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ご褒美のデートと謎キュン

「優勝おめでとう!そしてチョコレートケーキを本当に本当にありがとう!」


あぁ、食べたかった高級チョコレートを食べれる日が、くるなんて‥‥!我儘を言ってよかった!

私は一緒にセイとケーキを食べようと誘ったのに、セイは「いりません」とぶっきらぼうに答える。


私だけご褒美のチョコレートケーキを食べるなんて、なんだか申し訳ないし‥‥何か買ってあげようかしら?ついでに新作のお菓子を買いにいきたいしね。


「なら私とデートしちゃう?セイが強いのはわかってるし、護衛騎士とかいらないもの。内緒の二人でデート!」


そう冗談交じりに話すと、セイは私の方をジーっと見つめる。


「‥‥‥本当ですか?」


「え?」


「ご褒美にリゼお嬢様とデートです」


食い入るように何故か距離をつめるセイに私は戸惑ってしまった。いや、嫌がらせに言ったつもりが‥‥なんか顔が近い。


「‥‥えーと、まあ、優勝したから‥でもデートとかはじょうだーー」


「では来週にしましょう」


「え?あ、ハイ」


さっきまで‥‥無表情でなんともない顔だったのにまたあんな笑顔見たら、「冗談よー!」と言えないじゃない。


「‥‥ま、減るもんでもないし、いいわよね」


セイと約束をしてから一週間が経った。私は三つ編みをして地味な下町風の娘に変身!

我ながら変装が上手いと褒めたいわ!


「私は今日一日、引き篭もりするから食事も持ってこないでちょうだいね」


そうメイド達に言っていたので、誰にもバレずに私は屋敷裏への道へと辿り着く。


小さな古ぼけた扉の前にはセイが待っていた。セイは私の姿を見て笑う。


「似合うでしょ?」


「‥そうですね、でもどの姿でもリゼお嬢様とわかりますよ」


「やっぱりバレちゃうかしら?」


「多分大丈夫かと。それよりも馬車はないので歩きますが‥‥よろしいのですか?」


「勿論!」


「‥‥ぐーたらしたいと言う割には動きますね」


こうして私とセイは、出かけていった。

いつも貴族の姿で通る道とは違い、多分、平民の人達がよく通る道だとわかる。高級品のものはなく、沢山の小物店が並んでいて面白いものばかりだった。


「セイ!見てちょうだい!これセイにそっくりよ!」


「‥‥狼のぬいぐるみ‥‥ではリゼお嬢様はコレですかね」


そうセイが手にとったのはウサギとかではなく豚のぬいぐるみだった。


「なんで、私は豚のぬいぐるみなのよ!?」


「町へついた途端ずっと食べてばかりいるので」


そうセイと話していた時、周りの女性達がセイをチラチラと見つめていた。


「あの人かっこいいわね」


「ほら!この前の剣術大会で優勝した方じゃない!?そっくりだもの!」


この前の剣術大会で優勝した事により、学園でのセイの立ち位置は少しばかり変わった。みんなセイを凄いと褒めている。


「まあ!セイロン様がいるわ!あの‥‥!私男爵家のーー」


いつのまにかセイの周りには女性達が集まっていた。ありゃりゃ、随分おモテになるわね‥‥。


お腹がまた空いてるせいか、少し苛々する。


セイは周りにいる女性達を無言の圧力で睨みつけた。先程まで集まっていた女性達はそんなセイの態度を見て「‥ご、ごごめんなさい!」と言い逃げていく。


私はセイの肩をポンと叩いて注意する。


「はあ。セイ、女性を睨んじゃ駄目よ。‥せっかく素敵な女性との出会いもあるのに」


「そんな不必要な出会いなど要りません」


「ま、確かに私が言っても意味ないわね。男女の恋愛なんて面倒な事は確かだもの」


私は道で幸せそうに歩いている恋人達を眺めた。私もあんな風に幸せになりたかった。

どんなに次期当主というプレッシャーがあっても乗り越えて手を取り合って幸せになるんだと‥‥‥疑いもせず信じていた。


ピタと冷たいタオルを私の頬に当てるセイに私は見上げる。


「‥‥ここは日差しが凄いので向こうのベンチで休みましょう」


「そうね」


ベンチに座るとセイはいつ作って持ってきたのかわからないけれど、お弁当を持ってきてくれた。‥‥いや、女子力半端ないわよ!?


