キャンディの囁き
学園の夏パーティーは年に一度開かれる。
生徒達が自分の存在価値を見せる場所ともいえる。
二台の馬車が学園の門の前に止まり、二人の女性が降りると周りにいた者は立ち止まる。
皆の憧れるリゼ・オレンジペコーと、隣りにいる見知らぬ令嬢が目立っていたからだ。
リゼは満足気な顔をしながら、隣りにいるエリザベスを見つめて話しかける。
「エリザベス様、どうされましたか?」
「眼鏡がないのがなんだか落ち着かなくて」
そう話す二人の会話を聞いた周りは「「え!?あのエリザベス嬢!?」と驚いていた中更にザワザワと驚く令嬢達の声が聞こえる。
もう一台の馬車から降りてきたのは、何故か、そう…ダージリン王太子とセイロンだった。
二人が仲良く現れるのを見た令嬢達は
「やはり、あのお二人は!!特別な仲なんですわ!」
などと更に熱い眼差しで見つめていた。
そんな令嬢達の反応を見たリゼは
「……ある意味あっちの二人が目立ってしまったわね」
そう呟いていた。パチッとリゼの目が合ったセイロンは早歩きでリゼの元へ来た。
「…リゼお嬢様、ここからはエスコートをさせてください。まさかあのおと…いえ、ダージリン王太子と二人で入場しろとか言わないですよね?」
「あら、それもありかもね!」
「…お嬢様…」
「あはは!冗談よ、そんな顔をしないで」
私がそう揶揄うとセイは少し溜息を出しつつも、私の手を握り自分の腕へとそっと置いたので私はセイの腕を組んだ。
さて、ダージリン王太子とエリザベス様が先に行かせて入場をさせるべきだけど……あのとてもうるさいダージリン王太子が気持ち悪いくらい静かなのよね。
「ねえ、セイ。ダージリン王太子大丈夫かしら。エリザベス様が困ってるわね。彼が一言も話してないけど…」
「アレはただの阿保なだけですから」
「…なるほど」
チラッと私は二人の様子を見る。ダージリン王太子の背中しか見えず、彼の様子がわからないけどエリザベス様は彼を心配そうにしていた。
「あの、ダージリン?具合が悪いのですか?」
「や、や、違う。うん」
「あ、もしかしてこのドレスがおかしいですか?確かに普段よりとても派手ですよね……王宮では質素にしなければと言われてましたのにこれではーー」
「いや、王宮でそんな事ない。母上を見ろ、アレは俺よりも派手な人だろ……ちっ、メイド長、エリザベスになんて教えを…いや、とにかくだな。あのー、なんだ……
……綺麗だよ。だから、なんか誰にも見せたくないというか…普段は可愛いけどさ、でも、なんかズリィ……あぁあ!!若造かよ!俺は!あ、いや、今若いんだ…」
そう照れながら話すダージリンにエリザベスは目を丸くした後、クスッと笑った。
「ダージリン……とりあえずエスコートをお願いしますか?」
「……あー、ごめん。言わせて。うん、エスコートさせてくれ」
そうダージリン王太子とエリザベス様は会場の中へと入る。
ダージリン王太子とエリザベス様は他の生徒達と話しており、私達はデザートを食べようと場所を移動しようとしたとき、ピンク色の髪と可愛らしい薄いピンク色ドレスのキャンディが現れる。
「リゼお姉様!」
私はマーメイド型のドレスだけど、キャンディは、女の子らしく可愛いらしいドレスだった。なんとなく、隣りにいるセイの顔を見れなかった。
もし……もし、彼がキャンディの可愛らしい姿に見惚れている姿をみたらを見たら……
「…発狂してセイをぶん殴りそうだわ」
「何急に恐ろしい事を呟いてるんです」
チラッとキャンディを見るとキャンディはニコニコと笑顔でセイに話しかけた。つい最近までセイを嫌がっていたのに……。
「お姉様の護衛さん、今まで嫌な事を言ってごめんなさい!許してくれるかな?」
「…いえ、キャンディお嬢様、私は気にしておりませんので」
いやいやいや、キャンディ、セイになんかくっつき過ぎじゃないかしら!?
なに!?というか、キャンディのパートナーはアッサム様じゃないの!?何処よ!!?
「キャンディ、貴女ーー」
そう私がキャンディとセイの間に入ろうとすると、大勢の生徒達が私に話しかけてきてセイと離れてしまった。
周りに囲まれて相手をするリゼを見つめるセイに、面白くなさそうな顔をするキャンディは、セイに葡萄ジュースを渡して話しかける。
「……好きなの?リゼお姉様が」
「……まさか、私はただの騎士見習いなものです」
「そうね、リゼお姉様はアッサム様とお似合いだもの!二人は結婚するべきだし。貴族には貴族同士がお似合い!そうでしょう?」
そうセイのそばに寄ってキャンディは囁いた。




