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変な女

 私の腕は、切り落としても、切り落としても、再生する。小学生の頃に一度、人前で自分の手首を切り落としたことがある。ウザい女がいて、びびらせてやろうと、図工教室からくすねたノコギリを使って、女の前で左の手首を切り落とした。

 ただ、うまくいかなくて、手首が半分くらいくっついたまま、血がびゃーびゃー出た。

 まぁ、それで私の目的は充分、達成されていたわけで、女はその場で叫んで、泣き喚いた。その後、保健室に連れていかれたけど、そのときにはもう、私の手首は治っていた。

 めっちゃ痛いけど、10分もあれば再生する。手首は血だらけなのに、血を拭うと傷1つ無いから、保健室の先生は訝しんでいた。

 その後、親に連絡されて、家でこっぴどく怒られた。でも、私を怒るのはおかしいのだ。なんで私が怒られなきゃいけないのだ?この身体を作ったのは、親なのだ。

 父は大学の教授で、バイオ系の研究者をやっている。ヤモリの研究をしていて、その研究材料に、私を使った。ヤモリの遺伝子の一部を、私に移植した。

 おかげで手にしたのがこの身体。でもちっとも役に立たない。役に立ったと思ったのは、あの、女を泣かせたときだけ。それ以外、何も役に立たない。

 腕が再生することは、周りの人には秘密にしている。周りに言うと、ややこしいことになるから、と父は言っていた。

 せっかく他の人と違う身体を持っているのに、それを見せびらかすことができないのはつまらないものだった。

 私の部屋には、切り落とした私の手首がコレクションにしてある。0歳のときから毎年誕生日に、父が私の手首を切る。もう、壁に飾ってある手首は30本を超えた。

 もちろん、もし他の人が私の部屋に来たら、びっくりするだろうな、と思う。でもまぁ、私には友達がいないから、問題ない。

 リストカットして自殺した、という人のニュースを聞くと、良いなぁ、と思う。手首切ったって、私は死ねないから。

 手首切って、死ねる、って、有難いことなんだよ?それ知ってる?って、目の前で言ってやりたい。

 切っても切ってもニョキニョキニョキニョキ手が出てくる私の気持ち、ちょっとは考えたことある?ないだろうけど。


 友達はいないけど、性欲はある。だから、彼氏を作った。すごく簡単だった。ちょっとお洒落というか、男が好きそうなファッションをするようにしたら、すぐ会社の同期に誘われた。全然イケメンじゃなかったけど、別に性器がついているならそれで合格。一緒に晩御飯に行って、それから1か月後にセックスをした。

 全然性格好きじゃなかったけど、セックスは満足だった。彼が上手いのか下手なのかわからないけど、やれればいい。それぐらいしか考えてなかった。

 でもあいつ、それから調子に乗ったのか、どんどん、やることがエスカレートしてきた。首絞めたいとか、縄で縛りたいとか。

 男って、こんなことで興奮するんだな、って思った。別に私もやったことなかったし、男が猿みたいに興奮している姿を見るのは見物だったから、付き合ってやっていた。


「ねぇ、もっと凄いことやりたくない?」

 私は、ラブホテルで彼に言った。

「え、凄いこと?」

「そう。もう、すんごいの」

「何それ、やりたい」

 男は鼻の穴を膨らませて言った。

 私は持ってきた鞄の中から、ナイフを取り出した。

「え?何・・・?」

 男はたじろいだ。

「ほら、これ持って」

「いや、これって、ナイフじゃん・・・」

「そうだよ。すんごいこと、やりたいんでしょ?」

「な、何するんだよ・・・」

 私は彼の手に、無理矢理ナイフを持たせた。

 そして私は袖をまくって、白い腕を彼の前に差し出した。

「刺して」

 彼は何も言わなくなっていた。

「ほら、刺して」

「なんだよ、これ」

「すんごいこと、見せてあげるから」

「嫌だよ」

「じゃあ、私が刺す」

 そう言って、彼の前で私はナイフを自分の手首に突き刺した。

 突き刺したナイフから、血が滴って、地面に落ちた。

「ぎゃーーーーー」

 男は悲鳴を上げて、部屋の外に飛び出していった。


 私はナイフを戻して、ナイフに付いた自分の血を舐め、床についたシミをティッシュで拭き取った。

「もう、すんごいこと、これからだったのに」


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