クラス発表
本日も楽しんでいただければ幸いです。
私立鷺原学園――わかってはいたけどデッカい。そりゃ二次元の学校がベースだものね。この世界では現実とはいえ、規模としてはファンタジーと言っても差し支えない広さ。これで初等科と中等科が別のエリアにあるとか、学校法人だとしても色々と大丈夫なのかしら。
目の前にあるのは高等科と大学科が併設された校舎。これ、ゲームで何度も見たわぁ。いっそ懐かしさすら感じる場所に好奇心が抑えられない。でも今は入学式に専念しないと……中等科からの内部進学組と、高等科からの外部入学組が一堂に会する入学式は、敷地内の講堂で行なわれる。クラス分けは高等科の中庭に貼り出されていて、私はひとしきりキョロキョロと見回した後にその張り紙を確認した。
もしゲーム本編だとしたら、同級生に三人の攻略対象がいるはず。自分の名前を確認したあとは、そっちも確認しなきゃならない。
「あ、一組だわ」
〝おおたき〟って、あいうえお順だと最初のほうになるのよね。しかも一組から見たから開始数秒だったわ。本来の主人公は四組だったはずだから、攻略対象三人も四組……それを確認しようとすると「確認が終わったらあちらに整列してくださいね」と声を掛けられた。
「えっと……」
「外部入学の方ですよね? 講堂は少し遠いので早めに移動しないと間に合わなくなりますよ。こちらは入学生のお花です。胸元に挿してくださいね」
たぶん、毎年迷子が発生するんだわ。教えてくれた教員からそんな圧を感じてしまう。それ以上ごねることも出来なくて、手渡された花を胸に挿しながら移動を開始した。あら、これ造花じゃなくて生花だわ。お金が掛かってるわねぇ。
「おぉー」
だいたいの場所はゲームで履修済だしこの場所も散々スチルで見たけれど、やっぱり本物は違う。思わず感嘆のため息が漏れてしまった私の横で、クスっと笑う声がした。
「……ごめんなさい、笑っちゃって。外部の子よね? 中等部の卒業式もここでやったから、内部生はあんまり驚かないの。でも最初は同じように驚くんだけどね」
そんなふうに声を掛けてくれたのは、同じ一組の萱島梨絵さんだそうだ。この子はゲームにいなかったな、と思ってしまうゲーム脳をどうにかしたい。親切な彼女に促されて、講堂前のクラス毎に並んだ列へと整列した。〝お〟と〝か〟だから偶然だけど前と後ろ。
「あ、内部生だからわかるかしら? 今年の新入生代表の名前は知ってる?」
「え? 当日発表だからはっきりはわからないけど……でも田鍋くんじゃないかって言われているわよ?」
たなべくん……は、攻略対象じゃない。ゲーム世界では財閥御曹司である鷹岡玲司だったから、これで本編ストーリーという線は消えた。
「よっし!」
「え? え?」
「……あ、ごめんなさい」
思わずガッツポーズをしてしまい萱島さんを驚かせてしまった。
今日は1回更新なので、続きはまた明日~