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鬼神は妹至上主義  作者: 白い犬
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爪井九十九

 爪井(つめい)にメールを送ると、驚いてしまうほどの早さで返信が来た。妖のことについて話がしたいと書いただけだが、ご丁寧に場所まで指定して連絡があった。大学と影丸(かげまる)の住む地域の中間点。駅前のファミレスを指定され、店前で待ち合わせの時刻を待っていた。

「君が嶽川(たけがわ)くんかな?」

 白髪混じりの整えられていない髪。自分の見た目に関心がないことが伺える。写真通りのレンズが厚い眼鏡。奥に見える瞳は細くて怪しさを倍増させている。

「爪井きょーじゅ?」

「はは、なんだか言い慣れてないねえ」

 小さい男だと影丸は思った。おそらく自分よりも頭1つ分ほど低い身長、160がギリギリあるかないかぐらいだ。

「じゃあ入ろうか、高校生だろ? 僕の奢りだから遠慮なく食べて」



「ほ、本当に遠慮ないね……」

 ハンバーグとピザ、パスタも頼んだ。遠慮なくと言ったのはお前だろと思いながら、影丸はドリンクバーで手に入れたオレンジジュースを流し込んだ。

「それで、君は妖について何を話してくれるんだい?」

大嶽丸(おおたけまる)のことについてだ。お前はどこまで知ってる?」

「おや? 情報を出すのは僕の方かい? まあせっかくだから若人に語ろうかな」

 大嶽丸は鈴鹿山(すずかやま)を縄張りとし、神通力に長けた鬼。天候を操ることも出来たと言われている。多くの妖を倒し、家来として従えていた。気性が荒く、ただの人間では太刀打ち出来なかったため、数多くの陰陽師が協力し討ち滅ぼした。

 ネットで調べれば出てくるであろう事実と、身に覚えのないいくつかの話。影丸は楽しげに話す爪井を見て、小さく笑った。

「いろいろ捏造もされてんだな」

「どういうことだい?」

「お前、美津に会ったぐらいだから、甦りのことは知ってんだろ?」

「……まさか君も」

 爪井のレンズがきらりと光った。好奇心が倍増した瞳に変わる。彼の中でも予想していたのかもしれない。

「俺は大嶽丸の甦りだ、お前に調べて欲しいことがある」

 影丸がそう言うと、爪井は足をテーブルにぶつけながら立ち上がった。昼過ぎで客は少なかったが、数人が影丸たちの方に視線を送る。

「本当かい?」

「同族には妖気を感じさせるのが手っ取り早いが、人間はそうじゃないんだろ? 俺の事なら答えられる」

「じゃあ、僕がさっき説明した大嶽丸のことで間違いがあるなら教えて欲しい」

「そうだな……」

 確かに大嶽丸の時は鈴鹿山付近で暮らしていた、だが縄張りという意識はなく自分の妖気がすぐに馴染んだから居心地が良かった程度だ。神通力を用い、天候を操るだったか? 天候を操るというよりも、雷を自分の力にしていたというのが正しい。それが人間には嵐のように見えたのだろう。1番の間違いは、妖を従えていたということだ。妖を配下にした覚えは無い。田貫の話を聞くに、弱い妖たちが勝手に住み着いただけだ。

「気性が荒いのは認める、あの頃の俺にとって、人間はただの食事と玩具だったからな」

 最後に手先に妖力をまとい、強めの静電気程度の雷を放つ。爪井は驚くどころか感心したというように笑った。

「素晴らしい、素晴らしいよ影丸くん! ぜひ君に協力しよう、何をすればいいのかな!!?」

「うるさい、興奮すんなよおっさん」

 立ち上がったままの爪井を座らせ、影丸はオレンジジュースで喉を潤した。

「俺は陰陽師に退治された、そうなってるんだな?」

「まあ今のところね」

「陰陽師たちは俺の前に現れた、だがあいつらの目的は俺を倒すことではなく山に封じることだった。だがそれは失敗して、俺がいまこうして甦りとして生きている」

「なるほど、封じられていれば甦りとなることも不可能なのか」

「だからお前に俺の結末を調べて欲しい。俺の元に現れた陰陽師は夏凪(なつなぎ)秋正(しゅうせい)という男だ」

松蔭(しょういん)の先祖だね。わかった、できる限りのことはするよ。その代わり、君が大嶽丸だった頃の妖について、教えてくれるかい!?」

 自分の番だと言わんばかりに爪井が体をずいっと前に出した。いちいち暑苦しいと影丸はうんざりしてきたようだ。美津の言っていたことがよくわかった。

「それはまた今度だ。それに、俺は下級妖のことなんぞ知らん。有名な妖は、それなりに調べられるんだろ?」

「それでもいいさ! じゃあまた連絡するよ」

 あまり積極的に会いたくは無いが、情報を得る為ならば仕方がない。それに、毎度奢ってもらえるかもしれないしな。最後にスマホアプリでの連絡先を交換し、爪井とはわかれることになった。

ここまで読んでくださりありがとうございます

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