悪魔と出会う 回帰前 ※キャンディ目線
私のお姉様はとても優しくて、いつも私の事を見てくれてる。そう、なんでも言う通りに動いてくれていた。
「流石リゼお嬢様!歴史の方も完璧ですわ!」
当たり前よ、私のお姉様だもの。
「リゼ様がこれからの社交界を引っ張っていく方だな」
勿論よ!私のお姉様だもの!
「リゼ様は本当に完璧で美しい」
‥‥勿論よ。私のお姉様だもの‥‥。両親は私を可愛がってくれているけれど、周りはリゼお姉様を中心に見ていた。完璧な令嬢、次期当主としての威厳もあるお姉様をいつからか‥‥
とても邪魔に感じるようになった。
あんなに大好きだったお姉様、誇らしい自慢のお姉様。でも、そんなお姉様は、私の言う事を聞いてくれる。
「私ピンク色のドレスがいいな!」
「‥‥そう。そうね!キャンディに似合うもの!私は緑で良いわ」
ほら。本当はピンク色が欲しいくせに、私の事を1番に考えて我慢してくれる。
どんなに勉強をしなくても、マナーをサボっていても、誰も私を咎めずお姉様が全部やってくれるもの。
「アッサム様」
「リゼ!」
幼馴染であるアッサム•トワイニングは、リゼお姉様の事を好いている。リゼお姉様もアッサム様を好いている。いつか、いつか私はリゼお姉様に捨てられてしまう。
私が捨てる側ならまだしも‥‥。アッサム様とリゼお姉様との婚約が決まった時、私は考えた。リゼお姉様の物は私の物であるから、仲良く半分こをすればいいんだわ!
でも途中で考えも変わった。幸せそうな顔をするリゼお姉様をちょっと懲らしめてやらなきゃ。
「私が次期当主になっても構わないわよね?ねえ、お母様!そうよね?」
私は母に聞くと母は、大きく頷く。
「可愛いキャンディ、私に任せなさい。そうね‥‥当主になるには、リゼに何か起きないといけないわね」
アッサム様とリゼお姉様の結婚前パーティーの時、リゼお姉様がお客様を対応をしていた時アッサム様は疲れていたのか一人で部屋で休憩をしに行く。
私は、昔お母様がお父様を手に入れた方法を教えてもらい同じ事をした。
「アッサム様、お疲れですか?」
「あれ、キャンディかい?あぁ、少し休憩してからまたリゼのところに戻るよ。まだ始まったばかりだしね」
私は小瓶から、少しだけ葡萄ジュースが入っているグラスの中に数滴入れてアッサム様に渡す。
「アッサム様、これを飲んでから行きましょう」
さあ、媚薬入りの葡萄ジュースを召し上がって。その薄っぺらいリゼお姉様への愛とやらを‥‥半分ちょうだい。
媚薬入りの葡萄ジュースを飲んだ後のアッサム様は私を求めた。あれから、媚薬などなくともアッサム様は私を求めて続けてきた。
ーその結果ー
「……今なんと?」
「……こ、子供が出来たんだ。キャンディとの」
「お、お姉様……ごめんなさい…わ、私…でも、ずっと前からアッサム様が好きだったの!お姉様を傷つけたくなくて……!」
チラッとリゼお姉様の顔を見ると、今まで見た事のない傷ついているリゼお姉様だった。
あぁ‥‥勝ったんだ。私はこの人に勝てた。1番彼女が欲しいものを手に入れた私が勝った!そう喜んでいると、お姉様はショックで外へと飛び出そうとした時馬車に轢かれて死んだ。
誰かが亡くなったリゼお姉様の方へと駆け寄り、必死に声をかけていた。誰?あんなに大声でリゼお姉様の名前を呼んでいる。
私は体に悪いと、すぐにその場から立ち去った。
そうね、その馬車‥‥馬に興奮剤を直前にあげたの。
本当は少し手足を動かなければと思っただけ。怪我をさせようとしたら、そのまま、お姉様が亡くなってしまった。これは私のせいじゃないわよね?不運な事故だもの。
その後私が次期当主になる事となったのに、
お父様は最後まで納得してくれなかった。
「リゼが‥リゼ!お前達はなんてことをしてくれる!オレンジペコー家は信用ガタ落ちだ!‥ゲホゲホ‥っ」
お父様の小言が段々とうるさく感じ、お母様はお父様に少しずつ毒を盛っていた。
私の言う事を聞いてれば、よかったのに。あっけなくお父様はリゼお姉様を追うかのように亡くなった。
「キャンディ、貴女がこの家の主人よ。ふふ」
「お母様、私幸せになるわ。このお腹の子と一緒に」
幸せになると思っていた。一年後子供を産んだものの、アッサム様はリゼお姉様が亡くなったのがショックだったのか塞ぎこみお酒ばかり飲んでいた。
「ハズレくじだわ。ハア」
そう私がアッサム様に声をかけると、アッサム様は私を睨む。
「君が彼女を殺しんたんだろう!!?僕は‥実家からも絶縁されたんだ!!あぁ、リゼに‥なんてことを‥リゼ‥‥リゼ‥」
本当最悪だわ。結婚ってもっと幸せになるんじゃないの?
「おぎゃー!おぎゃー!」
「あーもう!五月蝿い!乳母ならちゃんとみて!」
「も、申し訳ございません。ただ、お嬢様も母親に抱かれれば安心をなさいますので抱いてみては」
「‥‥はあ?嫌よ。ミルク臭いし、オムツ変えたの?!臭いが‥あぁ、最悪だわ!うつっちゃう!」
子供なんて五月蝿いだけで、可愛くもない。私とお母様は子供を見て驚いた。私のような可愛いらしいピンク色でもなく、アッサム様のような金色の髪でもない、地味な茶色の髪に紫の瞳のこの子が‥‥なんだか死んだリゼお姉様みたいで、気持ち悪くて仕方なかった。
リゼお姉様はいつまで私を苦しめるのかしら?
