険悪な仲
昨日のうちに書き上げたかったのに、妹さんの名付けで手間取りました!
(先に考えておかないから……※8/24で調整しておりますすみません!)
本日も楽しんでいただければ幸いです!
ちょうど萱島さんもお迎えが来たということで一緒に昇降口まで向かった。ここ、ちゃんと車寄せが設置されているのよ。あ、車寄せって迎賓館とかにある〝玄関から出た時に雨に濡れないで車に乗れるようにする屋根〟のこと。何カ所かある昇降口のうち、それが設置されているのは一カ所だけだから雨の日とかは渋滞が起きるの。学校は駅からも歩ける場所にあるから、外部生のほとんどはこの昇降口を利用しないんだけどね。
萱島さんを見送ったあと私たちも秋月くんのおうちの車に乗ると、ロマンスグレーな運転手さんがにっこりと微笑んだ。
「啓崇さまがお友達を呼ばれるのは久しぶりですね」
「……瑛舞が呼んだからだ」
「瑛舞さまも、大変楽しみにされていますよ」
さま付けで続くやり取りに目を丸くした私に向かって、運転手さんがルームミラー越しに目を細めた。
「初めまして、大瀧さま。私は専任ドライバーの山村と申します。外部からいらした方ですと驚かれるかもしれませんが、どうぞ気を楽にしてくださいませ。ただ……」
「あ?」
「……本日のご予定がずれこみ、旦那さまがご在宅されております」
その一言に秋月くんの雰囲気がピリッと鋭くなる。うーん、もうこの頃からここまで険悪な仲なのね。とはいえ、それを私がどうこう言うわけにもいかない。こっちの問題に関しては、私をきっかけにして仲直りしてなんて言える立場じゃないし……。
「えっと、専任ということは秋月くん個人のってことですか?」
「あぁ、はい。……とはいえ、ここのところは車を磨くくらいしか仕事がありませんでしたけれど」
空気を紛らわせるために聞いたけど、その返事にまた驚いてしまった。だって〝秋月家〟じゃないのよ? そりゃ雇用としては秋月家が大元になるんでしょうけど、個人個人にドライバーがいるなんて庶民には考えられないわ。
でもそれ以上の会話はなんとなく続かなくなってしまって、まだしとしとと降る雨粒を目で追っているとしばらくして秋月くんのおうちに着いた。
「あ……」
ここのおうちも車寄せがある。そこに一台の黒いセダンと、今まさに乗り込もうとしている男の人。山村さんが窓越しに会釈をしているのも視界に入った。
あれが秋月くんのお父さん。
鉢合わせにはならなかったけど、向こうもこちらを認識していたんだろう。スッと流された視線と一瞬だけど目が合った気がする。うーん……ド迫力。ゲームの秋月さんそっくりだったから、あの目つきは遺伝だったのね。
シリアスっぽい親子の間で、平和な縁ちゃんです。