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鬼神は妹至上主義  作者: 白い犬
33/42

実力

 真っ二つになった女郎蜘蛛は、灰となり影丸(かげまる)の力へと変換される。その様子に、白雪(しらゆき)は驚きを隠せない。

「なぜ妖気を取り込める?」

「簡単な話だ、俺にはまだ器に空きがある。これくらいの妖気じゃ、俺は正気を失わねえよ」

「何それ、化け物じゃん」

「間違ってねえよ。俺は鬼で化け物だ」

 いま思えば、なぜ妖気もない人間を殺していたのか。同族を手にかけた方が、自分の利益になることは間違いない。前世の詩乃(しの)に付き合って、食事を嗜んだことは何度もあるが、妖気さえあれば食事も不要だった。

 だとすれば、逃げ惑う人間が心底面白かったのだろう。

 残酷なかつての自分に、嫌悪感を抱きながら、影丸は先を行く白雪のあとに続いた。

「いた。……4人、被害者報告通りだ」

 森林の奥に進むと、木の幹に男たちが立ったまま糸で縛られていた。全員胸元が上下しているところを見るに、誰も死んでいないようだ。男たちは全員気絶か眠らされている。若くて整った容姿の男が4人、女郎蜘蛛も面食いというわけか。

「運べそう?」

「あー、4人だろ? 死んだわけじゃない、起こすぞ。おい、おっさん起きろ」

 影丸は、1番近くにいた茶髪の男の頬を軽く叩く。おっさんというには、若いと思われるがそんなことはどうでもいい。叩かれた男はうっすらと目を開き、影丸の姿を捉えた。

「……うわぁ!!? た、助けてくれ!」

「落ち着けおっさん、望み通り助けに来たんだよ。あんたを攫った奴はもういない。あんたが1番体力がありそうだからな、歩いて着いてこい」

 茶髪の男は戸惑いながら、糸を払われた体を確認しなんとか立ち上がった。ふらついているが、森林には傾斜が少ない。これなら着いてこられるだろう。

 影丸は、未だ気を失う男を両腕に1人ずつ抱え込んだ。荷物のように運ぶことになるが、怪我なく運ぶことが出来れば、問題はない。茶髪の男は、なぎ倒された木々に驚きながらも影丸たちについて行く。

 なんか嫌な気配感じると思ったら、なんでここにこいつが。

 影丸が足を止める。そして、視線の先には、にやりと笑みを浮かべた松蔭凪(しょういんなぎ)が立っていた。

「あれ? もしかして事件解決しちゃった?」

「遅かったな。悪いがどいてくれ、邪魔だ」

 凪の式神だろうか、真っ白な犬が数匹、牙をむき出しながら唸っている。妖の気を感じているのか、凪の意思と式神が繋がっているのか。どっちにしたって、敵対行為だろうよ。

「我々は穏健派です。陰陽師の方とお見受けしますが、式神を解除していただけますか?」

「申し訳ないけど、僕には影丸くんが人間の味方には見えないね」

「人を見かけで判断するのはどうかと思うぜ」

「君は人じゃない。妖だよ」

 凪の言葉を聞いて、茶髪の男がびくりと肩を震わせた。疑いの目を、後ろから影丸に送っている。

「あなたを攫った奴と同じなんですよ、そこの男は」

 追い討ちをかけるように、凪は茶髪の男に告げる。さぁーっと顔色が悪くなり、尻もちを着くように後ろへ倒れた。その様子は視線に収めないまま、影丸は凪を見据えた。もともと感謝をして欲しくて穏健派についているわけじゃない。情報集めと、凪に殺される理由を作らないためだ。

「あなたが依頼してくれれば、僕は今からこの男を倒しますよ?」

「穏健派は、妖と甦りを退治すること以外で戦闘は行いません。ここで貴方が敵対行動を取れば、穏健派と陰陽師での戦争になりますよ」

「君たち2人をここで倒してしまえば、誰にもバレないさ」

 引くつもりのない凪に呆れすら出てくる。影丸は、抱えていた残りの男2人を、未だ青ざめている茶髪の男の所へ運ぶ。

「様子を見ていてくれ、体調が急変するようなら声をかけろ。すぐに運ぶ」

「へ?」

 運んでいる間に異変はなかったが、早く医者に見せた方がいいことに間違いはないだろう。

「白雪、お前救急車呼べ。もうここなら電波も通じるだろ」

「何する気?」

「ちょっと遊ぶだけだ」

「話聞いてた?」

「殺さなきゃいいだけだろ? 殺されないし、殺さない」

 少し実力差を知らしめれば凪も諦めるだろう。それに、こいつには少し聞きたいことがある。

「だが人間との私闘はっ!」

「私闘じゃねえよ。これはただの遊戯だ、そうだろ?」

 凪から漂う、気になる妖気。それが自分の予想とあっているかどうか、確かめる必要があった。影丸の問いに笑みで答えた凪は、先導するように先に進む。おそらく人気のないところを知っているのだろう。

 さっさと遊んで、早く帰ろう。

ここまで読んでくださりありがとうございます

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