「天気も良いのでリゼお嬢様も気分になるかと作ってきました」


そうセイはサラダたっぷりのサンドイッチを私に渡す。


「‥ねえ人参が入ってる」


「好き嫌いせずに、細かくしていれておきました」


「‥‥嫁というより、オカンみたいだわ」


そう私が話しているとセイはもう一箇所私を連れてってあげたい場所があると話す。


「今から?遠いの?」


「はい、王都から少し離れた場所ですが、馬に乗ればすぐ着きます。‥リゼお嬢様」


「ん?なにーー」


「失礼」


私の口元についていたサンドイッチの食べ残しをヒョイと取ってくれたセイは、からかうように笑っていた。


セイっの笑顔って、なんだかこう‥‥可愛いーというか‥‥


‥キュン‥‥。



ん???



いやいやいやいやいやいやいやいや、キュンじゃないじゃない!!キュンじゃーない!


何これ、謎キュンはいらないわ!!無し!今の無し!


「も、もう行きましょう!遠いなら尚更!すぐにでも!」


私は急いで残りのサンドイッチを食べて、セイと一緒に馬に乗り走った。



馬を走らせる事30分過ぎた頃、村が見えた。その村の奥には小さな教会があり、子供達の笑い声が聞こえる。


「セイ?ここって‥‥」


「私も最近キリス団長に教えてもらい知ったんです。多分、リゼお嬢様がお会いしたい方かと」


私は教会の方へと足を踏みいれると、一人のシスターがこちらを見ていた。


‥‥嘘‥‥。小さい頃よく私をお世話してくれて、厳しい人だったけれど大切にしてくれた人だった。だけど突然クビになり、私の元を去ってしまった‥‥


「‥‥ウバ?」


「‥‥元気になりましたねぇ。リゼお嬢様」


私の乳母だった人が目の前にいて、私は嬉しくて彼女の胸に飛び込んだ。


「おや、大きくなっても、泣き虫さんですね。私の可愛いリゼお嬢様は」


私は久しぶりに会いたかった人に会えて泣いた。こんなに近くにいたのであれば、何がなんでも自分で探すべきだったのに!


「セイロンも随分、良い男になったね」


「‥はあ、ありがとうございます」


「あはは!まったくアンタは相変わらず無愛想だね」


「ウバとセイロンも顔見知りなの?」


そう私が聞くとウバは笑いながら話す。


「そりゃ、お嬢様が拾ってきた男の子がどんな子か気になりましたからね。よくご飯も作って食べさせたり、あのキリス団長が面倒を見ると言い張って心配してたんですよ」


あ、確かにキリス団長‥‥そうね、色々と心配になるわね。


その後教会の子供達と遊んだり、ウバと沢山話した後、また遊びに来て良いかと挨拶をした私達は別れた。


「セイ、‥‥ありがとう」


「いえ」


「‥‥それと、はいコレ」


私はセイに小さな剣の形をしたペンダントを渡した。

今日歩き回っていた時、なんとなくセイに似合っていそうだなあと思いコッソリと買ったのよね。


「‥‥ありがとう‥‥ございます」


「えっと、コホン。改めて優勝おめでとう」


私達はお互い笑い合ってから、屋敷へと戻っていった。






二人が立ち去った後、ド派手な馬車が一台教会前に止まる。ウバはその馬車の存在に気づき、ハアとため息を出してから馬車の方へと足を運ぶ。


「また祈りにやってきたんですかい?ダージリン王太子」


馬車の中にいたのはダージリン王太子だった。ダージリン王太子はウバに挨拶をしつつ、馬車から降りる。


「あはは!月に一度は、祈らないと駄目だからな!」


「貴方のような高貴な方が一年前から、こうやって来ていただけるのはありがたいのですが、その馬車は目立ちますよ」


「目立ってなんぼだろ?シスター、そう呆れるな」


「まったく‥なんでこんな小さな教会に‥あの時、初めてお会いした貴方様は顔色が悪く混乱していましたのが懐かしいです」


「あはは!昔は昔!今は今だろ!それにこんなカッコ良い顔を見れると長生きするだろう?」


「そうですねぇ。いつものようにお一人で?」


「あぁ、子供達に会ってからかなー」


ダージリン王太子は教会の子供達の頭を撫でお菓子を渡した後、教会の礼拝堂へと足を運ぶ。


ジーッと教会の十字架を見つめてから、彼は少しの時間、一人で祈っていた。


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