沈黙が続いても楽
「リゼ!!あなたは姉なのに、妹のキャンディのお願いを無視するなんて一体どういうこと?!」
朝から金切り声が頭に響くお義母様の声‥
夜更かしして久しぶりに推理小説をぐだぐだと読んでいたのに。あー、早く学園行って帰ってお菓子を食べながら小説を読みたい。
「聞いてるの!?」
「お義母様、このままではキャンディはオレンジペコー家の当主になれません」
「‥‥貴女、本当になる気がないの?」
「ありません」
お義母様は私が嫌いなのは昔から知っていた。亡くなった母親に似てるというのもあるんだけど‥‥。
「それでは」
「あ!待ちなさい!まだ話しがーー」
そう私は早く学園へと向かう。
早くグータラしたい‥‥。
エリザベスは怒った顔をしながら廊下を歩くものだから、生徒達は怯えて避けていた。エリザベスが向かっていたのは、リゼのいる二年生の教室だった。
「失礼。リゼ様いらっしゃるかしら」
ツンとした澄ました顔に眼鏡をクイッと掛け直すエリザベスに、周りにいる人達は目を逸らす。
「エリザベス様、どうなさいましたか?」
あら?顔色が悪い??というより疲れてるというか困惑しているというか‥‥
「リゼ様‥少しご相談があります」
そうエリザベス様と私はランチの時間にまた会おうと約束をし、ランチの時間になり、私はいつもの裏庭のベンチへ向かい会いにいく。
「あぁ‥リゼ様。ごめんなさい。忙しい方なのに」
「大丈夫ですよ。毎日サボってグータラしている私なので」
そう説明をすると何故かエリザベス様は呆れた顔をしながら笑っていた。
エリザベス様はふぅとため息をして、話しだす。
「‥‥あの馬鹿がね‥」
「馬鹿?」
「ダージリン王太子よ」
‥ダージリン•オータムナル。
オータムナル国の王太子で何度かパーティーで顔を会った事がある、あまり学園にも来れないみたいだけど、剣の腕は強いと評判。
それは、回帰前でも知っている。だって、回帰前の剣術大会の優勝者はダージリン王太子だったもの。
婚約者であるエリザベス様は苛々しながら、また話す。
「あの馬鹿がね‥‥手料理を食べたいとか言いだしたのよ」
「仲がよろしいのですね」
そう私が褒めると全否定をするエリザベス様。
「昔からの幼馴染なだけです!あんなお馬鹿な男と付き合ってられるのは私ぐらいなだけで‥‥と、とにかく!なんでも、この前下町へ視察に行った時に、平民の新婚の方達の話を聞いて、お、おおお嫁さんになる人は、旦那様に料理を作るからと‥‥。私は確かに未来の妃として日々つとめれるように、心掛けていますが‥‥料理は‥‥」
「エリザベス様。手料理を作って欲しいとダージリン王太子に頼まれたのですね」
「平民の素朴な料理が凄く美味しかったらしいです。でも私料理なんて出来ず、あの馬鹿に無理と言っても駄々をこねて‥朝から頭痛が。はあ。」
平民の素朴な料理‥‥。前世を思い出した私は自炊とかにはあまり抵抗は持たないけれど、確かにこの世界で貴族達は料理なんてまったくしない。
なんとなく私は料理できるけど、貴族の私が何故!?と疑問を持たれるのも説明をしたり、料理をするため動くなんて面倒だ。
平民の料理とか詳しくて器用な人……。なんとなくセイの、顔を思い浮かんだ。手先器用そうだし、声をかけてみましょ。うん、拒否はないけどね!
「エリザベス様、いつ頃ですか?私も連れと一緒に行きます」
「明後日の王宮であの馬鹿とお茶をする予定です。その時に料理を……すいません。ご迷惑をかけて…」
そう私はエリザベス様と約束をした。
ー当日ー
腕を組みながら溜め息を出して私をジーッと文句が沢山あるぞという顔をしているセイを私は無視して、馬車に乗る。
「さあ、早く乗りましょうセイ」
「…突然呼ばれて、何も説明のないままですけど」
「今から王宮に行くのよ。料理とかできる?」
「??それなりには」
「ふふふ。やっぱりね!友人が困ってるのよ、それで一番にセイの事を思い出してね」
「リゼお嬢様が一番に私を思い浮かび頼ってくれたのですか?」
「他に誰がいるのよ??」
「…そうですか…私を…」
そう今日はコッソリと料理を教えて欲しいと、説明をすると、無愛想な顔だったセイが何故か頰を赤く染めて喜んでいた。
「セイ。なんで笑ってるの?あぁ!騎士を目指すべき貴方としては王宮は憧れだものね!しかも今回王太子様様と初めてお会いされるし、セイの魅力を存分に発揮できるかもね!ってなんで急に無表情になるのよ」
「……まず王太子と会うなんて知りませんでした。ただそれは割とどうでも良いです……」
急に不機嫌になるセイに、朝何も食べてないと思い私はチョコレートをあげるとセイは呆れながらも笑った。
「まったく…貴女には敵わないですよ」
私達は楽しい話しをするわけでもなく、ただ黙ったまま馬車に乗り王宮へと向かう。
沈黙な雰囲気は息苦しくもなく、何か話さなきゃとも思わず、なんとなく楽だなあと感じる。
馬車の中は面倒な話などもせず、ボーとするだけ。グータラな私にはちょうど良い。
この時間は嫌いではなかった。




