五月のテラス席
遅くなりましたが本日分の更新です!
もう日付変わりますけど……
楽しんでいただければ幸いです!
新学期の慌ただしさも落ち着いた五月半ば――私はいま、食堂から繋がっているテラス席を陣取って文化祭の準備に勤しんでいる。ここもランチのイベントで出て来たところよね。白くて丸いガーデンテーブルとセットのチェアが等間隔で並び、それを背景にしたスチルが可愛かったわ。
まぁそんなかわいらしさも成層圏に吹き飛ばす勢いで、目の前には毛糸が山と積まれているんだけど。文化祭の展示物の一つよ。面白半分で提案してみたら採用されちゃって……でも絶対に売れないってわかっているから気は楽よ。
「えっと……ここで黒に切り替えて……」
本物サイズのスイカを編みぐるみで制作中です。
モノとしては単純なんだけど、本物サイズってところが難しいところ。だって小玉スイカじゃなくて、L玉のスイカよ? いまある毛糸で出来上がるかどうかも未知数。しかもどうせやるなら断面図も作りたくなっちゃったの。変な凝り性を発揮して、自分の首を絞めたわ……楽しいけど。
「黒の波模様はどう出そうかしら?」
毛糸は作り直すのが容易だから良いわよね。あんまりやり過ぎると糸が硬くなっちゃうからやり過ぎは注意。
そんなことを考えながら手は動かし続ける。こうやってゼロから出来上がっていく作業が楽しいのよね。徐々に増えていく段数と比例して見えてくる完成予定のもの……それが見たくて物作りをしているのかもしれない。この人生が始まってからもそこは変わらなかったというか、むしろ悪化したかも。
最初から刃物や針は触らせてもらえなかったから、響ちゃんや茜ちゃんが小さい時に買って貰っていたビーズでブレスレットや指輪の細工を作ったり、紐を組んで長さを出すミサンガを作ったり……パンチニードルやニードルフェルトも一時期やりこんだ。そこから一歩進んで針仕事に許可が出た時は感動したけど、熱中し過ぎて熱を出したのよね。
「あんまり根を詰めるとまた怒られるわね……」
そういう時に一番怒るのは重ちゃんだったりする。