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教会の炊き出し

私は朝から鍛錬場でキリス団長と剣の稽古をしているセイの元へやってきた。キリス団長はすぐに私に気づきセイを呼んでくれる。


汗を垂らしながら走ってくるセイが‥‥かっこい‥くない!違う!断じて違うわ!


「リゼお嬢様‥?どうかされましたか」


「あー、えっと‥‥あのね、ウバから手紙で連絡があって明後日、教会で炊き出しがあるみたいなの。手伝いに行きたいから一緒についてきてもらえたらと‥」


「明後日ですか?」


「あ、なんか予定があるなら他の護衛騎士に頼むから大丈夫よ!」


そう私が言うとセイは「行きます」と答えると同時にキリス団長が挙手をして現れる。


「いやーウバさんがいる教会だろ?懐かしいー!やっぱ、ここは俺も行きますわ!ってなんでセイロン嫌そうなんだよ!?」


嫌がるセイロンにキリス団長はからかっているけど‥‥キリス団長はセイロンを可愛がっているとわかる。キリス団長の前のセイロンは、やっぱりまだ子供に見えちゃうときもあるのよね。


こうして私達はウバの教会へと足を運ぶ。


「リゼお嬢様、セイロン、来てくれたんだねえ。助かるよ」


「ウバ!!」


私とウバは2度目の抱擁をし合う。やっぱりこうしてウバと会って話したり、嬉しいもの!


「俺もきたぜ!ウバさん!」


「‥‥あー女たらしキリス団長さんも来たのかい。まあ、その辺で不審人物いないか見張ってておくれ。あ。いや、キリス団長が不審人物だね」


「おいおいおい、相変わらずひでー!」


ウバとキリス団長って40歳くらいよね。同じ歳ぐらいかしら?ウバとキリス団長がギャーギャーと揉めているのを私とセイは巻き込まれないように別の場所へ移動し、教会のシスター達にエプロンを渡され着替えた。


炊き出しは教会の子供達やシスターが街の人達に日頃の感謝を込めての野菜スープを配るといったものらしいけど、ここで意外な人物と出会う。


「ダージリン王太子!?」


「お?リゼ嬢とセイロンもきたか?」


お忍びできた‥‥わけではないみたい。小さな村の教会の炊き出しに、王太子が来るなんて珍しいというか‥‥回帰前ではダージリン王太子はこんな事していなかった。いつも遊び周り、行事などにも積極的ではなかったから‥‥私の知っているダージリン王太子のようで、なんか‥‥少し違うわ。


私とセイが固まっていると、ダージリン王太子はセイを見つけては抱きしめようとしたが、セイにスルーされた。


「あはは!かわされた!親友の俺との抱擁は恥ずかしいみたいだな!」


「‥‥ダージリン王太子と私は親友でもなんでもありませんよ」


そういつものように二人のやり取りを眺めていると、ダージリン王太子の後ろには、ダージリン王太子と同じ赤い髪色で眼鏡をかけている可愛らしい小さな少年がいた。


‥‥あの方は‥ダージリン王太子の弟のアールグレイ王子??!とても優秀で実は、回帰前では次期国王にすべきだと支持が圧倒的に多かった方なのよね。あまりお会いした事がなかったけれど‥10歳くらいかしら?うわあ!可愛い!


「アールグレイ王子、ご機嫌よう。私はリゼ•オレンジペコーですわ」


そう私が挨拶をすると何故かアールグレイ王子はビクッと一瞬震えて私の方を睨む。


「オレンジペコー家?あのリプトン家の奴らだな」


「‥‥え、リプトン家?何故リプトン家の名前がーー」


リプトン家といえばお義母様の実家の事よね。お義母様の弟がリプトン家当主で王家に仕えているという‥‥?私とアールグレイ王子が話をしている時、間に入ってきたダージリン王太子は話を変えてアールグレイ王子に話しかける。


「そんな事より、アル!お前もこういう行事をしてより国民達と交流もなかなかいいだろう?」


「はあ、兄上。そういう気持ちはとても喜ばしい行動ですが、何故こんな小さな村なんです?意味がわかりません」


「ここは、再出発の場所でもあるからな!」


「2度いいます。意味がわかりませんよ」


なんというか‥‥この兄弟、兄と弟が逆ね。


「リゼお嬢様、私達も手伝いに行きましょう。あの方は放っておいてもいいですよ」


うっ、急に耳のそばで話しかけるのはやめて!?声が近い!ビックリする!ビックリして、口から心臓飛び出したらどうするのよ!?(←ややパニック中)


「‥‥セセイセイ!あ、あの!段々とダージリン王太子を邪険に扱ってないかしら?!あ、あの方は仮にも王太子よ?」


「そーだぞー?俺を敬って欲しいくらいだ!」


「‥‥どの部分を敬えと」


「ブハ!兄上にそんな事を‥!あはは!」


「アル!笑うなよ!?」


セイは何食わぬ顔で、沢山話しかけるダージリン王太子を無視して歩いている。いや、無視はダメよ!?