みんな、リゼお姉様が生きていればと、そう噂をしている。私を認めず、リゼお姉様はこうだった、ああだったと。
みんな悪いのはリゼお姉様なのに。
とある王太子妃の茶会で、王太子妃に私はある疑いをかけられて気分を悪くした。
「‥‥キャンディ当主は随分と事業が上手くいっているようですね。母方のご実家であるリプトン家が関わっていると聞きました」
「‥‥さあ?私は何も知りませんわ。それよりも王太子妃は政治の事よりもお世継ぎなどの事を考えるべきでは?ふふ」
「‥‥‥なるほど。あのリゼ様とはまた違うようですね」
クスッと私を小馬鹿にした笑いが腹が立った。綺麗でもなんでもない眼鏡女のくせに‥‥あぁ、この女も邪魔だわ。
‥‥リゼお姉様がいなくなってから、上手くいかないことだらけだった。
更に、一年後。とある商人の男性と運命的に出会う。
ロンと名乗る平民の男だ。平民だけど、茶色の淵の眼鏡をかけており、黒髪の綺麗な顔立ちで、青い瞳の色に吸い込まれそうな、少し近寄りがたい雰囲気を出す彼をとても気に入った。
私が欲しい言葉をいつもかけてくれる。
きっと、彼は私を愛してるんだわ。
「ロン様のおかげで投資先を選べて良かったです。あの、これから一緒にお食事でもいかがですか?あぁ、主人のことは気にせずに」
「‥‥‥‥美しい当主様のお誘いですが、申し訳ございません。またの機会にでも」
「はあ、また断るのね。でもそういう駆け引き、私は好きよ」
そう私は彼に優しく頬にキスをした。
二人の甘い時間を過ごしていたのに邪魔が入ってきた。
「‥‥おあーたま‥」
ヒョコとよちよち歩きで二歳になる娘の姿に、ロン様は何故か固まっていた。あぁ、私と同じで、子供が苦手みたいね。
「ごめんなさい!実は周りには黙っていたけれど娘で‥‥さあ、乳母の元へ帰りなさい。ほら」
「‥‥‥‥‥‥とても‥‥よく似ていらっしゃいますね‥‥」
「ふふ、あら。可愛いらしいところが私に似てるかしら?」
「‥‥‥」
ニッコリと優しく微笑む彼に私は次第に惹かれていく。アッサム様などいらない、この人がほしいわ。全部あげるから、私の物になってほしい。平民だから、まあ、愛人くらいならいいかしら。
そう心から、思っていたのに‥‥。
何が起きたの?オレンジペコー家だけではなく、お母様の実家リプトン家も没落。屋敷内は真っ赤な血の色に染まっていた。屋敷にいる者はほぼ死んでいる?何人かが屋敷に乗り込んできたの?
「なっ!?お前、以前いたこの屋敷の騎士団の!?ガハッ!!」
アッサム様の声がし、様子を見に行くと殺されていた。
「いやあああ!!何!あなたは!!」
「お母様!?」
階段の方へと降りると、私の子供を抱えている黒いマントを着ている男‥‥
「な、なんで‥?ロン様?」
返り血を沢山浴びていたであろう彼は私を見つけて、不気味な笑顔をする。
「‥‥‥そこにいらしたんですね。キャンディお嬢様」
「は?え、ちょ‥‥ま‥お嬢様?」
初めて怖いと感じた。今まで上手くいったのに‥‥。何が起きたの?私の知らない間に何が起きたの!?
私はハッ!とようやく気づいた。何故気づかなかったの。この人は、昔貧民街でお姉様が拾った人!!?
「‥‥なな何が目的なの!?お金?ならあげるわ!あぁ、子供ね!その子は体も弱くて、駄目な子だからあげるわ!」
そう私が答えると、彼は黙って私を睨んでいた。私を殺したくて堪らない顔だわ‥。私が一体何をしたというのよ?
私は怖くて体が動けなかった、ただ弱々しく我が子の泣き声だけが屋敷内に響く。
「ぅうぁああん!!」
あぁ‥‥この男は悪魔だ。
私はとんでもない悪魔と出会ってしまった。
そう思った瞬間、彼が持っていた剣は私の心臓に突き刺さる。
死んだ。そう思った瞬間‥‥
「キャンディ?どうしたの?」
「‥‥ふえ?」
「僕のお菓子をあげよう。リゼ、君にも」
ポロポロと泣いている私を心配そうに見つめる、懐かしい小さなリゼお姉様とアッサム様。
夢?いや、違う、さっきまで私はあの男に殺された筈。でももしかしたら夢かもしれない?
夢ではない。
確かに私は一度死んだ。
だから、2度の失敗は駄目!アッサム様はもういらないけれど‥‥
時が過ぎて、忘れかけていた時、黒髪で青い瞳の青年がいつのまにかリゼお姉様のそばにいた。
あの容姿‥‥まだ幼なさはあるものの
ロン様‥‥!!?あんな近くにいたの!?
彼の名前はセイロン‥‥セイロンという名前。
私を騙して‥‥裏切ったあの男。
みんなを殺した奴!私の子供も殺したに違いないわ!!
あの悪魔をなんとかしなければ‥‥。
私を愛してると嘘をついたあの悪魔がそばにいると知り、それでも‥‥それでも少しだけ私は喜んでしまった。




