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回帰前 リゼが亡くなった後①

リゼが亡くなったという悲報を貴族だけではなく、王都中噂が流れていた。

オレンジペコー家が自分達の領民に更に税を増やして、悪い噂が広がり始まった頃。



王都から少し離れている村に、小さな教会と身寄りのない子供達の面倒を見ているシスターが一人いた。


「ウバせんせぇー!もうお掃除終わったよ!」


「そうかい、ならもう遊んでよしだよ」


「「はああい!」」


ウバ先生と呼ばれるシスターは、遊んでいる子供達の様子を見てから、自分の部屋に戻りソファに座って、やつれている状態の男性に同情とそして懐かしそうな目で話しかける。


「‥‥‥久しぶりだねぇ。セイロン。いつぶりやら」


「‥‥ウバさんが、リゼお嬢様の乳母からハズれて、あの屋敷を追い出されて以来でしょうか」


「‥‥そうかい。もう時間が経つもんだね。セイロンは騎士になったんだろ?」


そうウバがセイロンに聞くとセイロンは首を横に振って皮肉な笑いかたをする。


「冗談を。守るべき者がいないのに騎士になるなど無意味な事なんですよ」


そう言いながら、セイロンはジャラッと大量の金貨が入った袋をテーブルに置くと、ウバはセイロンを睨む。


「‥‥なんの真似だい?」


「表向きは身寄りのない子達を引き受けている善良なシスターですが、裏では情報屋をやっていますよね」


「お金なんぞいらない。セイロン、あんただけでも真っ当な道へ進みなさいなーーリゼお嬢様はもうーー」


「殺されたんですよ。貴女ならもうわかっているのでしょう‥‥あれは事故ではない」


セイロンは涼しい顔をしていると裏腹にグッと手を握り締め、今にでも人を殺してしまいそうだった。そんなセイロンを見たウバは、ふぅとため息を出す。


「‥‥オレンジペコー家には、キリス団長さんもいたんじゃないかい?もし対立となれば‥」


「‥‥敵とみなした場合は排除するだけです」


「そう。私はセイロンに何を教えればいいんだい?」


「オレンジペコー家が関わっている貴族、そしてリプトン家と、今のあの家の状況について‥ウバさん、私はあの者達を殺したくて堪らないのですよ。この手で必ず」


少し話をした後、セイロンは教会から立ち去る。セイロンの後ろ姿を見つめるウバは


「‥‥何をしても、お嬢様は帰ってきやしないんだよ。セイロン‥‥」


そう呟いた後、外で遊んでいた子供達に声をかけるウバだった。





「まあ!はじまして!オレンジペコー家当主のキャンディです。主人は‥少し体を悪くしてまして。私がお話を聞きますわ」


ニッコリと可愛らしく微笑むキャンディの前に、ロンという偽名を使い商人として再び屋敷へやってきたセイロンは、怪しまれないようキャンディの機嫌を良くしていた。


何度も何度も顔を合わせて、時にはお茶をして話しをして、まるで『私は貴女に恋をしている』という思わせぶりをしていた。


贅沢なドレスと宝石を見につけるキャンディは、セイロンを見て頬を染める。


「ロン様は素敵ね!はあ、平民じゃなければ‥ふふ。でも平民でもなんでも、貴方は素敵な男性だわ。あ、そ、その‥‥好いてる方いる?」


そう照れるように聞いてきたキャンディに、セイロンは答える。


「‥‥‥えぇ、おりますよ。私ではもう手が届かない高貴な方ですが‥」


「ふふふ、やだ!高貴だなんて!私は届くのにーーあぁ、そうそうロン様がおすすめした土地を買いましたわ!」


「左様でございますか」


眼鏡を掛け直し、セイロンは屋敷へ出ようとした時、キリス団長が見えてパッと隠れるセイロン。


「キリス団長ー!なんで、騎士見習いの部屋の6号室開けっぱなしなんすか!?俺入っちゃーー」


「だーめだ!あそこは、もう使ってる奴がいるんだ!」


「んな、急に消息不明になった奴をまつなんてーーいでででで!!」


「無駄口叩くな!特訓始めるぞー!これ終わったら俺は女とデートなんだ!はははは!」


そっと影でそんなキリス団長の姿を見つめてから、スッと立ち去るセイロンだった。


「ん?」


「どーしたんすか?団長」


「‥‥いや、なんでもない。なんか懐かしい感じが‥しただけだ」



少しずつ‥少しずつオレンジペコー家の周りが不穏な空気となっていた時でもキャンディは気づかずに、セイロンだけに夢中になっていた。


「ロン様のおかげで投資先を選べて良かったです。あの、これから一緒にお食事でもいかがですか?あぁ、主人のことは気にせずに」


「‥‥‥‥美しい当主様のお誘いですが、申し訳ございません。またの機会にでも」


「はあ、また断るのね。でもそういう駆け引き、私は好きよ」


そうキャンディは彼に優しく頬にキスをした。

キャンディが甘い顔をしていると反対に、憎たらしいとグッと堪えているセイロンの前に小さな女の子が足をひきずりながら、現れた。


「‥‥おあーたま‥」


ストレートの茶色の髪に紫色の瞳をもつ、幼い女の子の姿はまるで‥‥リゼのようだった。


「ごめんなさい!実は周りには黙っていたけれど娘で‥‥さあ、乳母の元へ帰りなさい。ほら」


セイロンは驚いていた。子供は流産して亡くなったと聞いていたからだ。


この子はずっと外にも誰にも知られてないということなのかと、リゼに似ている事にも驚いて、セイロンはじっと見つめていた。


「‥‥‥‥‥‥とても‥‥よく似ていらっしゃいますね‥‥」


「ふふ、あら。可愛いらしいところが私に似てるかしら?」


「‥‥‥」


チラッと小さな女の子の足や腕には、青あざがあることにセイロンは気づく。


「‥‥今日はもう帰ります」


「えぇ、またね」


キャンディがセイロンを見送った後、セイロンは馬車からすぐに降りて、こっそりとまた屋敷内へと入る。


騎士達にバレないように、庭裏の方へ進みもう一度あの小さな女の子の様子を見に行こうとしていた。


足を引きずりながら、トボトボと歩く小さな女の子なのにも関わらず、誰も周りがついていなかった。セイロンはコッソリと木の上から見守っていた。


「‥‥んしょ。よしょ」


ズリズリと引きずりながら、土を集めて食べようとする女の子にセイロンはとっさに止めた。


女の子はビックリして泣くかと思い、セイロンは少し後ろに下がりながら注意をする。


「‥‥土は食べるものではありませんよ」


「だえ?これだえ?」


そう女の子はセイロンに指をさして首を傾げる。


セイロンは女の子を見つめながら、そっと木から採れた果物を渡す。


「‥‥‥セイロンです。小さなお嬢様‥‥」


「んーと、えーと、えーと、あ!

  『セイ』!!!」


果物を嬉しそうに食べてニッコリと微笑む小さな女の子が、かつてのリゼと重なって見えたセイロンは少し戸惑っていた。


「‥‥‥殺したいのに‥」


そうはしゃいでる女の子の後ろで、泣きそうな声で呟いていた。


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