花冠の思い出
日差しが暑く、昨日から、私は久しぶりに風邪をひいた。
「ゲホゲホ‥‥！体力が落ちたのかな？やっぱり適度に外出て運動しようかな‥」
コンコンとドアを叩くと私の部屋から入ってきたのはお父様だった。
「お父様？朝早くから、どうされましたか？」
「いや、いい‥そのまま寝ていろ」
慣れない手つきで、私のオデコに冷たいタオルを置いてくれたお父様は私を見つめていた。
「なんですか？」
「‥‥いや、亡くなったアイツに似てきたなと思っただけだ」
「お母様ですか？」
「そうだ。お前が突然、我儘を言ったり、おかしな事を言って最初は戸惑っていたが‥‥まあ、なんだ。少し嬉しくも思う」
私を産んですぐに亡くなってしまい、その後いまのお義母様がきてキャンディを産んだ。
私は‥‥あまりお父様に迷惑かけないよう、沢山我慢していい子になれば喜んでくれると思っていた。
「お父様‥‥私を愛してますか？」
「もちろんだ。何馬鹿な事を聞くんだ」
私とお父様は‥‥少し言葉が足りなかったようね。
「‥‥ヅラよりも大切ですか？」
「‥‥‥ん」
「今一瞬迷った」
「ま、迷ってなどいない！」
「迷ってたわ！今！さっき！ヅラを触りながら！ここは、娘大好きさと言い、親子和解場面でしょう！？」
「とりあえず寝ろ！私は仕事に行ってくる！」
そう逃げるかのようにお父様は出ていく。どれだけ、ヅラが大事なのよ！？少し大声を出してしまったせいか私は疲れてまた寝る。
夢を見た。遠い遠い幼い頃からの夢だ。
「リゼ！見て見て！君に似合う花冠だよ！」
「わあ、アッサム様！ありがとうございます。可愛いです！」
「リゼ、ずっとずっと僕のそばにいてね？」
「はい‥！」
幼い頃、アッサム様は白い花冠を私の頭の上に乗せてくれていた。
どうしてこんな事を思いだしたのかな。
今アッサム様の顔を見たら、殴りたいのに、まだ幼い私が心の中にいる。淡くて、幼い頃から抱いていた恋心が‥‥。いや、いやいやいや、あの人浮気した人なのよ！？無理！！
「くはー！いや、やっぱり腹が立ってしょうがない！」
熱も冷めて、まだ朝の8時だった。
‥‥空気を吸いたくて窓を開けると、屋敷の使用人達の子供達の楽しそうな声が聞こえた。
「セイロン兄ちゃん！もう一個作ってー！」
「わかった。あと一つ一個作ったら、もう学園へ行くからな」
「「はーい！」」
あら、朝早くから、訓練をして学園へ行く前に子供達の相手をしていたのね。
「ふうん。私の前では嫌味な奴なのに、子供達の前では普通に優しい兄って感じね」
セイロンは器用なのか、地面に生えていた花で花冠を子供達に作っていた。
「セイロン兄ちゃん！ありがとう！」
男の子と女の子はお揃いの花冠をとても喜んでいた。
小さな女の子は頬赤らめながら、嬉しそう。
‥‥‥夢といい、花冠といい‥‥
「昔を思い出しちゃうじゃないの」
