」
「分かってる・・・でも分からない」
「良いさ・・・。嫌でも後で実感する・・。ま、Halloweenを楽しもうぜ!」
こうして棗達が話している間に菓子が出来上がった。
「棗くーん、リヴィー、出来たわよー!!」
『はーい』
応えたのは棗とリヴィではなく、二人の男性だった。
「おぉ!クラウス達来てたのか!!」
『よぉ!』
棗の顔には「?」が浮かんでいる。
「じゃあ棗、こいつらも後で紹介すっから」
「分かった」
棗が応えるとほぼ同時に、奥で準備の出来た水城とミレイナが「早く!」と、少し怒鳴り気味に言う。
「あっ!ゴメン」
棗達は大急ぎで走って行った。
$$$$$$$$$$$
『『せーの、Happy Halloween☆』』
大きなかけ声でHalloweenpartyが始まった。
「じゃあ、お待ちかねの二人の紹介な!」
そう言ってリヴィがさっきの二人を指差した。
「まずは兄のルシナ・クラウス。こいつは俺と棗がこっちの世界に来た時に最初に会ったやつだ」
「それとこっちは弟のルシン・クラウス。ルシナの弟な。こいつは初対面だな」
兄のルシナは切れ長のスカイブルーの瞳。
背も高い。
薄水色の長い髪を後ろで一つに束ねているが、鬱陶しい感じはなく、むしろ爽やかな雰囲気だ。
弟のルシンも、切れ長のエメラルドグリーンの瞳で長身。
薄水色の長い髪は束ねてはいないが、手入れが行き届いている為か、兄同様、爽やかな雰囲気を醸し出している。
「因みにこいつら双子だぜ。一卵性のな」
確かにルシナとルシンは瓜二つだった。
『これから宜しくな、棗!』
二人が手を差し出す。
「宜しく」
棗は笑いながら握手をした。
「こいつら言い奴だから仲良くしとくと良いぞ」
「しかもモテモテよ~」
皆の笑い声が響く。
棗はこの時がずっと続けば良いと思った。
その先に待っている運命も知らずに────。