夢の中の現実
事実を知らされた日から二日が経ち、リヴィの様子も落ち着いて来た。
でも───話しかける勇気が出ない。
迷いながら棗が辺りを彷徨いていると、リヴィの方から話しかけて来た。
「何か気になる事があるのか?」
棗は行き成り話しかけて来たリヴィに一瞬戸惑い、恐る恐る聞いてみた。
「俺がこの世界にいるのは・・・前世と関係があるんだよな?」
「ああ、そうだよ」
「じゃあ・・・」
言い掛けて口を噤んだ。
こんな事を聞いてしまって、リヴィの傷を抉らないだろうか?
戸惑っている棗の様子を横で見ていたリヴィが『何を聞きたいかは分かってる』と、棗の頭の中に直に伝えてきた。
「俺とスティーラム・ハーツの事だろう?」
棗は黙って頷いた。
「・・・・俺とスティーとミレイナは幼馴染みだったんだ・・。特に俺とスティーは仲が良くて、一番の親友だった。だが・・・」
そこまで話すとリヴィは一旦話を止めた。
とても辛そうな表情をしている。
そして憎悪の念も見て取れる。
何故だかは分からないが、棗も辛くなった。
暫くしてからリヴィが再び口を開いた。
「・・・・あいつは、ある日突然俺の両親を殺したんだ」
榊から話を聞かされ知ってはいたが、リヴィの口から聞くとやはり重みが違う。
感情が溢れる。
「・・・っ・・うっ」
いつの間にか棗の瞳から涙が零れ落ちていた。
「・・何で・・お前が泣くんだよ」
無理な笑みを浮かべ、リヴィが棗に言った。
「わか・・・ら・・ないっ・・・・。でもっ・・悲しいんだよぉ・・」
涙を拭った棗は部屋から出て行こうとした。
「何処行くんだ?」
「・・・・もう寝る・・」
───その夜、棗は夢を見た。
それはリヴィが子供の時の夢だった。
『『リヴィー、ミレイナー、遊ぼうよぉー』』
“何だこの夢・・・。誰だ・・この声は・・・”
『誰だ?お前は?』
『『何言ってるんだよ?リヴィ。スティーだよ?』』
“スティー!?”
【リヴィ、スティー、お待たせ~】
『ミレイナさん?』
【やだぁ~なぁに?さん付けするなんて】
『『今日のリヴィ、少し可笑しいんだよ』』
“そうか・・俺は夢の中でリヴィになっているんだ”
【それより遊ぼうよぉー】
『あっ・・うん』
『『じゃあ鬼ごっこな!リヴィが鬼~』』
【わ~い逃げろぉ~】
『あっ!スティー!!』
叫んだ瞬間、暗闇に包まれ、闇が消えた時には棗は血塗られた部屋にいた。
噎せ返るような血の匂い。
その場にいるだけで息が詰まるようなな圧迫感。
棗はこの場所が何処だか把握出来た。
リヴィの家だ。
夢とは思えない程の生々しい感覚に吐き気までも覚えた。
陰が写る。
そこに──いる。
『それ』の顔がぼやけて見えないが、棗は顔を上げ問う。
『何故こんな事を・・・』
すると笑みを浮かべ『それ』が言う。
『『もう、何もかも飽きたんだ』』
『つっ・・!』
心に憎悪の念が広がっていく。
『『だから全て───』』
なんだ?声が聞こえない?
そう感じた時にはもう遅く、今度は出口のない闇へと引きずり込まれた。
そこには子供の姿のリヴィが立っていた。