サヨナラ
オレンジペコー家に突然騎士団達が押し寄せ、当主である父親は何が起きたのかわからない状態だった。
「な、なんだ!?貴様達!」
妻と横領や人身売買の罪、娘キャンディの罪の話を聞き、信じられない顔をする。
「つ、妻が?まさか、そんなーー」
ひとりの騎士団はまた更に告げる。
「信じられないかもしれませんが‥‥ご夫人は当主様を毒殺を企んでおりました。その証拠も全てあります」
「‥‥なっ‥!!」
騎士団達はオレンジペコー家を家宅捜査し、夫人達の悪事を更に見つけていた。
一方その頃まだ城内にいたリゼはエリザベスと書類を片手に持ちながら、チョコレート菓子と共にお茶をしていた。
「‥‥この報告書を見て信じられませんわね。リプトン家が王家の実権まで握ろうとしていたなんて。リゼ様、落ち込まないようにと励ましに来たのですが‥‥あまり気にしてないようで安心しましたわ」
「むしろ、よくここまでバレずにやっていたのに感心しましたよ。‥‥私がもう少し家の事を、周りを見ていなかった証拠なわけで‥あ、このチョコ菓子美味しいです!」
「リゼ嬢‥‥」
「エリザベス様、家の件は私にも責任がありますから」
そう責任はあの人達だけじゃない。私にもある。だからこそ、私はキャンディに殺されて当主の座を奪われたのだもの。
明日刑が決定される前にキャンディと少し話をした方がよさそう。私は‥‥あの子ときちんと向き合っていなかったのだから。
キャンディと‥‥
「‥‥リゼ」
昔を思い出すかのような、穏やかな口調で私を呼ぶのはアッサム様だった。
「エリザベス様、楽しいチョコのお時間でしたが‥‥席を外してもよろしいですか?」
「えぇ、構わないわ。彼と色々と話す事があるでしょう」
私はアッサム様と二人っきりとなり、王宮にある小さな庭園へと足を運ぶ。
「昔を思いだすよ。小さな頃、君とよく遊んでいたね」
「そうですね。あの頃は楽しい思い出でした」
私がそうニッコリと微笑むとアッサム様は少し悲しげな顔をしつつ話しだす。
「‥‥正式に僕達は婚約同士ではなくなったよ。君の家‥‥いや、母君とキャンディの罪がでてきた事により‥‥リゼ、僕は本当に君が大事な子なんだ。もう一度僕にチャンスをくれないだろうか」
私はアッサム様の顔をみつめた。前の私なら、こんな事言われたら喜んだでしょう。
貴方の手を取っていたでしょうね。
「‥‥‥昔」
「え?」
「私が風邪を引いてても、キャンディばかり構っていたとしても、勉学に励んでいたのは、アッサム様の隣りにいたかったから頑張れました」
「あぁ、君はいつも完璧だったね。だからこそ、僕は‥‥そう僕は頼って欲しいと感じていた」
「アッサム様‥‥好きでした。幼い私が色々と耐えられたのはアッサム様のおかけですから。‥‥ですが‥私はセイロンを心から愛しています」
そう私がハッキリと言うと、アッサム様は俯いた後、再度私を見る。
「‥‥そっか。彼は、君だけしか見ていなかったようだからね」
「ふふ、そうですね。何よりも私を想ってくれています」
「‥‥うん、そっか‥‥そうだね。もう僕は行くよ。色々とキャンディがやらかした事の、知っている範囲で証言もしなきゃならないからね」
そうアッサム様は歩き出す。私はアッサム様の背中を見つめていた。
優しくて、頼りなくて、優柔不断で、
それでも‥‥好きでしたよ。さよならアッサム様。
私もそう立ち去ろうとした時、
「リゼ」
アッサム様がもう一度私の名前を呼ぶ。
「はい?」
「‥‥今思い出したんだけど昔、君に花冠をあげたの覚えてるかい?」
花冠‥‥あぁ、アッサム様に初めて花冠をプレゼントされてお嫁さんみたいだと凄く嬉しかったのを覚えている。
私が頷くと、アッサム様はバツが悪そうな顔をして話す。
「その‥‥今更だけど。あれは、僕が作ったわけではないんだ、、実は‥‥あの男だよ。見習い騎士のセイロンだ。ただそれだけさ、じゃあサヨナラ」
「セイが?」
あの時作ってくれたのが‥‥
「リゼお嬢様っ」
「あ、セイ」
セイは顔色を悪くしながら、私の元へやってきた。
「あの者に何かされたましたか!?」
「少し話していただけよ」
そう言ってもセイは納得していない様子だった。とても面白くなさそうな顔をして‥‥
「嫉妬していたの?」
「えぇ、そうです」
急に無表情のままそんな事を言うから、私は笑ってしまった。
「ねえ、セイ、今度私に花冠を作ってちょうだい」
そう私がお願いをするとセイはコクンと頷き微笑んでくれた。




