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鬼神は妹至上主義  作者: 白い犬
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驚愕

 鴉天狗を倒して、翌日。何事も無かったかのように学校へと向かう。昨夜、祖父は俺が無傷であることを確かめると風呂を温め直すと言いながら去ってしまった。頬や服に飛び散った返り血は、鴉天狗を倒しても消えずに残った。最初は驚いて声も出ないのかと思ったが、祖父は本当に返り血に対して何も思っていないようだった。


「おーい、影丸(かげまる)ー!」

 気の抜けた声だ。振り返らなくても、相手が誰だかわかってしまう。

「よお、田貫(たぬき)

 横に来たタイミングで声をかければ、田貫は目を見開いて驚く。狸の尾が出ていたなら、おそらく毛を逆立てているだろう。

「なんか、力が増してる気がする」

「雰囲気、違うか?」

「違うというか、もう別人だよ。いったい何があったんだよ?」

 不安そうに俺を見つめる田貫。狸というか犬みたいだと思った。田貫を見た時、こいつの妖気が今までより脆弱なものに感じられた。それが昨夜の鴉天狗によるものだとすぐに理解できる。制服の感じを見るに、体格自体にはなにも影響がないようだな。

「ちょっとな、烏退治をしてきた」

「からす……?」

「天狗だよ、鴉天狗」

「え、えええええ!?」

「うるせえ」

 騒がしい田貫の頭を軽く叩けば、少し体が前のめりになり、いててと後頭部をさする。視界の奥に、高校の門が見えてきた。

「ここに来るまで、お前以外の妖気を感じなかったな」

「たぶん影丸のことを怖がってんだよ。本能で近づかない方がいいって感じる。あ、僕は違うよ! 僕は友達だからね」

「はいはい、友達ね」

 鞄を抱え直し、校門をすぎる。その時塀の上に1匹の黒猫が立っていた。

「詩乃のこと見といてくれよ」

 なぁ、と一声鳴くと黒猫は立ち去る。小学校の中に入ってしまうと、俺はどうしたってそばにいてやれない。鴉天狗の件もあったからあまり1人にはさせたくないが、仕方がない。その代わりに美津(みつ)の猫を借りて、何かあった時に報告してもらうようにした。少しは安心出来る。

「田貫、お前も周囲に気をつけろよ。美津の話じゃ他の妖にも俺の噂が広まってる。妖は気配にすぐ気がつくからな」

「こ、怖いこと言わないでよ……」

 怯える丸い玉は放っておいて、さっさと教室に向かう。入学したはいいものの、どうにも勉強は苦手だ。学ぶという行為に、面白みが感じられないのだから仕方がない。おかげで定期的に行われる小テストはさんざんだ。もうすぐ期末のテストもあるから、ひどい点をとれば祖父に怒られるだろう。


「次、嶽川(たけがわ)。……お前もうちょっとしっかりしろよな。期末テストには補講が付きまとうぞ」

 渡されたのはこの間の小テスト。現代文も古典も全部苦手だ。そのうちの古典。基礎力テストと言っていたが、これはたぶんまずい、と思われる点数なんだろう。

「た、田貫……お前、勉強出来る方か?」

「え? まあそこそこは」

「助けてくれ!」

「ひぇぇえ」

 両腕にしがみつき助けを乞うと、田貫は目を丸くさせて椅子から飛び上がる勢いで驚いた。

「はいはいそこー、静かにしろよー」


 詩乃を迎えに行って真っ直ぐ自宅に。田貫を引き連れて勉強に勤しんだ。急に態度を変えたのには理由がある。期末テストを終えると夏休みがやってくる。詩乃(しの)とたくさん遊べる時間がやってくるんだ。だというのに、もし期末テストで失敗して夏休みの貴重な時間を奪われるのは、勘弁して欲しい。

「にいに、お勉強難しい?」

「んー? あーめっちゃムズい」

 詩乃は自分用に点字の宿題をしている。同じ問題をやっているわけではないけど、俺よりも早く解いている姿に出来が悪いのは俺だけかと少しショックを受けた。

「田貫、ここもわからん」

「それは先にこっちを読んで……」

 時々田貫に教えを乞う。まだ1年の内容だからかそんなに難しい問題がないのが救いだ。いや、解けないものの方が多いけどさ。

「にいに頑張ってるから、私ご褒美用意するね!」

「まじか、俄然やる気出たわ」

「頑張ってね!」

「任せろ、夏休みは絶対詩乃と過ごすからな」

 そのためには、まだまだ頑張らないといけないみたいだがな。

ここまで読んでくださりありがとうございます

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