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鬼神は妹至上主義  作者: 白い犬
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詩乃の力

 影丸(かげまる)が開いた紙には、先日行った期末テストの結果が記されている。現代文から日本史まで、自分の点数と平均点、学年順位が記されている。この学校での赤点は、平均点の半分以下。影丸はその結果を、目を細めながらおそるおそる覗いた。

「か、影丸? どうだった?」

 後ろの席から田貫(たぬき)が結果をのぞき込む。影丸は、フーっと大きく息吐くと、乗り切ったと小さく呟いた。

「ほんと!?」

「赤点回避。これで詩乃(しの)と遊んでられる」

「理系科目なんか僕より順位がいいじゃないか。くそ、これが才能ってやつか」

 悔しがる田貫の声は、影丸に一切届いていない。早くこの結果を報告し、詩乃からご褒美をもらいたいと考えるだけだ。夏休みまであと1週間ほど。影丸はそれが今から待ち遠しかった。


 詩乃の学校は、影丸たちよりも少し早く夏休みが始まる。放課後迎えに行くと、持って帰るように言われたのか、様々なものを袋に入れて抱えている生徒がたくさんいた。顔なじみになった詩乃の担任とすれ違い、祖父に通知表を見せて欲しいと頼まれた。

「そうだ、夏休み中に学校で行事があるんです。そのうちお便りが行くと思いますので」

「あー、わかりました。祖父にも言っときます」

 担任から詩乃はグラウンドの花壇の方にいると教えられ、すぐにそこへ向かう。花が好きな詩乃は、だいたいここにいる。

「詩乃帰るぞ」

「にいに! お迎えありがとう」

「荷物多いな、ほらこっちによこせ」

 工作等で作ったものや、学習の補助教材。普段の倍は荷物があるだろう。まとめられた鞄を影丸が肩にかける。これは詩乃には重たいだろうなと思いながら、帰ろうと手を差し出す。

「テストどうだった?」

 帰り道で早速話題に上がったのは、やはりテストの話。影丸の緊張以上に、詩乃はその結果を心配していた。そんな詩乃に影丸はばっちりだと笑いながら答える。

「やった! お疲れ様、にいに。ご褒美の準備出来てるんだよ、今あげてもいい?」

「ん? いま?」

 学校と家のちょうど中間にある公園。ここは散歩道のお決まりコースだ。少なめの遊具と広場。時間によって使う人が変わるのが影丸にとっては面白いらしい。遊具のそばにあるベンチに並んで腰掛けると、詩乃はランドセルから白い封筒を取りだした。

「開けてみて」

「おう」

 四葉のシールで綴じられた封筒を開けると、黒い糸を主に形を取り、その中に金色の糸が紡がれたミサンガが姿を見せた。まだ紐を結んで輪の形にはなっていないものは、自分の腕に合わせて欲しいという意図が感じられる。

「これ、どうしたんだ?」

「友達がね、ミサンガ作るの上手で教えてもらったの」

「詩乃、お前どうやって」

 詩乃は友人からミサンガ作りを習おうとしたが、それは難航した。しかし、担任がまずミサンガ作りを教わり、それを詩乃に伝えた。手の動かし方を丁寧に教えることで、ゆっくりではあるが詩乃は自分で作成することが出来たのだ。

「時間、かかっただろ」

 おそらく、田貫と勉強をしたあの日より前から詩乃はこれを準備していたのだと考えついた。影丸は取り出したミサンガを右腕に括り付ける。ミサンガからは微かに心地いい妖気が感じられた。詩乃のものだ。

「つけたぜ、ありがとな詩乃」

「つけた方の手貸して」

 次に詩乃は影丸の手を要求した。差し出された両手に、右手をスっと下ろすと、詩乃は愛おしそうにその手をぎゅっと掴んだ。

「にいにが怪我をしませんように」

 詩乃がそう願った時、自分の妖気が僅かに力をました感覚があった。詩乃が自分の妖気を減らした様子もない。だが、妖力が使用された感覚があった。つまりこれは、単純に詩乃の能力なのだろう。

「詩乃、何してるんだ?」

「ミサンガを送ったらね、お祈りするといいよって教えてもらったんだ。にいには詩乃の大切なにいにだから、痛いこと何もないようにお願いしたの」

 詩乃の口ぶりからは自分が何をしたのかわかっていないようだ。前世でもこんな力と出会ったことはない。これが貴重な力なのかも、詩乃の血に混ざる妖の力なのか。

「体なんともないか?」

「どうして? 私すごく元気だよ?」

「いや、なんでもない。ありがとな詩乃」

 あの夜、詩乃は俺に手を伸ばしていた。あの手を掴めたら、あの体を抱きしめてやれたらどれだけ良かっただろうか。影丸は詩乃の体を引き寄せ、いつもより少しきつめに抱きしめた。

「にいにの匂い、安心する」

「そうか」

「それにね、にいにのそばにいるとなんでも出来る気がしてくるんだよ」

「俺もだ。詩乃のそばにいると、何が来ても怖くない」

「じゃあずっと一緒にいなきゃだね」

「ああ。もう絶対、離さない」

ここまで読んでくださりありがとうございます

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