千五百の罪
この世界に来て二度目の目覚め───
その目覚めは一度目とは違い、賑やかなものだった。
「──ねぇねぇ!リヴィが帰って来たんだって!!───」
「──そうそう!しかもナツメとかいう男の子も一緒だって!───」
そんな女たちの声が聞こえる。
その声を聞いて、少し安心した。
しかし。
“今度は何処だ?”
棗は体を起こし、辺りを見回した。
「気がついた?ナツメ君」
横から聞こえる女の声。
「・・・・あなたは誰ですか?」
棗がその声の主に問いかける。
「私はミレイナ・クライン。中澤水城ちゃんの前世で、リヴィの恋人よ。ミレイナって呼んでね」
「水城の前世・・・?」
「そ。リヴィ呼んでくるから待っててね」
棗の問いかけに答えたミレイナは、リヴィを呼びに行った。
暫くしてミレイナがリヴィと一緒に戻ってきた。
「やっと目が覚めたか。大変だったんだぞぉー、お前運ぶの」
リヴィが笑いながら言う。
「で、知りたい事は?」いきなり核心に触れられる。
確かに棗はこの世界がどうなっているのか。
何故自分がこの世界いるのか。
分からない事が山程あった。
だから口から出た言葉。
「何故・・・?」
「それはまた漠然とした質問だなぁ」
「何故・・俺はこの世界にいる・・・・?この世界は何なんだ?亨や水城は何処にいる?何故俺の前世であるお前が・・・リヴァインズ・アールが此処に存在する?何故・・・」
「ちょっと待って」
リヴィがストップをかける。
「いきなり色んな事を聞かれても、全ては答えられないからさぁ・・順番に聞いてよ」
棗はコクリと頷いた。
「まず・・・この世界は何なんだ?」
棗が不安そうな面持ちで、再び問いかける。
「この世界はお前の前世だ」
リヴィの口から出た答えは、正直、理解出来ないものだった。だか、この状況では信じざるおえなかった。
「じゃあ、何で俺は此処にいる?」
「あぁー、それは多分彼奴に聞いた方が早いなー」
「アイツ?」
棗は疑問の表情を浮かべる。
「棗さんは私がお連れしました。こちらの手違いで・・・ですがね」
そう言って現れたのは、棗たちに『入学祝い』と称し、あの箱をくれた黒縁メガネの男だった。
「私は榊と申します。その姿では初めまして」
「?あの・・榊・・・さん?手違いってどうゆう意味で・・?」
「あぁ・・・本当は梶那亨だけを連れてくる予定だったんですが、面倒臭いんであなた達も一緒に連れて来ちゃったんですよ。手違いと言うよりは『面倒臭かったから』の方が合っていますね」
“おいおい・・・そんな事で俺は連れて行かれたのかよ!”
棗は心の中で叫んだ。
だがしかし、一つ引っ掛かる所がある。
「何故・・・亨なんです?」
それは当然の疑問だった。
「彼は罪を犯したんですよ。正確には、『彼の前世』が犯した罪ですがね。それは棗さん、あなたにも関係が在ります。そして一番関係が在るのはリヴィさんです」
何を言っているのか、棗は分からなかった。
だが、リヴィの憎しみに歪む顔を見て、棗の心の何処かでも、一瞬、憎悪の念が生まれた。
「その亨の罪って何なんですか?」
「梶那亨は・・いえ、亨の前世、スティーラム・ハーツは・・・リヴィさんの家族を含めた千五百人の人間を殺したんです」
聞いた瞬間、胸がざわついた。
リヴィの顔も怖くて見ることが出来ない。
「そんな・・・・」
これから俺はどうしたら良いんだろう───