スイカの依頼
不定期更新で申し訳ないです。
今日はもう一話くらい更新したいー!
コノトキには通常エンドとノーマルエンドと、ハッピーエンドがあった。
通常エンドは誰ともエンディングを迎えない終わり方。端的に言えば『高校卒業おめでとう!』ってやつ。
ノーマルエンドは攻略対象との〝友達以上恋人未満〟というか……まぁこれから先の未来に期待ってエンドね。人によってはそっちがハッピーだったりしたわ。
そしてハッピーエンド……スチル付きというのが目玉だったけど、本当にハッピーかどうかは楽しんだ側の解釈による部分もあった。その最たる攻略対象が〝秋月さん〟なのよねぇ。
四歳差だからユーザーの高等科卒業と秋月さんの大学科卒業が同じ。なのに、結婚式だ! やったぁ! みたいな終わり方をしないのよ。通称〝高飛びエンド〟……色々なしがらみを背負う秋月さんと一緒に、あれこれ振り切って新天地で暮らすという終わり方をする。いやその前に抱え込んだしがらみをどうにかしなさいよ! と思ったユーザーは数知れず、アリ派とナシ派で真っ二つだったわ。
「なぁ、これのもっと小さいのって出来るか?」
編み物を再開しながら、今ならまだしがらみもこんがらがっていないかもしれないと考える私に、秋月くんがそう声を掛けてきた。
「これ? スイカってこと?」
「あぁ。こんくらいの……髪留めとかヘアゴムに使えるくらい」
ふむ。秋月くんが親指と人差し指で作った輪っかは、手持ちの毛糸だと無理がある。いくら小さく作ろうとしても、毛糸の太さによって最小値って違うからね。作るならレース編みの毛糸が良さそう。
「立体だと固定が難しいし、ヘアピンの先に付けるならスイカの断面のほうが良いかも。ヘアゴムだったら立体に出来るわよ……こんな感じ」
机に広げていたノートの新しいページを開いて、簡単なイメージ図を描いてみる。あんまり大きいと付けたり結んだりするときに邪魔だから、どちらも直径だと二センチくらいかしら。
「こっちが良い。金なら払う」
「……別に良いわよ。このくらいなら家の余った糸で作れるし、むしろ原価計算をするほうが大変」
秋月くんが指差したのはヘアピンのほう。それなら家にハンドクラフト用のパッチン留めがあるし、手芸用の接着剤でくっつくわ。特に新しく買う備品はないからお金をもらっても困ってしまう。とはいえ、秋月くん側からすれば「そう言われても」って話よね。
「うーん。じゃあ二つお願いを聞いてくれる? 一つは、今度ここのカフェオレを奢ってほしい」
「それは構わねぇけど……」
「もう一つは、誰に宛てての物? このヘアピンを秋月くんが使うとすっごく面白いことになるんだけど」
それはそれで見てみたい。似合わないだろうけど。そんな私の想像がイメージ出来たのか、秋月くんが心底イヤそうな顔をした。