戦火の雷鳴
激しい音が響いていた。互いの刃がぶつかれば、その度に衝撃波が木々を薙ぎ倒す。影丸も酒呑童子も、それぞれ傷を作りながら相手を倒そうと常に自身の最大の力でぶつかり合う。
「痛いぃ、痛いわァ。でも楽しぃねェ!!」
「こっちは全く楽しくねえよ」
影丸の姿はすでに人の形をしていない。鋭い爪も牙も、角も、ただの鬼だ。体もひとまわり以上大きくなっている。黒い体ではわかりにくいが、頬や腕、足か拉致を流していた。
雷を放ち距離をとるが、すぐに後ろに炎が迫っている。宙で体を翻し、何とか避けるが、勢いをつけて酒呑童子が突進を繰り出した。
「くっ」
「まぁた避けられちゃったァ……っ!!?」
ちりっと髪が焦げ付く。通り過ぎようとした酒呑童子の腹部に、力強く握りしめた影丸の拳がめり込む。数十メートル吹っ飛んだ酒呑童子は、がはっと息を吐くとそれと同時に血が吐き出された。着物と顔周りを濡らす血から、かなりのダメージを与えたとわかる。
「ケバい化粧より似合ってるぜ」
「ムカつくぅぅう」
「次は首をぶっ飛ばしてやる」
ゴォーっと音を立て、酒呑童子の体が炎に包まれる。木々に燃え移り、影丸の周りも炎が広がった。
無駄に燃やしやがって。木葉天狗から巣穴を借りたのは正解だったな。
ぬらりひょんが近づくと共に、人間に害を成そうと考えた妖や甦りが、街中に近づいていたらしい。しかし、穏健派が協力し合いそれを阻止している。どうやらそこに凪も参戦したのだという。
だから俺は、こっちに集中すればいい。
「昔のお前なら、ぞろぞろと鬼を従えて戦うのは面倒だったが、1人きりになっちまえば形無しだな」
「なんですってェ」
「ずっと1人で戦った俺とは大違いってことさ」
「なら無様に1人で死になァ!!」
放たれる妖気が増す。それと同時に酒呑童子の構えていた刀がひとまわり以上大きくなる。巨大な太刀は酒呑童子の体をゆうに超える。振り回せば距離があっても、影丸の体をかすりそうになる。懐に入ろうと突進しても、今度は炎が放たれる。
考えて戦うのはやめだ。もうとことんやってやる。
バリバリと音を立て、雷が体内からの妖気によって生み出される。狙いを定めた、まっすぐ酒呑童子だ。
当たり前のように酒呑童子から炎が放たれる。しかし、それに構う必要は無い。体にまとった雷で炎を弾く、妖気が減っていくのがわかった。
炎を弾く雷はまるで花火のように輝き、戦闘中でなければ見惚れていただろう。だが、今は血を流しどちらかが倒れるまで続く力のぶつかり合い。感動する暇などないのだ。
「おおおお!!」
「あああ!!」
影丸の雄叫びと、酒呑童子の悲鳴が交じり合う。酒呑童子の太刀は、影丸の肩を貫いていた。そして、影丸の刀は酒呑童子の胸を捉えている。
先ほどまでの激しい先頭が嘘のように、2人の動きがピタリと止まる。次第に酒呑童子の体が震え、影丸の刀をグッと掴む。手からは当然のように血が流れ、やがて影丸の元へとたどり着く。
「悔しいぃ、でもぉ楽しかったァ……ねぇ、来世は私の眷属になってねェ」
「ぜってぇ、お断りだ」
「嫌な子ォ」
まるで線香花火だ。炎を弾けさせながら、酒呑童子の体は消えていく。膨大なはずの妖気は、影丸との戦いで散らされながらも、僅かに影丸に流れ込んだ。それは程よく影丸の体力を回復させ、すぐに次の敵を意識させることに働いた。
ようやくお前の番だ。俺もお前もずいぶん時間をかけたよな。俺はお前を探すことに、お前は俺を苦しめるのに。
さぁ鬼が来るぞ。凶暴で凶悪な鬼が行くぞ。
「ははは、ははははは! ふははははは!!」
ここまで読んでくださりありがとうございます




