秋月くんとの関係
本日も楽しんでいただければ幸いです!
なんだか昼休みや放課後に、秋月くんと手芸をするのが日常になってしまった。もちろん部活や委員会で会わない時はあるけど、私が定位置にしているテラス席にいれば気付くと向かいに座っているのよね。
別にずっと話しかけられるわけではないし、こちらとしてもなにかを話さなきゃと思うこともない。ただただ静かな時間が流れている。
スイカのマスコットは最終的に五個作ったの。大きな編みぐるみも平行して編んでいたから、良い気分転換になった。まぁそれ以外にも刺し子を二枚と、ミニサイズの熊のぬいぐるみを作ったりしていたんだけど。
「雨、止まないわねぇ……」
「そろそろ梅雨入りかしら?」
相変わらずチクチクと針仕事をしている私の前の席には萱島さん。今日は演劇部の集まりもないらしく、帰宅のためのお迎えを待っているところ。土砂降りじゃなくてもお迎えがあるってすごいわよね。そういうところ、公立校とは違うんだなぁと思っちゃう。
「七月になったらすぐ期末テストだし、夏休みまであっという間ね」
「つい最近中間テストをしたような気がするわ。学生の本分とはいえ部活が出来なくなるのはイヤ。無理」
「縁さん、ギリギリまで趣味を優先していたものね。それなのに学年で五十位以内にいるんだから凄いわよ」
そりゃ赤点なんて取ったら趣味が出来なくなるからだもの。一度大人ってものを経験しているから、そんな積み重ねが大事っていうのは身に沁みてわかっているつもり。
「そういう萱島さんはもっと上だったじゃないの」
元が学園もののゲームだからか、この学校ってテスト結果が貼り出されるのよ。上位五十人までだけど、拒否権なしの問答無用ってやつ。一位にいたのは新入生代表も務めた田鍋くんだったわ。
「……ねぇ、縁さん。あまり交友関係にくちを出すのもと思ってはいるんだけど、秋月くんとはどういう関係?」
「?」
どういうとは? と首を傾げる私に、萱島さんが申し訳なさそうな顔で話を続けてくれる。
「初等科から一緒だから、内部生はだいたい顔なじみなの。秋月くんもね。でも彼……中等科の終わりくらいから荒れ始めちゃって……」
他の生徒にだって反抗期はある。でも元がいいところの子たちだから、大きな問題に発展することは少ない。……その中で際立ってしまったのが秋月くんみたい。