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鬼神は妹至上主義  作者: 白い犬
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本気で

 影丸(かげまる)は、次の戦いを最後にぬらりひょんを討つつもりだった。もう逃がすつもりはない。だが刺し違えるつもりはない、あくまでも犠牲になるのはぬらりひょんだけだ。

 ぬらりひょんと協力関係にありそうな妖はそう多くはなかった。だが、その存在自体が問題だったのだ。


「まだ鬼がいたとはな」


 その考えがなかったわけではないが、自分と同じく封印に失敗した鬼が多いとも思えない。だからこそ、鬼の甦りは自分だけだと過信していた。


酒呑童子(しゅてんどうじ)がいるのは、あまりにも予想外すぎる」

「せっかく従えた猫の霊が何体もやられた。あたしのことに気がついているとは思えないけど、悪いがしばらく大人しくさせてもらう」

「ああ、十分だ。ありがとな、美津(みつ)


 酒呑童子という女鬼は、大嶽丸と合わせ三大妖怪と呼ばれることもある。前世では一度刃を交えたが、山と村を複数破壊して引き分けに終わった。決着をつける意味でも、いい機会かもしれない。


「だけど、無傷じゃ終われないな」

「か、影丸……大丈夫なの?」

「負けるつもりはないさ。田貫(たぬき)に頼みがある」

「戦うのは無理だよ!」

「そんなこと頼まねえよ。俺のフリをして、詩乃(しの)のそばにいて欲しい」

「え?」


 先日から、詩乃の様子がおかしいことには気がついていた。やたらと引っ付いていたがるし、夜に何度も起きて影丸がいることを確認する。そして何度も、もうどこにも行かないでと泣いてすがる。今日も美津の店に共にやって来て、寝不足のせいか白谷の隣で眠ってしまった。


「俺がいないとわかれば爺さんに黙って1人で家を出るかもしれない。詩乃はたぶん、俺の気配を辿れるからな」

「わかった、できるだけやってみるよ」

「頼んだ」


 酒呑童子は少しずつこちらの方に移動をしているらしい。その道中で出会う妖や甦り、時には人を喰らいながら。恐らく、力を蓄えようとしているのだろう。

 それなら俺も本気でやるしかない。



「影丸殿は妹君をかなり愛しているのだな」


 穏健派に入った依頼を終え、一息ついたところで狛天(はくてん)が話しかける。月を背にした彼は、狼の顔で優しく微笑んでいる。木葉天狗を束ねる狛天は、強さに合わせて優しさも兼ね備えていた。人間に同胞を殺されたにも関わらず、共存という道を選び、数少ない同胞を守っている。


「詩乃がいなけりゃ俺は侵攻派として、あんた達と敵対していただろうな」

「それは勘弁願いたいな。さすがに影丸殿に勝てるとは思えない」

「俺もだ。ただの鬼になるのはもう飽きた」


 額の辺りでシュウーと控えめな音が聞こえた。触れてみると先程まで生えていた角が消えている。牛鬼を倒してから、少しでも力を使えば鬼としての姿が現れるようになってしまった。


「狛天、人里離れた山は近くにあるか」

「……少し離れるが、我々の住処を使えばいい」

「いいのか?」

「そろそろ次の住処を探そうと思っていたんだ。新しく産まれた子孫のためにな」

「感謝する」


 あとはそこに酒呑童子をおびき寄せればいいだけだ。あいつの事だ、俺の妖気を感じれば真っ直ぐやってくるに違いない。



 家にたどり着き、寝室に向かうと詩乃はすやすやと眠りについていた。起こさないように静かに布団に腰掛けると、詩乃の手が影丸の手を握った。


「冷たい。にいに、お外行ってた……?」

「少しだけな。ごめんな、置いてって」

「怪我してない?」

「大丈夫だ。詩乃、もう遅いから寝ようぜ」

「お外もう行かない?」

「行かねぇよ」


 抱きしめて頭を撫でてから、背中を一定のリズムで叩く。うとうとしていた詩乃は、すぐに目を閉じてまた寝息を立てた。

 もしも詩乃を置いて死んでしまったら? そんな馬鹿なことは考えない。ありえないからだ。


「愛しい俺の童、俺はもうお前を1人になどしない」


 ようやく家族になれたのだから。

ここまで読んでくださりありがとうございます

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