あなたはもしや……?
更新が開いてしまいました!すみません!!
※文章が少しおかしいところがあったので、一部手直しをしています。
「やってみる?」
幸い予備の毛糸やかぎ針はあるから、初歩の初歩くらいなら教えることが出来る。でもそれには首を振られてしまった。
「とりあえず、見ていても良いか?」
「どうぞ? ただあんまりおしゃべりは出来ないわよ?」
集中しちゃうとどうしても会話が疎かになるのよね。念の為に確認すれば、そもそも間近で見れる機会が貴重だから「問題ない」らしい。まぁその気持ちもわかる。私も、母親がミシンばりの運針をしている姿を見るのは好きだから。
「……改めて、自己紹介するわね。大瀧縁よ。今年入学してきた外部生で、一組に所属しているわ」
結構普通に話しちゃったけど他学年だったら失礼だったかしら? と思って自己紹介をしたら、返された名前に血の気が引いたかもしれない。
「あきづき、ひろたか……さん?」
「あぁ。アンタと同じ一年、俺は五組だ」
「そ、そう……」
五組だったら気付かないはずよ。だって廊下の端と端だもの。って、そうじゃない。
秋月啓崇――コノトキ本編では先輩キャラとして登場する隠しキャラ。先輩と言っても隣にある大学科所属だけれど。えぇっと、本編では主人公が高校一年の時点で大学二回生なのよね? つまり今は本編の四年前ってこと?
「どうかしたか?」
「え、いや、その……なんでもないわ」
叫ばなかった私、えらい。ほっぺの内側を噛んで変な顔にならないように必死だけど、それでもえらい。私、頑張ってる!!
だって公式スチルになかった高等科制服を着た秋月さんよ!? まだちょっと幼くて、目つきもそんなに鋭くない秋月さんよ!? ゲームでは殺し屋みたいな顔つきになっていたから、そりゃ気付かないわよ。まぁそうなった理由も色々とあったわけだけど……あの顔が高校生だとこうなるのね。
貴重! とミーハー心が浮足立つけど、それはそれとしてちょっとだけ……制服とのギャップに面白いと思っちゃった。私が着る以上にコスプレっぽいわ。
「大瀧? いや、縁? は、いつもここにいるのか?」
「私のことは好きに呼んで良いわよ。……そうね、夏になるまでの晴れている日はここにいると思うわ」
失礼にならない程度に観察していたらから思わずそう答えちゃったけど、よくよく考えればこれって選択肢にある答えの一つだった気がする。でも今の気候ならここでやるのが気持ちいいからね……嘘はつけない。確か好感度が上がっちゃう回答だったけど!
えぇっとゲームとしては……隠しキャラだからまず一周目には出てこないの。本編クリアの実績で解除される中等科からゲームを開始する必要がある。つまり本来なら三年間で終わるゲームの年数が二倍……なんだけど、一周目で見ている攻略対象の少し幼い姿が出てくるってメリットもあった。スチルもちゃんとあったし、中等科だけのイベントもあったしね。
その中で、誰とも恋愛ルートに入らず自身の特技として手芸を磨くと現われるのが〝秋月さん〟。ここはあえて〝さん〟付けで呼ぶわ。目の前の秋月くんとは違い過ぎるし。