「あの、僕の兄上がご迷惑をかけているようで、すいません」


ちょこんと私の隣にきて謝るアールグレイ王子は、笑った後にため息を出すが、ダージリン王太子を尊敬するような眼差しで見つめていた。


仲が悪いという噂は違うみたいね‥‥。むしろ‥‥


「アールグレイ王子は、ダージリン王太子がお好きなんですね」


「は!?ぼ、ぼ僕はあんな馬鹿な兄上なんて嫌ですよ!!」


「あら。でも‥‥大好きだと顔に書いてますよ」


カアと赤く照れるアールグレイ王子が可愛い!ツンデレ弟王子ね!


『私お姉様が大好き!』


なんとなく‥‥妹のキャンディを思い出してしまった。あの子の大好きという言葉は嘘だったのかしら。みせかけの仲良しごっこの姉妹だったって事よね。




「‥‥なるほど。リゼ嬢は違うみたいですね」


「え、はい?違うとは?」


「いえ、こちらの話です!えっと、さっき‥‥不愉快な思いをさせてすいません!」


そうアールグレイ王子はダージリン王太子の方へとついていった。


その後私達は、手伝いをして終わった後、片付けをしている途中、教会の扉が半分開いていたので私は扉を閉めようとした時教会の中に、ダージリン王太子が目をつぶり祈っている姿があった。


‥‥いつもニコニコとふざけた感じしか知らなかったけれど、あんな風に真剣に祈る姿は‥‥なんとなくやっぱり王子なのかなあと感じた。


「ん?」


「‥‥あ、申し訳ございません。扉が開いてたので閉めよとしたところダージリン王太子がいたので驚いてしまって」


そう私が頭を下げて話すと、ダージリン王太子はいつも通りの笑顔を向ける。


「エリザベスともよく来るんだよ」


「エリザベス様とも?」


「まあ、最近だけどねー」


そうダージリン王太子は教会から出ようとした時、なんとなくリプトン家というのが気になった。


「あの、先程アールグレイ王子が我が家とリプトン家の名前を出した時怯えているようでしたけど‥‥何かあったのでしょうか?」


「えー気のせいじゃない?」


‥‥気のせい?でも‥あんな怯えた顔は‥‥なんだか‥‥リプトン家とは私自身あまり交流はない。キャンディ達は親戚だから交流はあるだろうけど‥‥


私が考えていた時、ダージリン王太子は私に質問をした。


「‥‥知ってどうするの?」


「え?」


「だから、もし『何か』があると知って君は、どうするの?」


‥‥ヒヤリと背筋が凍る感じ‥‥何この尋問されてるような圧力‥‥。


「私はただ気になった事を聞いただけです」


「リゼ嬢ってさ、昔の俺に似てる」


ダージリン王太子の瞳は‥‥全て見透かされている感じで‥‥全部‥‥


「全部目の前の事に逃げて目を背けていることだね。なんか自分が一番不幸でした!って顔してるんだもんよ。俺そういうの嫌いだわ」


「‥‥ダージリン王太子に私の何がわかるのですか」


「俺は知らない。知るわけないじゃん?でも沢山嫌な事があって苦しんでても、笑ってみんなの幸せを祈っていた子は俺は知っていたからねー」


ニッコリと微笑みながら話すダージリン王太子に私は反論出来なかった。


だって‥‥そうなんだもの。痛いところを突かれてしまった。


裏切られて、もう何もかも嫌で、我慢していたからもう我慢しないで好き勝手な事をしているつもりでも、本質的に、家族にもアッサム様にもきちんと向き合っていなかった。


自分にさえ向き合っていなかったのだから。


‥‥セイに対する気持ちも気づいてるけど、認めるのが怖くて逃げてる。


私が黙っていた時、セイがやってきた。


「リゼお嬢様‥‥?」


「‥‥あ。セイ」


何故かセイはダージリン王太子を睨み、ダージリン王太子は慌てた様子でセイに言い訳をしていた。


「殺気だすなよ!?俺王太子だけど!?」


「‥‥だからなんです?エリザベス様にこの事をーー」


「怖い怖い怖い!それは勘弁!ごめんって!リゼ嬢!言い過ぎたかも!エリザベスにも怒られるわ!」


そう言いながら、ダージリン王太子は逃げていった。


「‥‥ダージリン王太子に何を言われたのです?」


「んー‥‥なんか、助言?お説教‥‥かな?はは。でも気にしないで。うん、これはね、別に腹が立つ事じゃないよ」


セイはポケットから、チョコレートのお菓子を私にくれた。


「このお菓子どうしたの?」


「アールグレイ王子と教会の子供達がくださりました。‥‥今度剣術を教えて欲しいとアールグレイ王子に言われましたけど、彼は兄と違い素晴らしい方のようですね」


「あはは。セイって、ちびっ子達に人気だよねえー。将来いい旦那様だね!優しいお父さんになりそうね‥‥ってあれ?えっと‥」


「‥‥‥」


そうからかって言うと、何故か黙って照れるセイに私まで釣られて赤くなってしまった。


一分間沈黙が続いた私達‥‥


なんか恥ずかしいのは私だけですか!?



後日、しっかり、ちゃっかりとセイロンはエリザベス様に告げ口をしたようだった。

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