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鬼神は妹至上主義  作者: 白い犬
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仲間

「あんたの気持ちはよくわかったよ。あたしも詩乃(しの)ちゃんのためなら協力してやれる」

「なんか、ずいぶん気に入ってんな」

「え? あー、まあ詩乃ちゃんはほら、可愛い子だから守ってあげたくなるもんだろ?」

 美津(みつ)は急に焦りだし、俺から目をそらす。なんかまずいことでも言ったか?まあいいか。

「何はともあれ、あたしらは仲間ってことさ。戦闘は苦手だけど、あたしの周りにいる化け猫も猫もあんたら2人を手助けするよ」

「ああ、よろしく頼む」

 細く白い手が差し出され、それを掴む。話が一段落したところで、詩乃が白谷(しろや)の手を引いて戻ってきた。あ! 待って、俺以外と手を繋ぐのまだ許してねえ!

「そんな睨まないでくださいよ。美津さま、詩乃さんはこちらの手鏡をご所望のようです」

「ああ、いいものを選ぶね。いつか詩乃ちゃんの目が戻った時、ぜひそれを使って欲しいもんだ」

 丸い手鏡は、白い生地が一面に貼られており、そこに花や鳥が縫われている。安い物には見えなかった。

「ほんとにもらっていいのか?」

「むしろ貰ってくれた方が嬉しいよ。詩乃ちゃん、大事にしてくれるかい?」

「はい! ありがとうございます、大事にします」

 詩乃は目が見えない。だけど、手鏡を選んだ。やっと確信できた。詩乃は、世界を見ることを望んでいるんだ。それに、自分の目が見えるようになると信じているんだ。満開になる詩乃の笑顔に、これまで見たもの以上だと感じる。

「私ね、目が治ったら、1番にお兄ちゃんのお顔見たいんだ。お兄ちゃんは優しいから、きっと世界で1番かっこいいの」

「ほんとにそう思うか?」

「うん!」

 俺も叶うなら、詩乃の瞳に1番に映りたい。

「仲が良くて何よりだよ。影丸(かげまる)、ここはいつでも開けとくから、好きな時に来な。特に詩乃ちゃんは大歓迎さ」

「本当? いつでも来ていいんですか?」

「ああ、あたしがいなくても白谷や他の……そうだね黒崎(くろさき)なんかもいる」

「他にも仲間がいるのか」

「ああ。全員じゃないけどね、この辺りに住んでる奴らはみんなあたしの仲間さ」

「そりゃすげえや」


 店を出る頃には、太陽も低い位置になってきた。詩乃は手鏡の他にも、小さい白と黒の猫のぬいぐるみをもらい、それを片腕に抱いてご機嫌だ。

 詩乃は妖のことや(よみがえ)りのことも知らない。教えてもいいと思うし、知らないまま静かに過ごして欲しい気持ちもある。田貫(たぬき)によると、記憶の有無や鮮明さは甦り本人が持つ妖気に左右されるらしい。だから妖気が増えた時にさらに記憶を甦らせることもある。だが、妖もそうであるたように、甦りたちも保有できる妖気には限度があるため、全てを思い出すことは稀なのだとか。

 詩乃が全部を思い出すことはない。そもそも詩乃は本来は人間だ。俺のせいで妖気に耐性が着いただけの哀れな人間。だが、別れの瞬間、俺を兄と呼んだ詩乃は、もう俺の大切な妹だ。詩乃を村から連れたことも、妖へと体を変えてしまったことも後悔はない。なら、この先も詩乃が隣で笑う未来を作らなくてはいけない。

「詩乃、俺が詩乃の目を取り戻してやるからな」

「私の目、取られちゃったの?」

「ああ、悪い奴に取られちゃったんだ。だから俺がその悪い奴を倒して、詩乃に目を戻す。それまで、耐えてくれるか?」

「うん。私ね、にいにのお声が聞けるだけで嬉しいけど、にいにの顔が見られたらもっと嬉しい!」

「俺も、詩乃が俺のことを見てくれたら嬉しい」

 繋いでいた手を離して詩乃は俺の足に抱きつく。楽しそうに、嬉しそうに笑みを浮かべながら足に顔を擦り付けた。鬼であったころに比べると、俺の体は小さく足も細くなった。だが、詩乃の体は前世よりも健やかで年相応の姿だ。

 体内に循環している妖気に意識を向けた。まだ天候を操り、雷を発動させることは出来ないが、確実に力が強くなっていることはわかる。自分の妖気だけでなら、それなりの攻撃は出来そうだな。詩乃や田貫たちを守る力ぐらいはあるはずだ。

「さて、帰るか」

「うん!」

 詩乃を抱き上げて、走り出す。少し速度を上げると、詩乃ははしゃいだ声を出した。住宅街の長い道に声が反響していた。

ここまで読んでくださりありがとうございます

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