胎動
「お前が・・・亨?」
「やっと気付いたんだ?実体化の方法が一つじやないこと」
「・・・・」
その時棗の頭には、以前リヴィに言われた事が蘇っていた。
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「実体化の方法は様々だ。勿論目に見えないものもある。最初に言っとくけど、身体の元、つまり棗が《オリジナル》で、借りてる側、俺が《コピー》って呼ばれるからな。じゃ、話の続き。まずは二人。つまり、俺とお前が同時に存在するタイプ。次に一人。これは一体化して、どちらかが表に出るタイプ。だから頭の中から直に話せる。どちらが表に出ても大丈夫。その次は幽体。これだと元の方しか表には出ない。オリジナルは幽体にはなれないからな。つまりは俺が幽体なんだよな~、悲しくも・・・。で、あとまぁ色々あるけど、主なのは解っただろ?」───
なんて長い話を聞いた。
「そんな馬鹿な・・・」
「亨は中で寝てるよ。呼んでも良いが、気絶してるよ?」
「・・・何が目的なんだ?」
「お前等に危害を加えるつもりはないよ。あの真紅の空だって幻だ。俺は只、リヴィに会いに来ただけさ」
「だったら何故!?リヴィが苦しむ様な事を!親友だったんでしょう!?」
その時辺りの雰囲気が一気に変わった。
冷たい闇。
以前見た夢の様に、恐ろしさを纏う。
「お前に・・・お前如きに何が分かる・・・!俺の痛みも、アイツの苦しみも知らないお前が!」
背筋に寒気走る。
「ックク・・・俺を怒らせない方が良いよ。俺は気紛れだから、直ぐに気が変わるかも知れないからね?」
遠くから足音が聞こえる。
「そろそろ潮時か・・・・」
勢いよくドアを開け、入ってきたのはリヴィだった。
「棗!大丈夫か!?」
そしてスティーを睨みつける。
「お前・・・どう言うつもりだ!」
「別に危害なんか加えちゃいないさ。話をしていただけだろ?」
「っつ・・・」
「じゃあなリヴィ、佐倉 棗。今度は亨に会えると良いなぁ?」
そい言って去ろうとするスティーの前に榊が立ちはだかる。
「待ちなさい、スティーラム・ハーツ。逃がしませんよ・・・・。貴方を拘束します」
「クッ!榊ぃ・・・!お前にゃ俺は捕まえられんよぉ!」
「何を言います!」
「あぁーばよ」
「待ちなさ・・・!!」
その時にはもうスティーの姿は霧となって消えていた。
「申し訳ありません・・・!私の不手際で棗さんを危険な目に遭わせてしまって・・。Sandy dollの存在にも気付かずに・・・!あの二人の特殊能力がそれ《Sandy doll》だと知っていたのに・・・・!!」
「大丈夫ですよ。危ないと言ったって危害は加えられてませんから。ね?だから頭を上げて下さい」
「そーだよ榊。お前のせいじゃない。俺だって一緒にいたが分からなかった」
「でもこのままではいつ怪我人が出るか分かりません。樒を呼びます」
「樒を呼ぶ・・・か。事は重大だなぁ?」
「えっ!?それって誰ですか?」
「棗・・・突っ込むのはそこじゃない!」
「でも・・・」
そう言ってリヴィが天を仰ぐ。
「樒を呼ぶたぁ、一刻を争う事態ってことか・・・」