全ての元凶
何故?ナゼ?なぜ───?
分からない。
理解できない。
昨日まで穏やかだったのに。
穏やかだった───筈なのに。
何故今はこんなにも荒れている?
あのパーティーの後、亨が来なければ。
彼奴等が来なければ良かったのに。
何故今は皆怪我を負っている?
全ては彼奴等のせい。
「何でこんな事をするんだ!」
叫んでも只、嘲笑するのみ。
彼奴等さえ来なければ───
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昨日までは休戦日。
皆一様に団欒を満喫していた。
そして次の日、行き成り彼奴等が現れた。
彼奴等は言った。
『やるならば最後まで』と。
彼奴等は嘲り、笑った。
血の海の中で。
彼奴等は鳴いた。
『心が痛い』と。
───何故泣く?
何故お前等が傷付く?
俺には解らない。
泣く位なら何故傷付ける?
呆けていた俺の意識は、リヴィによって現実へと引き戻された。
「棗!呆けてる場合じゃない!!早く俺の後ろに回れッ!」
首根っこをグイッと引っ張られ、リヴィの後ろに回された。
直後襲い来る衝撃。
戦いの最中だった。
「砂っ!?」
「知ってるだろ!?Sandy dollだよ!!」
額に汗を滲ませ、怒鳴り気味に言う。
「お前も早く応戦しろ!!」
困った・・・。
「俺は特殊能力は使えないぞ!?」
特殊能力についても、以前リヴィから教わった。
───「この世界に住まう者は、誰しも特殊能力を持つ。だがそれはこの世界の住民特有のものであり、前世・来世は関係しない」
確かそう教えてもらった筈だ。
「そうだ。そう教えた。でも、お前達の世界ではの話であって、こちらの世界に来れば前世・来世であろうと特殊能力が使えるんだよ」
だから早く応戦しろ。
と言いながら、再び防御体勢に入る。
「水舞龍!水壁の舞!!」
「すいぶりゅう?」
「そう、水舞龍。唱えれば水龍が現れるから。さぁ!唱えろ!!」
「てか最後の水壁の舞って何!」
「技の種類だよ!次は剣の舞だ!行くぞ!!」
「あっ、はい!」
思わず敬語になってしまった。
『水舞龍!剣の舞!』
唱えると、リヴィと棗の前に巨大な水龍が現れ、剣の様に鋭く変化し、亨とスティーの方向へ飛んで行った。
激しく砂を巻き上げ、必死に防御する亨とスティー。
何でだよ・・・。
抵抗なんて無意味だろ?
何故お前はそちら側に居るんだ・・・?
亨────
声なんか届く筈がない。
叫びすら悲痛の内に消えて行く。
すると直後で砂を巻き上げる音が聞こえた。
後方からの攻撃。
「やばっ!」
避けられない。
「片割れの翼─防─」
それは突然の声によって防がれた。
「・・・ありがとな、ルシン」
「なんの」
微笑むルシン。
「あれがルシンさんの特殊能力?」
「そう。片割れの翼─防─。防御専門の特殊能力だ。因みにルシナは片割れの翼─攻─。攻撃専門だ」
凄い。
強い。
遠くでは榊達も闘っている。
樒は手から焔を放ち、榊は雷の鳳凰を操っている。
「樒は猛火。その名の通り。榊は雷鳥。雷の鳳凰を喚び出す事が出来る。」
榊の攻撃が亨とスティーに当たった。
「ッツ・・・!」
ドサッと鈍い音がして、二人が倒れる。
「スティーラム・ハーツ及びに梶那 亨。貴方二人を拘束します」
以外と呆気無く闘いは終わりを迎えた。
すると気が抜けたのか、体から力が抜けて行く。
でも、何処か違和感がある。
それは言葉では言い表せない妙な感覚で、何かが腑に落ちない。
言わなければならない。
聞いて確かめねばならない。
「・・・二人はどうしてこんな事をしたんだ」
突然笑い出すスティー。
「フッ・・・クフフ・・・。どうしてかだってェ?なら教えてやるよ。佐倉 棗ぇ!お前等が犯してきた罪を!!俺の」
一緒に亨も呟く。
『俺達二人の苦しみを!!!』